吉松ひろむの日記

高麗陶磁器並びに李朝朝鮮、現代韓国に詳しい吉松ひろむの日記です。大正生まれ、大正ロマンのブログです。

昭和初期の大阪 二十一

2006年09月15日 00時12分17秒 | Weblog
 昭和初期の大阪  二十一

 金谷点柱(こんたにてんちゅう) 九
 …おんちゃん子供の頃どんな遊びをしよったんや?…
 …ウメ吉といっしょよ、虫取り、石投げ、竹馬、朝と夜は勉強して昼間はおそくまであ  そびよったがわしが十才の時、日本に国が取られて難しい勉強せいでもおこられんよ  うになったヨ!…
 …日本が国をとったんか!…
 …ヒロちゃんは知らんさかい、大きな声だしたらいかん!…
 ぼくは国をとるってわからないので母に聞いた。
 …お前は子供じゃきにそんなことは知らんほうがええ、ウメちゃんは朝鮮やけんどしょ  う頭が利口じゃけんこれからも仲良くしいいや…
 母は慌ててそう言った。
 ぼくは来年は小学校一年生やからいまのうちにウメちゃんにアイウエオの書き方読み方をならうつもりになった。
 ウメちゃんちには小学校一年で習う読本がある。
 ハナは花、マメは豆、ミノカサ、カラカサは雨が降るとお百姓さんはミノカサを使いぼくらは傘を使う。カラスガイマスは友達みたいなもんやからすぐ字を覚えた。
 勉強が終わるとセミとりに住吉神社へでかけた。
 十三間道路は時々バスが土煙をまきあげて走ってくるのでぼくらはその間に駆けてわたるのである。
 神社のなかは昼もうすぐらくなるほど大きな木が何十本もそびえている。
 ジジジジ!からミーンミーンミーンとひまなしに鳴いているセミはなかなか見つからない。 
 ウメちゃんはこの間目白を掴まえたときに使った鳥黐(とりもち)をながくて細長い竹竿の先に渦巻きのようにぬったのを手にして樹の上を見上げ、…い、い、いた!とさけんだ途端、竿の先に羽が透き通ったセミが竿にびったりついていた。
 いきなり大きなミンミンをつかまえたのだ。