ごとりん・るーむ映画ぶろぐ

 現在584本の映画のあくまで個人的な感想をアップさせていただいています。ラブコメ、ホラー、歴史映画が好きです【^_^】

LOFT(黒澤清監督)

2008-04-26 | Weblog
評価:☆☆☆☆☆
キャスト:中谷美紀、豊川悦司、安達祐実、西島秀俊、鈴木砂羽、加藤晴彦、
コメント:ストーリーは一応あるし、ホラー映画らしく「それっぽいシーン」もCGで作成されて観客にサービスされているのだが、そうしたCGのシーンよりも淡々とした場面のほうが怖い…というのが黒澤ホラー映画の特徴。昭和の初期に発見されたミイラと今回の映画に直接関係したミイラとの同一性は「暗示」しかされていないのだが、その暗示だけでもまた怖く、別のストーリーすら観客の脳裏には映画を見た後に膨らんでいく。ラストシーンはまるでヒチコックの「めまい」を見たような「落下感覚」におそわれ、「映画を見た…」という思いにおそわれる。主演の中谷美紀が小説家としてパソコンにひたすら向かい、机の横に本を積み重ねておいてあるシーンが見ていて面白く、また雰囲気が出ている。「悩まないのがプロだろ」といい放つ編集者もいいなあ…。実際にはこうした小説家と編集者というのはありえないと思うが、なんていうか、産業資本と伝統芸能の確執みたいな構図が、喫茶店やビルの中で展開されて、しかもそれを端正な画面に切り取る技が見事。余計な台詞なしで「力関係」や「権力と支配」の関係が画面に現れており、そして最後は、「だれが最終的に支配したのか」が勝ち抜きゲームのようになって画面に現れる。あ、そうだ。この映画は一種の勝ち抜きゲームでもある。「水上亜矢」という安達祐美が演じる女子大生も含めて、最初から最後まで誰かが誰かを支配している。そして最後生き残るのはやはり…。「CURE」や「地獄の警備員」「回路」など過去の作品よりもさらに「わかりやすい粗筋」で、しかも「もっと怖い画面」。CG部分が少ない分だけやっぱり怖さが増すのが、日本のホラー映画のいいところかもしれない。
ストーリー:芥川賞受賞作家、春名礼子は新境地を開くために恋愛小説の執筆に取り掛かっていたが筆が進まない。担当編集者に依頼して、遠くの見晴らしのよい別荘を探してもらい、急遽転居して、そこで執筆活動を再開する。ドロのようなものを吐いたりするなど体調がすぐれなかったのだ。ただ転居してきていきなり別荘の背後にある大学の研究棟にだれかが荷物を運び込むのを見かける。そしてその後、ミドリ沼の底から引き上げられた1,000年前の美女のミイラについて、背後の研究棟で「吉岡」という人類学の教授が研究しているのが判明するが、その後、不可思議な現象が相次いで発生する…。

ヒストリー・オブ・バイオレンス(デイビッド・クローネンバーグ監督)

2008-04-26 | Weblog
評価:☆☆☆
キャスト:ヴィゴ・モーテンセン、マリア・ボロ、ウィリアム・ハート、アシュトン・ホルムズ、ステファン・マックナイト、エド・ハリス
コメント:さして期待しないでレンタルしてきたのだが、あまりの凄惨な暴力の描写に引き込まれ最後までこの映画の世界にのめりこんでしまう。凄惨な暴力とはいっても時間的な描写はきわめて短いし、あまりにも「凄惨すぎる」と思われるシーンはカットされて観客の想像力に訴える「仕掛け」になっている。レンタル店では成人指定になっていなかったが、それはおそらく「凄惨なシーン」の直接的な描写が「物理的に」少なかったためであろう(ただし日本ではR-15指定)。ただ、エド・ハリスやウィリアム・ハートといった名優の「東海岸のギャング」ぶりがまた「恐怖」を倍増させる。けっして大声をだしたり、手を出したり、銃を乱射したりといった振る舞いはしない。静かに淡々と語るだけなのだが、その「語り」の内容が、きわめて知的な「憎悪」に満ちているため、黙って聞いているだけで震え上がるような台本に。読み上げる役者の演技力にもよるのだろうが、エド・ハリスもウィリアム・ハートも長い台詞など苦にもしない。銃が撃たれる瞬間よりも静かに語っている場面のほうが恐怖感が増す…というのはこの映画に出演したヴィゴ・モーテンセンをはじめ、大人の役者の演技力が光る場面か。余計な説明なども画面には表示されず、西部地方のどこか静かな街で静かに暮らしているダイナーの店に、明らかに凶暴な強盗が押し入ったことから、さらにおそろしいギャングが現れてくるという設定…。ゾンビに囲まれてサバイバルゲームをしていく以上に「怖い設定」だ。
 地元の保安官が「証人保護下プログラムにいるのか?」などと尋ねるシーンがアメリカ的。「ゴッドファーザー」などでも証人の安全を図るためにいろいろな措置が講じられていると聞くが、実際にそれが日常として生活の中にインプットされている場合には、地元保安官としては得たいの知れない事件が発生した場合には、あくまで秘密裏にそうしたことも尋ねる状況にあるのかも。
 最終的に主人公は、夜を徹して15時間かけてインディアナ州からフィラデルフィアに向かうのだが、映画の演出としてすごいのは、15時間が経過したと推測されるシーンになればなるほどヴィゴ・モーテンセンが「活き活き」していく場面。「暴力」「ペルソナ」「多重人格」「家族」「平凡な生活」といったテーマの中で、睡眠時間が減少するとともに「別の顔」が現れてくる恐怖感の演出もすごい。映画がすごいというよりも、やはり俳優たちのすべての演技が子役も含めて素晴らしい。
 デイビッド・クローネンバーグ監督については「ザ・フライ」以外はあまり怖いともなんとも思わなかったが、ひさかたぶりにみたデイビッド・クローネンバーグらしさが「あまりないホラー映画」。
ストーリー:一泊24ドル98セントのモーテルを出る男二人。一人は非常に几帳面な男らしく一泊した部屋のドアをきっちりしめて、ドアの前を片付ける。「領収」を「レジで片付けて」その二人は車を走らせる。一方、温厚な性格でしられるトム・ストールはインディアナ州ミルブルックで妻のサラ、息子のジャックや娘と暮らしている。そこへ先のモーテルを出発してきた男たちが強盗に…。トムはその強盗を撃退したが、今度はトムを「ジョーイ、ジョーイ・キューザック」と別名で呼びかける男たちが現れる…。