今は世界的規模を誇る仁川国際空港ができて国際便の主力は移転したが昨年の秋、初めて私は新空港へ飛んだ。
しかし二十数年間、毎月訪れた金浦空港はいまも懐かしい。
ソウルまで五十分ほどで到着する便利さや、漢江沿いに走る車の洪水とまわりの景色はいつ見ても新しい感動がわき、好きな韓国の民俗、建物が心を慰めてくれる。
もし私が韓国人でここに暮らしたとしたらと想像しただけで胸が熱くなった。
空港内に文化財審査室がある。
いかめしい名の通り、密輸される文化財をなくするために設けられた部門で、審査室長のU氏は諧謔性の豊富な好人物で、委員のA氏の紹介でなにかがあった時、訪ねたらと言われていた。
現代粉青Noワンの作家、Y氏の作品をボストンに忍ばせて帰国の手続きしてると、税関の係に、審査室で証明書をもらってください、といわれ、挨拶すると、書類に判を押して…適当に書いてください…文化財専門委員のA氏の紹介ではコーヒーでもどうぞ…とのんびりした口調で部屋に案内された。
「私の趣味はこれヨ…」
彼は得意満面の表情で横軸をテーブルに広げて言った。
山水の水墨画で、よく見ると、苫屋のわきに仙人のような人物が酒徳利を腰にしている。
更に縦軸を広げると、そこにも仙人らしき人物が徳利を下げている…この士(ソンビ…両班)はわしヨ!と悪戯っぽい顔をした。
A氏同様の無類の酒豪らしい。
「この仙人は悟りより凡俗の顔ですね…」と答えたらワッハハハと笑いこけた。
まさに現代に生きる李朝人である。
山水の自然に自己を描いて陶酔してるのだ。
『橋上観水図』『渓流仰山水図』にも頬を朱に染めた仙人と腰に酒徳利が描いてある。
「これは儒人散策図ですよ」と私が批評すると、
「カムサニダ!」と答えにっこりした。
ボボワールが中国人は演技者だ…と言ったがそれ以上に韓国人は諧謔的演技の名人と思った。
しかし二十数年間、毎月訪れた金浦空港はいまも懐かしい。
ソウルまで五十分ほどで到着する便利さや、漢江沿いに走る車の洪水とまわりの景色はいつ見ても新しい感動がわき、好きな韓国の民俗、建物が心を慰めてくれる。
もし私が韓国人でここに暮らしたとしたらと想像しただけで胸が熱くなった。
空港内に文化財審査室がある。
いかめしい名の通り、密輸される文化財をなくするために設けられた部門で、審査室長のU氏は諧謔性の豊富な好人物で、委員のA氏の紹介でなにかがあった時、訪ねたらと言われていた。
現代粉青Noワンの作家、Y氏の作品をボストンに忍ばせて帰国の手続きしてると、税関の係に、審査室で証明書をもらってください、といわれ、挨拶すると、書類に判を押して…適当に書いてください…文化財専門委員のA氏の紹介ではコーヒーでもどうぞ…とのんびりした口調で部屋に案内された。
「私の趣味はこれヨ…」
彼は得意満面の表情で横軸をテーブルに広げて言った。
山水の水墨画で、よく見ると、苫屋のわきに仙人のような人物が酒徳利を腰にしている。
更に縦軸を広げると、そこにも仙人らしき人物が徳利を下げている…この士(ソンビ…両班)はわしヨ!と悪戯っぽい顔をした。
A氏同様の無類の酒豪らしい。
「この仙人は悟りより凡俗の顔ですね…」と答えたらワッハハハと笑いこけた。
まさに現代に生きる李朝人である。
山水の自然に自己を描いて陶酔してるのだ。
『橋上観水図』『渓流仰山水図』にも頬を朱に染めた仙人と腰に酒徳利が描いてある。
「これは儒人散策図ですよ」と私が批評すると、
「カムサニダ!」と答えにっこりした。
ボボワールが中国人は演技者だ…と言ったがそれ以上に韓国人は諧謔的演技の名人と思った。