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脳トレ宇宙論 第17話 天文観測機器、望遠鏡、天文台

2020-04-11 16:12:02 | 脳トレ宇宙論

脳トレ宇宙論 第17話 天文観測機器、望遠鏡、天文台

・宇宙像の拡大――望遠鏡の発明と天文台の発展

       

写真左2図:ガリレオ屈折望遠鏡        右:ニュートン式反射望遠鏡

 大航海時代に入る14世紀頃から、航海のために正確な天体観測が行われるようになり、コペルニクスによって地球やほかの惑星や衛星は太陽の周りを回っているとする地動説が生まれた。ガリレオが地動説の正しさを証明したのは1632年のことで、近代天文学が誕生した。宇宙の真の姿を、科学的に探求する宇宙観が深まってきた。


 ・望遠鏡の発明 (WEB ”望遠鏡の種類と構造 The type and structure of the telescope”より)
 1608年 オランダのメガネ職人ハンス・リッペルスハイは、2枚のレンズをかざして遠くを見ると、ものが大きく見える事を発見した。これが望遠鏡の始まりとされている。翌1609年、望遠鏡の噂を聞いたガリレオ・ガリレイが、試行錯誤の末に望遠鏡を完成させ星に向けた。これが望遠鏡による天体観測の始まりである。ガリレオの望遠鏡は屈折式で、光がレンズの中を通るため像が滲むという欠点があった。
  この問題を解決するために、アイザック・ニュートンは鏡の表面反射を利用した望遠鏡を開発した。鏡の真ん中がへこんだ凹面鏡を使用した望遠鏡で、鏡の表面反射なので色の滲みがなく非常にシャープに見えた。

 ガリレオが最初に作った望遠鏡は屈折式で口径1.6cm、ニュートンが作った反射望遠鏡は口径5cmであった。

・1610年、ガリレオが自ら製作した望遠鏡で木星を観測して、その最初の4つが発見された。この発見は、月を持つことから地球が特別だという考え方を覆し、地動説の証明に大きく寄与した。(木星には現在65個の衛星が発見されている)。


  屈折式の対物レンズは口径が大きくなるほど厚みが増し、光の透過率が落ちる。この限界が120cmと言われている。現存する屈折式望遠鏡の最大口径はヤーキス天文台の40インチ(101cm)であるが、以後これを超える大口径の屈折式は作られていない。
  反射式の場合は、鏡の表面反射なので口径が大きくなっても、厚みはそれほど増やさずにつくることができる。すばる望遠鏡の鏡は直径が8.2mもあるのに厚みはわずか20cmである。しかし、1枚の鏡で作るには限界に来ていて、最近の大口径望遠鏡は、小さな鏡を貼り合わせて巨大化する「マルチミラー方式」で作られる。現在の最大口径を誇るケック望遠鏡は口径10mあるが、直径1.8mの鏡を正六角形に切り取り36枚貼り合わせている。また、現在製作中の口径30mの望遠鏡(TMT)は正六角形の鏡を492枚貼り合わせて作る。

・屈折式光学望遠鏡の種類

・ガリレオ式 
 対物レンズに凸レンズを、接眼レンズに凹レンズを使用、凸レンズと凹レンズで色のにじみをうち消すので見やすい。正立像になる視野が狭く倍率を高くできない
使用例:オペラグラスで使用され、倍率は2~3倍

・ケプラー式 
 対物レンズ、接眼レンズ共に凸レンズを使用視野が広い。低倍率から高倍率まで使える色のにじみが目立つ(現在では対物レンズを凹レンズと組み合わせることで色のにじみが非常に少なくなっている)。倒立像になる(プリズム等で正立像にすることは可能)。ヨハネス・ケプラーは1611年に凸レンズを接眼鏡に使う望遠鏡を発表したが、自分では製作しなかった。1615年にクリストフ・シャイナーがケプラー式望遠鏡を製作し、天体観測にも使用した。 
 使用例:市販されている屈折望遠鏡はほとんどケプラー式で、色のにじみや収差を抑えるため、対物レンズの材料や組み合わせが工夫されている。双眼鏡はケプラー式望遠鏡を2台並べたもの

 

・反射式光学望遠鏡の種類

・グレゴリー式望遠鏡


 イギリスのジェームス・グレゴリーによって考案され1663年の著書に記載されて公表された。主鏡は放物凹面鏡、副鏡は楕円凹面鏡。主鏡の中央に穴があってそこから光を後方に導く形式の望遠鏡である。

・ニュートン式

 ニュートンがグレゴリー式望遠鏡を改良して1668年に第一号機を完成した。凹面主鏡で反射させた光を、光軸上前方に置いた斜め45度の平面副鏡(斜鏡)で横方向に取り出す形式である。鏡の表面反射を使用するので屈折式のような色のにじみがでない。大きな鏡も作りやすい、横から覗くのでなれないと使いにくい。
使用例:市販されている反射望遠鏡はニュートン式が多く入手しやすい。

・ハーシェル式 


 ハーシェルが、反射率の低い金属副鏡を使用せず明るい像を得るために考案した形式の望遠鏡である。ニュートン式では斜鏡が邪魔になるので取ってしまった。斜鏡がないので視野が明るい。主鏡を傾けるので歪みがでる。最初から傾きのある鏡を作ることも可能だが製作は非常に困難。接眼部が作りにくい。像が裏返しになる
使用例:市販品はない

・ハーシェルは、ドイツ出身の音楽家であったが、天王星を発見したことから天文学者としての活動に専念。ハーシェルはその生涯に400台以上の望遠鏡を製作した、と同時に星雲のマッピングを行い、天の川の構造とサイズをほぼ明らかにした。これによって、太陽系ですら宇宙の中心ではないことが分かり、さらなる宇宙への展望が開かれた。


 ・カセグレン式 

 17世紀のフランスの司祭カセグレンによって発明された。主鏡の光軸上前方に平面斜鏡の替わりに双曲面の凸面鏡(副鏡)を対向させ、主鏡の中央の開口部から鏡面裏側に光束を取り出す形式の望遠鏡である。派生した光学系が多く、クラシカル・カセグレン光学系と呼ぶこともある。
 望遠鏡の向きとのぞく方向が同じなので扱いやすい。焦点距離が長くなるため高倍率が得やすい。逆に低倍率が得にくい。凸面鏡の製作が難しい
使用例:中型から大型まで広く使われている。主に天文台等の大型望遠鏡に使われている。1420年サマルカンド天文台(ウズベキスタン)に建設された。

・電波望遠鏡
  光ではなく電波を観測する。1932年にベル研究所のカール・ジャンスキーが、通信中にはいるノイズが気になり、いろいろ調べたところ宇宙からやって来ていることに気付いた。これをきっかけに電波天文学が始まった。 

・電波干渉計

 電波望遠鏡の多くのアンテナは回転放物面(パラボラ)を利用するが、電波干渉計とは複数の電波望遠鏡を離して配置し、受信された電波を干渉させることで実効的に高い分解能を得る観測方法(Radio Interferometer)。

 

・天体望遠鏡、天文台の歴史の一部

1608 望遠鏡の発明リッペハイ(蘭)ほか
1668 反射望遠鏡の製作ニュートン(英)
1672 パリ天文台の完成(仏)
1675 グリニジ天文台創設(英)
1735 航海用クロノメータH-1の製作ハリソン(英)
1758 色消しレンズの特許ドロンド(英) 特許取得は1758年ガレ(独)
1850頃天体写真術の確立ボンド(米),ド・ラ・リュー(英)
1930 シュミットカメラの考案と製作シュミット(独)
1933 リオフィルターの発明リオ(仏)
1948 パロマー山天文台200インチ望遠鏡完成(米)
1957 最初の人工衛星スプートニク1号(ソ連)
1969 人類の月面到達(アポロ11号)
1990 ハッブル宇宙望遠鏡打ち上げ(米・欧)
1998 グリニッジ天文台の廃止(英)

2002 マグナム望遠鏡、ハワイ州ハレアカラの山頂に設置していた口径2メートルの望遠鏡運用開始

2013 アルマ望遠鏡運用開始(日ほか東アジア,北米,欧州諸国)

2016 ブラックホール連星合体時の重力波の観測LIGOチーム(米)

2019年4月 巨大ブラックホールとその影の存在を初めて画像で直接証明した。2017年4月にM87のブラックホールの観測が行われ、5ペタバイト(1ペタバイトは1000兆バイト)におよぶデータが収集された。科学者たちがこの膨大なデータを解析し、ブラックホールの顔写真を構成するには2年もの歳月を要した。

・マグナム (MAGNUM:Multicolor Active Galactic Nuclei Monitorin)望遠鏡は活動銀河核(クェーサー)の多波長モニター 観測の為に建設された。

モニター観測は同じ天体を繰り返し見ることである。それゆえ自動観測が可能で、望遠鏡はロボット化されている。夕暮れ時、自動的にドームが開き、クエーサーを望遠鏡が捕らえ、紫外や可視から赤外まで同時に撮像する。次々とクエーサーを捕らえ、明け方に観測を終了し、ドームを閉じる。

 世界で最も進んだこのハイテク無人観測所にはインターネットを通じて、機上からでもあるいは宿泊先からでも、世界中いたるところからアクセスすることができる。望遠鏡が正常に作動しているかどうかを監視するだけでなく、何か不具合が起こったときには遠隔制御によって調整することもできる。

 現在、マグナム望遠鏡はハレアカラ山頂から撤去されている。設置されていたサイトには、パンスターズ計画の2番目の望遠鏡が設置されている。

・パンスターズ (Pan-STARRS, Panoramic Survey Telescope And Rapid  Response System) は、4台の望遠鏡で継続的に全天をサーベイ観測し移
動天体や突発天体を検出する計画である。

 In January 2019 the second Pan-STARRS data release was announced. At  1.6 petabytes, it is the largest volume of astronomical data ever released. The first Pan-STARRS telescope (PS1) is located at the summit of  Haleakalā on Maui, Hawaii, and went online on 6 December 2008 under the  administration of the University of Hawaii. PS1 began full-time science observations on 13 May 2010. 

・天文観測の飛躍的進展(参考:宇宙論5000年史p.261)

 1900年代後半からの天文観測技術の飛躍的進展は目を見張る。可視光天文観測の、1980年代の写真に変わってCCD技術の採用は素晴らしい。また望遠鏡の”分割鏡”技術の採用は、高性能望遠鏡の実用的限界が4m程度から倍の8mになった。さらに”能動光学”、”補償光学”という制御技術は次世代の30m級の大口径が視野に入っている。

 また観測波長のガンマ線から電波までの広帯域の観測(多波長天文学)や大気圏外の観測の組み合わせなどで飛躍的に天文観測が向上している。さらに電磁波ばかりでなく、ニュートリノ、宇宙線、重力波の観測まで広がっている。

 望遠鏡や観測技術ばかりでなく、それらを制御したり大量の観測データを処理するIT技術の革新により、昔では想像すらできなかった”大規模サーベイ観測”が可能になり、天文データベースが質量ともに一新されている。さらにスーパーコンピュータなどによる天文現象のシミュレーション技術も大幅に進展している。まさに21世紀は天文学にとって飛躍の世紀でもある。


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