ガイド日誌 - 北海道美瑛町「ガイドの山小屋」

北海道美瑛町美馬牛から、美瑛の四季、自転車、北国の生活
私自身の長距離自転車旅
冬は山岳ガイドの現場をお伝えします。

DAY40 九州 /宮崎県延岡市 人力で旅がしたい。遠くへ行きたい。『日本列島縦断 自転車の旅 2018』

2018年12月11日 | 自転車の旅 国内

宮崎県延岡市は冷たい雨なのだ。

こんな日は、チャリダーは身体を休める。

ボクは、しょっちゅう旅をしているように見えるけど、
実際には、
旅は1年に1回だけだ。

11月前後の7〜8週間くらい、
長めの旅をする。自転車旅だ。

自分の足で旅する、というところがたまらなくいい。
足跡を地球儀で確認できる(めちゃ小さいが)のもいい。

海外へ行くことが多い。

北半球は冬になってしまうから、
南半球に行く。
英語が通じて、治安もそこそこ。
物価も、そこそこ。

こうなれば、
ニュージーランドかオーストラリアになるのが必然だ。

ボクはちゃんと英語を勉強していないから、
自然と「旅」が学校になった。
パブ(田舎では食事はパブでする。パブは安い食堂であり酒場であり売店なのだ)やキャンプ場のキッチンなどで英語を学んだから、
ボクの英語には強いオセアニア訛りがあるけど仕方ない。
自分では割と気に入っている。

関西訛りのガイジン、
みたいなものだ。
悪くないだろ?

自転車で訪れた町は、
自転車目線ですべてが見えてくる。

町の空気感が、
息遣いのように、
スッと入ってくる。

いいこともあるし、
ヤな感じも、まぁ、ある。

また、
場所によっては、

ボクの今のビジネスの、
商売のヒントもたくさん転がっている。

これはいいな!

と思うものを記録して持ち帰り、
自分のビジネスに反映させると
数年後に当たる!
ということを繰り返してきた。

金の鉱脈を見つけるようなものだ。

ボクの奥さんも同じようなことをしている。
夫婦は似るのだ。

さすがに自転車じゃないけど、ふたりでシンガポールへ行ったとき
(NHK英会話の舞台がシンガポールだったらしく、彼女がしきりに行きたがっていたのだ)

これは!
と言う「言い回し」に出会って、
それを持ち帰って接客に活用している。
これが、めっちゃ当たって、サクサクこなしている。

さすが。

同業者たちがみんなチャリ旅でオーストラリアを走り出したら、ボクの「企業秘密」はダダ漏れになり、
考えがバレ、
次の手がお見通しになり、
ボクはきっと窮地に立たされるだろう。

まあ、たぶんそんなことはない。

業態をそっくり真似されてる間は、安全だ。
気がつけば、地域の同業者はみんなボクと同じ料金設定になり、
ボクと同じ車種を取り揃えて、
すごいところになると、車種の呼び名まで同じだ。
まあ、本物と紛らわらしくするのは昔からある商売の常套なので、むしろ「認められた」ことに感謝したい。

こそばゆいではないか。

しかし、
努力なくして、果実は得られない。
真似は所詮、真似にすぎない。

つまり、チャリ旅はボクにとって、
娯楽に見えて、実際は「仕事」そのものだ。

だから投資は惜しまず。

見たいもの
得たいもの
それから直感。

そういうものには投資は惜しまない。
そうやって旅を続けてきた。

投資の分だけ、
得るものは大きい。

また、
日本列島を、旅することも多い。

列島はいま、隅々までインバウンドが迫っている。

旧態依然の業態の店や宿が窮地になり、廃業も後を絶たない。

昔は良かったのにねー、
の声は少なくない。

景気が悪いのよ
とも言うが、周囲はむしろ繁盛している。
ただ、
享受できるか、できないか。
その差が大きいのだ。

昨年あったものが、今年ない。
そんな現実を毎日のように目の当たりにする。

いろいろあるけれど、
インバウンドに合わせた努力をしているところは、
努力が報われていると強く感じる。

いろんな迷いがあったはずだ。

あの人はうまくやった。
なんて陰口も叩かれるだろう。
お金もかかる。

でも、
努力は決して裏切らない。



日本はもう、昔には戻らない。
古き良き時代は、記憶の中にだけ存在している。
僕たちは未来へ進むしかないと思う。

ここまで書くと、いかにもインバウンド推進!という印象になるけれど、ボクの考えは少し違う。
ただ、日本人は、
「鎖国は終わったよ」
「日本も他の外国みたいになるんだよ」
ということは肝に銘じなければならないと思う。

日本人はハワイが好き。
でも、どうだ?
日本人だらけだろ?

ベネツィアはどうだ?
バルセロナはどうだ?
パリはどうだ?

日本だけが、日本人だらけなんて時代は終わった。
北朝鮮ですら、外国人が歩いているって知ってるか?

黒船はきた。
港は、世界に向けて開かれたのだ。
日本は、
新しい時代に向かっている。

「日本人観光客を呼び戻そう!」
いまだにそう言う人もいるが、
まずは自分の足で、
その五感を駆使して、現実を見に行くべきだ。
地元に座っていないで、さあ!
PCの画面を眺めて世界を知った気になってはいけない。

英語だ。
英語をもっと勉強しなければ!

先週のことだ。
関門海峡トンネルの人道エレベーターは、
ちょっとした観光地だった。

九州側で、白人の夫婦と乗り合わせた。
「バイクかい!いいねえ!」
「このトンネルはダダなの?幾らなの?」
「小さなコイン2枚。20セントですよ」(20円のこと)
「安いね。」
「寄付ですね」
「私たちもバイクに乗るのよ」
「川沿いを走るの。美しい人生だわ。」
「自転車のない人生は、つまらないですよね」

「きょうはクルマなんだよワッハッハ!」
2人はトンネル出入り口の車寄せで待っていた黒い大きなハイヤーに乗り込んでいった。
「よい一日を!」

わずか30秒程度の会話だけど、
乗り合わせた人たちの尊敬の眼差しを一身に浴びて、正直、決して悪い気はしなかったし、

英語が話せなければ、
こんな何気ない出会いでさえも、決して得ることはない。

英語だ。
もっと勉強しなければ!

もっともっと話せれば、
ボクのビジネスの機会はさらに広がるだろう。
面白い出会いが待っている。
確信を持って、そう言い切れる。

来年はまた、オーストラリアを走ろうか。

大陸縦断、
大陸横断、

これは終わらせた。しかし、
あの国は広い。

正直、嫌な目にたくさん逢う。
観光地や都市や、ワーホリの若者たちが集まる場所を離れると、
リアルなオーストラリアが待っている。
見逃せない、根深い有色差別がある。
それは西へ行けば行くほどさらに酷くなる。

あの国は広い。
まだまだ知らないことがたくさんある。

ネガティブも、ポジティブも、
全部まとめて引き受けよう。

来年かな。
再来年かな。

やっぱりニュージーランドにしようかな。

そんなことを考えながら、
五ヶ瀬川を眺めているのだ。

雨はまだまだ降りやまない。