大相撲初場所で26日、奈良県出身力士としては1922(大正11)年以来98年ぶりの優勝を果たした徳勝龍。パブリックビューイング(PV)があった奈良市役所は熱気に包まれた。

 午後3時半の開場前から大勢の人が列をなし、会場は立ち見が出るほど。先頭に並んでいた会社員の増井孝充(たかみち)さん(52)=東京都台東区=は奈良市出身。このために在来線を乗り継いでやってきた。「98年ぶりの奈良出身力士が優勝する瞬間を、相撲発祥の地(と伝わる)奈良で応援したい」

 午後5時半ごろ、徳勝龍が土俵に上がると市民らは固唾(かたず)をのんで2台の大型テレビを見つめた。優勝が決まった瞬間、「わー」「やばい!」と沸き立ち、飛び上がって喜んだ。

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 最前列で見守った姉の井上千夏さん(35)=奈良市=は徳勝龍について「幼いときから正義感のある優しい子」と語った。幼稚園では足に障害のある女児の手を取り、いつも助けていたという。父の青木順次さん(73)=同市=は会場に詰めかけた子どもたちの姿を見て、「この機会に相撲を始めてくれるとありがたいです」と話した。

 静岡県出身の大学2年、今野仁裕(まさひろ)さん(19)=同市=は「最高の取組を見せてくれました。大学生になって奈良に来たタイミングで優勝してくれてすごくうれしいです」。奈良市の相撲教室に通う小学3年の大西晴万(はるま)さん=生駒市=は「最後の寄り切りが豪快で、ものすごい試合でした。徳勝龍関のようなあきらめない、強い力士になりたいです」と話した。

 会場に駆けつけた仲川げん・奈良市長は「皆さんの熱心な声援が届いた。令和の新しい時代に、素晴らしい郷土力士が誕生したと感慨深い思いだ」。荒井正吾知事は「県民の誇り。日頃の厳しい稽古と精進を重ねられた結果だと思う」とのコメントを発表した。

 一方、徳勝龍の母、青木えみ子さん(57)と、おいの陽人(はると)さん(12)とめいの茜さん(10)は国技館で観戦した。奈良を出て、東京駅に着いたのは26日の昼前。徳勝龍の妻、千恵さん(33)とも合流し、優勝を祝った。(根本晃、平田瑛美、鈴木健輔)