昭和初期の大阪 二十四
金谷点柱 十二
飴切りとしがらきや
毎日のようにやってくるしがらきおんちゃんは口に髭があっておっかない顔やったがおくれっ!と一銭をさしだした途端、にこにこっとしておおきに!まけたるでェ今日は!…と言って木の引き出しから切った新聞紙をだし、そして小さなガラス戸からとりだしたしがらきの粒をその日は八っつも入れて黄粉もたっぷりかけてくれはった。
ぼくは嬉しくてそのままウメちゃんちへ駆けて行き…ウメちゃんしがらきようひえとるでェたべな!と三ケとってウメちゃんの手に握らせた。
冷たくてこんなにうまいものはない。
…さとうーしがらきー!こーりやーしのわらびーもーち!…
おんちゃんのかけごえは路地先の技芸女学校門あたりから聞こえてくる。
しがらきはクズもちからつくったすきとおった小さな団子である。暑い夏にガラスケースに氷をいれてその上に布を敷き、しがらきの山を重ねて売るのである。
一銭店屋に飴や塩豆や塩からせんべいもあったが皆おいしくない。
ぼくの大好きなのはさーとぅしがらきー!こおりーやしーのわらびーもち!のおんちゃんだ。
ウメちゃんちの前で…さーとうしがらーきーこおりやーしの!言ったらウメちゃんがとびだしてきた。
ど、ど、ど、ーこや!…
…ここにおるがな!…
桶のたがを木槌でたたいていたてんちゃんがヒロちゃん!いつからそんな商売はじめたんや?…と言う。
しがらきおんちゃんから二銭買うと十六ケもくれるんや、四ケただやから、五ケにして売るともうかるんやろ!…
そう答えるとてんちゃんはケッケッケケケと笑い、ヒロちゃんの算術はえろうおますな!と褒めてくれた。
金谷点柱 十二
飴切りとしがらきや
毎日のようにやってくるしがらきおんちゃんは口に髭があっておっかない顔やったがおくれっ!と一銭をさしだした途端、にこにこっとしておおきに!まけたるでェ今日は!…と言って木の引き出しから切った新聞紙をだし、そして小さなガラス戸からとりだしたしがらきの粒をその日は八っつも入れて黄粉もたっぷりかけてくれはった。
ぼくは嬉しくてそのままウメちゃんちへ駆けて行き…ウメちゃんしがらきようひえとるでェたべな!と三ケとってウメちゃんの手に握らせた。
冷たくてこんなにうまいものはない。
…さとうーしがらきー!こーりやーしのわらびーもーち!…
おんちゃんのかけごえは路地先の技芸女学校門あたりから聞こえてくる。
しがらきはクズもちからつくったすきとおった小さな団子である。暑い夏にガラスケースに氷をいれてその上に布を敷き、しがらきの山を重ねて売るのである。
一銭店屋に飴や塩豆や塩からせんべいもあったが皆おいしくない。
ぼくの大好きなのはさーとぅしがらきー!こおりーやしーのわらびーもち!のおんちゃんだ。
ウメちゃんちの前で…さーとうしがらーきーこおりやーしの!言ったらウメちゃんがとびだしてきた。
ど、ど、ど、ーこや!…
…ここにおるがな!…
桶のたがを木槌でたたいていたてんちゃんがヒロちゃん!いつからそんな商売はじめたんや?…と言う。
しがらきおんちゃんから二銭買うと十六ケもくれるんや、四ケただやから、五ケにして売るともうかるんやろ!…
そう答えるとてんちゃんはケッケッケケケと笑い、ヒロちゃんの算術はえろうおますな!と褒めてくれた。