ガイド日誌 - 北海道美瑛町「ガイドの山小屋」

北海道美瑛町美馬牛から、美瑛の四季、自転車、北国の生活
私自身の長距離自転車旅
冬は山岳ガイドの現場をお伝えします。

次々と姿を消していく不思議なボールペンはコレだ!

2019年10月27日 | その他未分類
本日で今シーズンの営業終了のガイドの山小屋。

最終日は何かと忙しいが、
スタッフ一丸となって日が暮れる前になんとか片付けは一段落ついたのだ。

受付セットも片付けた。

このボールペン。不思議なボールペン?

いちばん下のものは、週に2〜3本は確実に姿を消してしまう。そして二度と戻ってこない。

不思議だろ?

そこで、
野良仕事などで使われるポリエステルの目印テープを
受付ボールペンにつけてみた。
上の「下品」な3本だ。

かなりドぎつい原色のピンクで、
素材はポリエステル。
下品だがよく目立つ。

野良仕事や除雪作業などで目印として使うのだが、
2〜3年もしたら劣化してボロボロになり、
飛散してゴミ化して散らばるから注意が必要だ。

これを、事もあろうに北海道の国立公園内の美しいトレッキング路などに我武者羅にペタペタぶら下げてくるやつがいる。

やめろ。
やめんか。

下品や。
下品すぎる。

折角の北海道の野山が、下品な原色のピンクで視覚的に汚染されるばかりか、
前述のように2〜3年で劣化しボロボロになったあとゴミとなって落下して環境まで汚染する。

それも大量に。

俺は、
冬山の仕事では、こいつを見つけ次第、
断固として回収している。
無慈悲に徹底的に。

それは、時には45リットルゴミ袋いっぱいになることもある。

この大量のポリエステルが国立公園内の環境に無法にばら撒かれているのだ。
俺が通るトラックですらこの有様なのだから、
山全体では一体どれだけのポリエステルゴミが散乱しているのだろう。
しかも残置した本人は断固とした正義と善意の名のもとに行っているわけだから、
なかなか始末に負えない。
「俺様の足跡に続く誰か」が道に迷わないようにという正義感は、少し理解できないわけじゃない。

でも、せめて公式の登山ルート上、
そして、「ビニール」ではなく「木綿」にしてもらえないだろうかと切に願う。

理解は出来るから、
俺は声をあげられない。
相手様は正義の味方なのだ。
喧嘩してはいけない。
俺は、
ただ無言でピンクテープを回収し続けるだけでいい。

悪者になっても良い。
悪口言われても良い。
しかし、駄目なものは駄目だと思ってる。

さて。
そんな困ったピンクテープなのだが、
試しにボールペンにくくりつけてみた結果、

不思議!

それ以来、ボールペンが消えなくなってしまった。
ただの一本も。

魔除けの効果か?
遭難防止の御守か?

まことに
不思議なボールペンと、
不思議なピンクテープなのだ。



長距離チャリダーの旅準備は地味なのだ。

2019年10月22日 | 自転車の旅 海外
エア・ニュージーランドのチケットは今月末だというのに、いまだパンツ一枚用意してない。
それに、
1ヶ月前に申請した電子渡航書NZeTA(オンラインビザ申請みたいなやつ)もニュージーランド入国管理局に無視されたままで、いまだ返信はない。
キウイだもの、ラグビーワールドカップの期間は仕事どころじゃないだろうから気長に待つよ的にゆったり構えていたが、さすがに焦ってきた。 おいおい、72時間以内に返信されるんじゃなかったのかよ?
それなのに、問い合わせ番号を控えるのを忘れてしまった、愉快な山小屋さんなのだ。
俺はサザエさんかよ。

さて。
仕事は果てしなく暇だ。
空を見上げても雪虫ばかり飛んでいて、景気の良さそうな話のカケラも降ってはこない。
カネがないからAmazonで買い物しなくなり、宅急便のトラックはきょうも我が家を素通りする。
いつもの晩秋だ。
黄昏感ハンパない。

こうしていても仕方がないから、
旅用自転車の整備を始めた。
痛んだスポークを交換したり、ディスクブレーキのパッドを新品に交換したり。

キャリアを取り付ける。


下の写真みたいに前後左右にバッグを取り付けるための部品だ。



これを、
ちゃんと水平になるように調整するのだ。そうしなければ荷物が偏り、特定の場所に集中的に負荷がかかって破断の原因になる。
調整には水平器を使う。


調整出来るように、たくさんネジ穴がある。ベストな位置を探るのだ。


やっぱりチューブス(メーカー名)がいい。鉄製なので折れたとき溶接も容易だ。



強度に不安がある箇所は補強する。
あとから泣くのは自分だから。



予備のスポークを収納する。


シートの下は魅力的なスペースなのだ。




さらに、水ボトルを取り付けるホルダーを増設。
ま、たぶん邪魔になって途中で捨てると思う(笑)。



チェーンやスプロケットの汚れを落としてピカピカになったら自転車の準備はオッケーだ。
いつでも出かけられるぞ。


しかし、出入国管理局の承認メールが来なければ、どうしようもないのである。
参ったな。



ブレーキとお客さん

2019年10月07日 | 電動自転車など
そのお客さんはこう言うのだ。
「ブレーキが緩いので直して欲しい。」

10分ほど前に来店したお客さんだ。
ちょっと注文の多いお客さんだったが、警戒するほどではなかった。
スタートレックのピカード艦長に似た男性だ。

しかし。
見たところブレーキは完璧だった。
左右バランスはピッタリだし、このタイプのブレーキとしては制動も上々。
バッテリーは満タンだし、日が暮れるまで走り続けたとしてもビクともしないだろう。

我ながら整備は完璧。

しかし、艦長は言う。
「ブレーキが緩い」と。

こういうとき、押し問答になってはいけない。
ほとんどの場合、相手は論を曲げない。
いったんふり上げた拳は、容易には下げられないものだ。そこを察しなければならない。

相手のプライドを保ちつつ、おさめる。
さて。
俺は一計を案じた。

「それでは、」と、俺は10ミリの両口スパナをポケットから取り出して(いつもポケットに入っている。自転車に触れるたびにブレーキの引きを調整しているのだ)ブレーキの調整ネジを緩めてみせた。そして、ネジをクルクル回して見せたが、元の位置に戻して締め直した。

前輪のブレーキも同様に、いったん緩めた上で調整したフリをして元の位置で締め直した。

俺は慇懃に言う。
腰は低い。
「どうですか?」

「これでいい。」
艦長は満足げに答えたのだ。


もちろん、ブレーキはただ緩めて元の位置で締めただけなので、変わっていない。
しかし、艦長の気分は悪かろうはずもない。

まもなく、
ピカード艦長に似たお客さんは、上機嫌で「青い池」に向かって走り出した。

こんな昔話、あったよな。
ギリシャだか、ローマだったか。

艦長の背中を見送りながら、
俺は静かに控えめなガッツポーズ。

見上げれば秋の青空。
雪虫が飛んでいる。