昭和初期の大阪 二十三
金谷点柱 十一
…気の毒にこんたにさんの弟さんが炭鉱の事故で亡くなったきに、また朝鮮の田舎へ帰 るんじゃと…
ある雨の日、ぼくがミシンのそばで布をたてにしたり横にしたりして足を踏んでる時に母が言った。
…ほんならまたウメちゃんもいっしょやな…
…ウメちゃんはなんも知らんきに遠い旅もたいへんじゃき母さんあずかってもええけん …
…そうしたらええわ、ウメちゃんよろこぶでェ!…
…お前がうれしいんじゃろ、遊び相手がそのままおって…
…よう知ってるわ!ほんま母ちゃんは利口やな…
…それはそうとそろそろジョリジョリせんとあかんけん…
母がぼくの頭を見て言ったので途端に頭が痛うなった。
母の言うジョリジョリは風呂屋さんで母がぼくの頭を剃刀でのびた毛を剃ることや。 いつも箱入りのキヤラメルがその時の褒美だった。
時々、頭につけた石鹸のつゆが眼に染みてすごくいたいのがつらかった。
その日、別のキヤラメルを母が買ってきてくれたんでしぶしぶ風呂屋へついて行った。 母はぼくの頭を股に挟んで頭を抱えジョリジョリを始めた。
ウメチャンはてんちゃんがよく切れる剃刀をその時にまた研いでやるのでジョリジョリでなくすべるように切れて気持ちがええとと言った。
…キヤラメルくれへんのか!…
ぼくはウメちゃんもキヤラメル貰っうてするんやと思って聞いた。
金谷点柱 十一
…気の毒にこんたにさんの弟さんが炭鉱の事故で亡くなったきに、また朝鮮の田舎へ帰 るんじゃと…
ある雨の日、ぼくがミシンのそばで布をたてにしたり横にしたりして足を踏んでる時に母が言った。
…ほんならまたウメちゃんもいっしょやな…
…ウメちゃんはなんも知らんきに遠い旅もたいへんじゃき母さんあずかってもええけん …
…そうしたらええわ、ウメちゃんよろこぶでェ!…
…お前がうれしいんじゃろ、遊び相手がそのままおって…
…よう知ってるわ!ほんま母ちゃんは利口やな…
…それはそうとそろそろジョリジョリせんとあかんけん…
母がぼくの頭を見て言ったので途端に頭が痛うなった。
母の言うジョリジョリは風呂屋さんで母がぼくの頭を剃刀でのびた毛を剃ることや。 いつも箱入りのキヤラメルがその時の褒美だった。
時々、頭につけた石鹸のつゆが眼に染みてすごくいたいのがつらかった。
その日、別のキヤラメルを母が買ってきてくれたんでしぶしぶ風呂屋へついて行った。 母はぼくの頭を股に挟んで頭を抱えジョリジョリを始めた。
ウメチャンはてんちゃんがよく切れる剃刀をその時にまた研いでやるのでジョリジョリでなくすべるように切れて気持ちがええとと言った。
…キヤラメルくれへんのか!…
ぼくはウメちゃんもキヤラメル貰っうてするんやと思って聞いた。