吉松ひろむの日記

高麗陶磁器並びに李朝朝鮮、現代韓国に詳しい吉松ひろむの日記です。大正生まれ、大正ロマンのブログです。

昭和初期の大阪 三十五

2006年09月29日 01時29分52秒 | 玄界灘を越えて
昭和初期の大阪  三十五

 金谷点柱(こんたにてんちゅう)
 月はじめの日曜日で桶をたたく音は聞こえない。
 ぼくはご飯をおえてすぐチョンチュおんちゃんちへ行った。
 チヨンチュおんゃんのお膳には匂いの強い朝鮮漬が小皿にあった。
 …おんちゃん!今日はやすみなんやろ…
 …そうや、たまには仕事やすまんと肩がこるさかい…
 …ぼくもんであげる…
 …おおきに!わしの肩は石みたいに堅うなっとるヨ!…
 ぼくはおんちゃんの肩たたきを始めた。
 しばらくたたいてみたが石みたいに堅い肩は同じやった。
 でもおんちゃんはオオ!気持ちええ、気持ちええ!と喜んだ。・
 …ヒロちゃんなかなかや!ほうびに朝鮮のおもろい話しをしてあげる…
 …むかしむかし百姓のチエさん所へ酒をかりにトッケビがやってきた。トッケビはどん  なとこにもおる日本の鬼みたいなもんや。チェさんは情けふかい男や、すぐ蔵から二  升もかめにいれてトッケビにわたした。トッケビはとびあがって喜びながらこれから  仲間とごちそうになる、明日は必ず銭をもってくるから…と言って姿をけした。
  明くる日、日がくれると昨日のトッケビがやってきてオンドルで暖かい床に銭、一貫  置いていった。チェさんはトッケビに逆らったらおおごとと銭はあきらめていたのだ。  ところが明くる日もそのあくる日も毎日かかさず銭一貫をトッケビがもってきた。
  チェさんはたちまち村一番の大金持ちになった。そして六十才になってお祝いに大勢  の村人を招待した。