吉松ひろむの日記

高麗陶磁器並びに李朝朝鮮、現代韓国に詳しい吉松ひろむの日記です。大正生まれ、大正ロマンのブログです。

昭和初期の大阪 十五

2006年09月09日 08時09分26秒 | Weblog
 昭和初期の大阪  十五

 金谷点柱(こんたにてんちゅう) 三
 母はてんちゃんの服を作ったと言う。
 去年、朝鮮の田舎に親戚のあつまりがあってかえるので服をと母は頼まれた。
 桶屋いうても朝鮮ではヤンバンと尊敬される貴族じゃきに母さんが作った服がそりゃぁよう似合うたぞね…学校の先生よりもりっばじゃった…。
 …ウメちゃんも朝鮮へ去んだんか…
 …そうよ、一緒やった…なんでも百人位もあつまりよったと言うけん、やはり大きな家  がらじゃのう…
 …そんなええ家がなんで貧乏になったんやろ!…
 …お前にはわからんろうがいろいろと事情があるきに気の毒じゃ…
 …朝鮮の名前はおかしな名前やな…点柱なんておかしいわ…
 …朝鮮人の名前は三っつにきまっちょるがァ…
 …ぼくも三っつやでェ、真似したんやろ…
 …日本は三、四、五もあるけに…
 …ふーん、ウメちゃんは二つや、うめきち…あれっ四っつやでェ!…
 …そうじゃない、漢字が二つじゃ、お前はヒロムと呼ぶが漢字はひとつじゃき…
 ぼくはウメちゃんは貴族やから色が白うて綺麗な顔しとるんや…と思った。
 ウメちゃんの半ズボンの膝は雑巾みたいなつぎが両方にあった。
 初めは糸のあとが曲がりよったが母があとでミシンをかけたんできちんと四角にまるで紙を張ったように綺麗やった。