脳トレ宇宙論 第16話 天文観測機器、望遠鏡、天文台
正しい宇宙像を知るには、天体の正確な配置や動きを測定できる観測装置が不可欠であり、また観測手法、観測技術、解析精度の向上発展も重要である。結果として宇宙観の変遷と天文観測機器の発達とは密接な関係がある。(宇宙観5000年史、p.57)
今回は古代中世の天文観測機器に焦点を当てる。つまり望遠鏡の出現までの時期を考える。
・望遠鏡以前の天文学
古代からケプラーまで肉眼以外に天体観測手段のない時代においては、暦を作るとか、時刻を知るとか、場所を特定する(海上の航海、方向、距離などの測量)のために天体の正確な配置や動きを測定できる観測装置が不可欠である。同時に観測手法、観測技術、解析精度の向上発展も重要である。
・科学史抜粋ー天文学、数学を主にして
【紀元前】
3000頃 星座の誕生(オリエント)
2800頃 ピラミッド建設がさかん(エジプト)
600頃 サロス周期の発見
6世紀 自然哲学の創始(タレス)
6世紀 最初の世界地図(アナクシマンドロス)
6世紀 ギリシア数学の確立(ピタゴラス)
4世紀 天体の不規則運動を説明(エウドクソス)
4世紀 自然学の確立(アリストテレス)
280頃 月と太陽の大きさ算定、太陽中心説提唱(アリスタルコス)
230頃 地球の大きさを測定(エラトステネス)
230頃 アルキメデスの原理の発見
150頃 月までの距離を算定、および歳差の発見(ヒッパルコス)
46 ユリウス暦の採用
【紀元後】
50 アレキサンドリアの数学者機械学者ヘロン,蒸気機関
120頃 プトレマイオス「アルマゲスト(Almagest)ローマ帝国時代のエジプト・アレクサンドリアの天文学者の天文学(実質的には幾何学)の専門書、天動説(地球中心説)の確立。
641 アレキサンドリアの図書館焼失
9世紀~ アラビアで科学が発展する
10世紀 天文航法はじまる(アラビア)
10世紀末 幾何光学と生理光学の研究(イブン・アル・ハイタム)
12世紀頃 ヨーロッパで古代科学書の翻訳がさかんになる
1250頃 天文体系の研究(アル・トゥーシー)
14世紀 機械時計の発明(ヨーロッパ)
1440 ポイルバッハ 『アルマゲスト』翻訳
1450 活版印刷術(グーテンベルク)
1471 航海暦の作製(レギオモンターヌス)
1500頃 レオナルド・ダ・ヴィンチが活躍
1543 太陽中心説の提唱(コペルニクス) 天文観測家。象限儀、三角尺などの観測器械を製作し太陽高度の測定を行った。
・天文観測器・観測機械・宇宙を拓く技術進歩
・デオプトラ(現在の経緯儀)
・アストロラーベ(Astrolabe :天文計算・観測装置)現在の星座早見盤と観測器具の組み合わせ。古代の天文学者や占星術者が用いた天体観測用の機器であり、ある種のアナログ計算機とも言える。用途は多岐にわたり、太陽、月、惑星、恒星の位置測定および予測、ある経度と現地時刻の変換、測量、三角測量に使われた。イスラムとヨーロッパの天文学では天宮図を作成するのに用いられた。
・上右写真は東京都の東急世田谷線駅前(キャロットタワーの下)の広場中央にある地上のアストロラーベの円盤:1570年頃のヨーロッパで作られたアストロ
ラーベをもとにして、描かれている。外周部には時刻が目盛られ、その内側は下から順に、地平座標板・星座板・定規が重ねられたように示されている。
上にずれた多くの円が描かれているのが地平板、一番外の円が地平線で、これらの円はこの場所の緯度に合わせて描きなおしてある。唐草模様のような透かし彫りの板が星座板で、トゲの先がそれぞれの星の位置を示しているが、1996年での位置に変えてある。この面は一種の星座早見板で、1996年11月18日(本建物の落成日)午前0時のこの場所(北緯35度38分28秒、東経139度40分22秒)での星座を表すよう、セットした状態にな
っている。
(脳トレ課題)アストロナーベを作ろう。原理の理解には数学の三角関数、平面幾何、立体幾何、射影幾何の知識が必要。脳トレに最適。WEB1記事:「アストロラーベの作り方」、WEB-2「アストロラーベについて--構造と使い方、ペーパークラフト--」など多数あり。
・トルクエタム(Torquetum, Turquet):中世の天文学用機器であり、地平座標、赤道座標、黄道座標という3種類の座標系の測定値の相互変換に用いられた。一種のアナログコンピュータでもある。(下写真)
・ノクターナル(Nocturnal)星時計:夜間の時刻を知る。北極と北極星から決める。16世紀に考案されたといわれる夜間時刻測定器。2枚の円板と2本の可動アームで構成される。夜空を極星を中心とした時計の文字盤、他の星を1恒星日に1回転する時計の時針と考えた時計である。星時計の中心穴をのぞいて北極星にあわせ、指針をおおぐま座北斗七星の指極星α(アルファ)、β(ベータ)星に一致させると、円板上の目盛りで時刻が読めるようになっている。星で時刻を知ることは古代エジプトでも行われていた。切れ目を入れたシュロの葉や、おもりを下げた鉛直線を用い、当時知られていた恒星の動きを観察して夜間の時刻を知ったという。(下写真左右)
・天文時計:現代の機械時計で現在の時刻、時間、天文現象、キリスト教会の祈祷時間などを知る。天文学的な情報、例えば太陽、月、十二宮の星座、時には主要な惑星の相対的な位置などを示すための特殊な装置と文字盤を備えた時計である。(下写真)
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