吉松ひろむの日記

高麗陶磁器並びに李朝朝鮮、現代韓国に詳しい吉松ひろむの日記です。大正生まれ、大正ロマンのブログです。

昭和初期の大阪 七

2006年09月01日 02時16分43秒 | Weblog
昭和初期の大阪   七

 オメコ貝 二                                  …なんでぼくと一緒やねん…しんどうて息もできんでェ!…とウメちゃんにぼくはど突いた。
 …も、も、もぅせ、せ、んき、か、か、かんにんして、お、お、お、く、れ!…
 …こんどしたらこれやでェ…
 ぼくは拳固に息をふきかけた。
 前にもビー玉とられた時…ぼくはあかんでェ!…と拳骨でぶったたいたことがあった。 …せ、せ、せ、…
 …わかったもうせんのやろ!…
 喧嘩しても吃りで悠長なのでだいたいのところでさきどりして理解するのだ。
 二人の若い男と女のうち男はウメちゃんが知っていた。
 囲碁会所の裏どうりの大工さんの倅で世間では不良で通っていた。
 一度、桶屋の店先の修理中の桶を蹴飛ばしたまま直さず行ってしまったことがあるという。
 …なにをぶつけたんや?…
 …こ、こ、こ、れやー!…
 みると小さな貝だった。
 …なんや石でなかったんやな!…
 …う、う、う…
 …これ女貝やろ!…
 …そ、そ、そ、そうや!…こ、こ、れ、あ、あ、たるとお、お、んな逃げるんや!…
  ウメちゃんはその貝で意地悪して仇うちしたつもりなのだ。
 …今度したらともだちやめやでェ!…
 ぼくは胸をどきどきさせながらウメちゃんに言った。
 その貝は碁会所よこの塀にかいてある女のある所とそっくりの貝やった。