吉松ひろむの日記

高麗陶磁器並びに李朝朝鮮、現代韓国に詳しい吉松ひろむの日記です。大正生まれ、大正ロマンのブログです。

昭和初期の大阪 二十四

2006年09月18日 11時55分44秒 | Weblog
 昭和初期の大阪 二十四

 金谷点柱    十二
 飴切りとしがらきや
 毎日のようにやってくるしがらきおんちゃんは口に髭があっておっかない顔やったがおくれっ!と一銭をさしだした途端、にこにこっとしておおきに!まけたるでェ今日は!…と言って木の引き出しから切った新聞紙をだし、そして小さなガラス戸からとりだしたしがらきの粒をその日は八っつも入れて黄粉もたっぷりかけてくれはった。
 ぼくは嬉しくてそのままウメちゃんちへ駆けて行き…ウメちゃんしがらきようひえとるでェたべな!と三ケとってウメちゃんの手に握らせた。
 冷たくてこんなにうまいものはない。
 …さとうーしがらきー!こーりやーしのわらびーもーち!…
 おんちゃんのかけごえは路地先の技芸女学校門あたりから聞こえてくる。
 しがらきはクズもちからつくったすきとおった小さな団子である。暑い夏にガラスケースに氷をいれてその上に布を敷き、しがらきの山を重ねて売るのである。
 一銭店屋に飴や塩豆や塩からせんべいもあったが皆おいしくない。
 ぼくの大好きなのはさーとぅしがらきー!こおりーやしーのわらびーもち!のおんちゃんだ。
 ウメちゃんちの前で…さーとうしがらーきーこおりやーしの!言ったらウメちゃんがとびだしてきた。
 ど、ど、ど、ーこや!…
 …ここにおるがな!…
 桶のたがを木槌でたたいていたてんちゃんがヒロちゃん!いつからそんな商売はじめたんや?…と言う。
 しがらきおんちゃんから二銭買うと十六ケもくれるんや、四ケただやから、五ケにして売るともうかるんやろ!…
 そう答えるとてんちゃんはケッケッケケケと笑い、ヒロちゃんの算術はえろうおますな!と褒めてくれた。