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脳トレ宇宙論 第33話 宇宙観の歴史

2020-08-07 14:27:37 | 脳トレ宇宙論

脳トレ宇宙論 第33話 宇宙観の歴史

・宇宙論 〔cosmology〕    From Wikipedia et al.
宇宙の起源・構造・終末などについての理論の総称。宇宙を対象とした自然学として哲学や宗教の重要部門をなすが、現在では現代物理学的・天文学的研究をいう。
また、私たちの住む宇宙について、私たちがいかに認識し、どのように理解をしているか、ものの見方と考え方である宇宙観とも言える。
この歴史的発展は宇宙を対象として、観測および科学的・論理的考察をとおして確認立証して築き上げてきた体系である。これは恰もジグソウパズルの切片を適切に集め並べ直して一つの主題を完成させる作業に似ていて、宇宙Jigsaw Puzzle と言える。この主題とは天文(宇宙)の観測技術や装置、計算手法を始めとして、その時代の社会的関心事や要請などのほか研究施設、組織、人的構成などにも関連する研究課題である。宇宙論の歩みは人類の歴史とともにあったと言っても過言ではない。 

宇宙観の中心的テーマは宇宙における人間の位置、つまり宇宙において我々は何者かという課題に収斂する。

 

1.古代・中世の宇宙観―地球中心の天動説

昔の人々は、日常生活で得られる情報・感覚から類推して宇宙観を形作っていった。確かに、素朴な視点でみると大地が動いているとは感じられないし、太陽や星は自分のいるところを中心に回っているように見える。このように大地は静止していて、太陽や星の方が動いているとことが前提となっている。

つまり、古代人は自分たちのいるところが世界の中心であり、宇宙の中心だと考えていた。これはどの地域でも同じで、考え方は共通している。

かくして、古代・中世における宇宙像は人間中心・地球中心の宇宙観であった。そして宇宙の主要な空間は太陽系であり、太陽、月、惑星などであった。

そして古代からケプラーの時代までは、肉眼以外に天体観測手段のない時代で、宇宙は創造力溢れる神話の世界でもあった。

 

・ギリシアの宇宙観・幾何学的宇宙・天体座標の発明

天体の位置を座標で表すことに思い至ったのもギリシア人である。紀元前350年ごろ、ギリシアのユードクスは世界地図を作成した。次に、世界で初めて世界地図に相当する星図を作り始めた。ユードクスが優れていたのは基準となる座標を北極星にとり、北極星から全ての方向に広がる放射状の線(赤経)とこれに直交する線(赤緯)を考案したことである。これにより、正確な星図を作成する基礎ができた。

また天体の運動の様子や軌道の考察が詳しく論ぜられるようになった。


2.中世ルネサンス期(約1300-1600年)の宇宙観
16世紀、ルネサンスが勃興し再びヨーロッパが天文学の中心となっていく。ギリシア時代に提唱されていた地動説が再提唱されて議論されるようになった。また17世紀初頭には望遠鏡が発明され、今まで肉眼では見えなかった天体の観測が可能となり、飛躍的な観測データの蓄積が行われていった。ケプラーは観測結果に基づいてケプラーの法則を導き、ニュートンはそれを説明する万有引力を提唱した。 

 

3.1600年代​から1800年代―太陽中心説から恒星の世界へ
・地動説の検証から恒星天文学の誕生

・太陽中心説とコペルニクス革命
・精密観測にもとづく真の惑星運動の発見―ティコとケプラー
・宇宙像の拡大―望遠鏡の発明と万有引力の法則の発見

望遠鏡の発明とニュートン力学の成立が18世紀から19世紀にかけての天文学の発展の原動力となった。1727年には光行差、1838年には年周視差が発見され、地動説が観測的に証明された。イギリスのハーシェルは妹カロラインともに望遠鏡を制作。1781年には天王星を発見し、1800年頃には赤外線放射を発見した。天王星の運動のずれから計算によって新たな惑星の位置が予言され、その予言の通り1846年に海王星が発見された。

19世紀には写真術が発明され、肉眼で観測できないような暗い天体でも、長時間露光の写真撮影によって観測できるようになった。これにより、太陽系天体と恒星に限られていた天文学の対象が星雲や銀河に拡大していった。

19世紀中期には分光学が興り、それまで単に望遠鏡で天体の位置・形状・明るさを観測するだけだった天文学に、天体からの光を分光してスペクトルを観測するという画期的手法がもたらされた。スペクトルを観測すると、天体に含まれる元素についての情報を得ることができる。また、天体のスペクトルを実験室でのスペクトルと比較することで、ドップラー効果によるスペクトルのずれが分かり、その天体が持つ速度に関する情報を得ることができる。このように天文学に分光学の手法が取り入れられることによって、天文学から天体物理学という分野が発展するようになった。ちなみに、太陽系は星雲から生成されるというカント・ラプラスの星雲説が現れていた。

 

4.1900年代から2000年代―新天文学の台頭と発展(天体物理学と銀河宇宙、太陽・星の物質の解明、銀河系と銀河の発見)

・一般相対性理論とフリードマン宇宙モデル

1905年に特殊相対性理論を発表したアインシュタインはその後加速度運動を含む一般的な場合にも理論を拡張し1916年までに一般相対性理論の枠組みを完成した。この一般相対性理論は物体の運動や質量を時間および空間と結びつけて理解する時空の物理学である。空間や時間は物体の運動とは独立に存在することを前提とする古典物理学と際立って異なる体系であった

アインシュタインは物質を含む宇宙に一般相対性理論を適用すると万有引力のために宇宙が潰れてしまうことに戸惑った。相対論はアインシュタインの論文が発表されたドイツ以外では当初はあまり評価されなかったが1919年の皆既日食の際に一般相対性理論が予測する太陽の重力場による光線の曲がりが検出されて一躍注目の的となり宇宙モデルの研究にも関心が高まった。1922年にロシアの数学者フリードマンが膨張や収縮をするアインシュタインの方程式の解を見出した。これはフリードマン宇宙モデルとして知られている。

さて、アインシュタインの相対性理論によって近代的天文学の考察が始められた。20世紀に入ると宇宙の様々な天体から電波が放出されていることが発見され、電波天文学が始まった。これにより、可視光での観測に限られていた我々の宇宙に関する知識はさらに広がることとなった。20世紀後半には人工衛星が打ち上げられるようになり、地上からは大気の吸収によって観測できないγ線、X線、紫外線、赤外線など、様々な波長の電磁波で宇宙を観測できるようになった。

 

宇宙の基本的構成要素は銀河であること、すなわち銀河からなる宇宙という描像が確立して間もなく、遠方の銀河ほど速い速度で私たちから遠ざかるというハッブルの法則が発見された。この法則は宇宙全体が一様等方的に膨張していることを示すもので、それまでの静止宇宙という概念からの大転換となった。

膨張を過去に辿れば、必然的に宇宙の大きさは小さくなり密度は高くなる。初期宇宙の高密度状態における物質の研究に欠かせない原子核物理学と量子力学の発展の中からビッグバン宇宙論が提唱され、1965年の宇宙マイクロ波背景放射の発見により新たなパラダイムとして確立した。ビッグバン宇宙では、素粒子の性質が宇宙の進化に深く関わっている。 

その後インフレーション理論が登場し宇宙の進化のみならず宇宙の起源についても科学的に考察する基礎ができた。 

・ビッグバン宇宙論(宇宙膨張の発見とビックバン)

現在、精密な天文観測によって、 宇宙の始まりは過去にビッグバンと呼ばれる現象によって引き起こされたと考えられている。その瞬間に時間と空間が発生し、点のような小さ い領域で始まった宇宙は爆発的に膨張し、その膨張は現在でも続いている。 最初期の宇宙は、想像を絶する高温、高密度、高エネルギーの状態にあり、物質はすべてバラバラの素粒子として存在した。 その後、宇宙は膨張とともに冷却していき、バラバラだった素粒子が反応し結合して、やがて元素が合成され、原子ができ、それらが万有引力で集まってさらに星などになり、それらが集まって銀河になり、星の中ではあらたに重元素が生成され、超新星爆発でそれら重元素がバラまかれ新たな星の材料になり、このようにして宇宙が現在のような形態になった。(宇宙の大規模構造の形成:宇宙の再電離・恒星の形成・銀河の形成・銀河群、銀河団、超銀河団の形成)

(出典 WEB 嶋作一大(東大)TMT 時代のサイエンス 銀河の形成と進化 )

 

5.21世紀における宇宙論の展望 

20世紀末1980年代以降に急速に進展した天体物理学から宇宙の起源の理論的解明の時代へ、そして量子宇宙論・素粒子論の進展。宇宙の誕生とその進化発展は量子力学・素粒子物理学で解明される。

(暗黒物質の存在、 マイクロ波背景輻射の温度ゆらぎ発見、 ハッブル定数が10%の精度で決定、 銀河系内ダークマターの検出、 暗黒エネルギー存在可能性)

一般相対性理論は重力場の古典論として確立されたが、電磁場の存在の必然性を何ら説明しないものであった。アインシュタインはこれを不満足と考え、全てを統一的に説明できるような理論を建設することを後半生の目標としたが成功しなかった。

現在、自然界には基本的な力として重力と電磁気力の他に強い相互作用と弱い相互作用が知られている。それらも包含した統一場理論はとても難しく、その試みは一時廃れてしまった。湯川秀樹によって扉が開かれた素粒子物理学においては1950年代に坂田昌一グループがハドロン(強い相互作用をする素粒子)と中間子をそれより下位のもっと小さな微粒子―基本粒子―からなると考え数学的に解明してクォーク模型を提唱した。

    弱い相互作用と電磁相互作用しかしない粒子をレプトンと呼び、1967年にワインバーグとサラムはレプトンとクォークの電磁および弱い相互作用を対称性を持つゲージ場(ヤンーミルズ場)とヒッグス機構という観点から定式化した、繰り込み可能な場の理論を提唱した。これを弱電磁相互作用の統一理論と呼ぶ。グラショウは1974年にジョージとともに非可換ゲージ理論によって、強い相互作用、電磁相互作用、弱い相互作用を統一的に記述する大統一理論を提唱した。アインシュタインの統一場理論の構想が思わぬ形で進展したわけである。しかし重力相互作用まで統一することには成功していない。

ところで1960年代の終わり頃、南部陽一郎はハドロンが振動する弦から構成されており、振動のそれぞれのモードが別々の粒子に当たると考えたストリング(弦)理論を提唱した。この始まりからその後1984年にシュワーツとグリーンは超弦と呼ばれる特別な弦理論を発見した。超弦理論は量子力学と相対論が融合された上に成り立ち、重力に関する量子論の最初のものだと考えられている。

最後に、現在では宇宙は絶えず膨張を続けているという膨張宇宙論が有力であるが、この他に周期的に膨張・収縮を繰り返すという振動宇宙論、膨張とともに新しく物質が創成されるという定常宇宙論などが提唱されている。

宇宙誕生と進化は理論の想像力と実験技術で辿り着いた世界であり、今後もさらに新しい理論と実験技術が宇宙論の進展を促すであろう。

・年表

1606年  ケプラー、「惑星の運動の法則」を発表。
1632   ガリレオ、地動説を完成させる。
1666   ニュートン、万有引力の法則を考案(ニュートン力学)。
1781   ハーシェルが天王星を発見。
1800頃  ハーシェルが赤外線放射を発見。
1846   ガレが海王星発見。

1900    量子仮説(プランク)
1903   原子崩壊説を提唱(ラザフォードとソッディ)
1904   原子模型の理論を発表(長岡半太郎)
1905   特殊相対性理論、光量子仮説、運動物体の電気力学(アインシュタイン)
1911   原子構造(有核原子模型)の研究(ラザフォード、ボーア)
1912   宇宙線の確認(ヘス)
1913   原子構造の量子論(ボーア)
1915   重力場方程式、一般相対性理論の提唱(アインシュタイン)
1919   人工原子核変換(原子核崩壊の実験)(ラザフォード)
1923   コンプトン効果の発見(コンプトン)
1923      物質波説(ド・ブロイ)
1925   量子力学の創始(ド・ブロイ)

1925   行列力学(ハイゼンベルグ、ボーア):
1925   星の内的組成の研究(エディントン、ラッセル)
1926   シュレデンガー:波動方程式
1926   赤方変位発見(ハッブル)
1927   トムソン、デヴィンソン:電子の干渉効果
1927       ハイゼンベルグ:不確定性関係
1927―28 デラック:電磁場の量子論
1928   α崩壊の理論(ガモフ)
1929   宇宙膨張法則(ハッブル)
1930   サイクロトロンの建設(ローレンス、リビングストン)
1931   宇宙電波の発見(ジャンスキー)
1931   ニュートリノ仮説(パウリ)
1932   陽電子の発見(アンダーソン)
1932   中性子の発見(チャドウィック)
1935   中間子理論(湯川秀樹)
1937   中間子の発見(アンダーソン、ネッダーマイヤー)
1938   ウランの核分裂の発見(ハーン、シュトラスマン)
1939   核反応による星の熱源の説明(ベーテ)
1942   核の連鎖反応(フェルミ)
1945   原子爆弾(米国)
1945   シンクロトロンの発明(マクミランほか)
1947     パウエル:パイ中間子発見
1948     朝永、シュヴィンガー:くりこみ理論
1948   パロマー山5メートル反射望遠鏡完成(米国)
1949   宇宙のビッグバン理論の提唱(ガモフ)
1957     リー、ヤン:弱相互作用でのパリテー非保存の理論
1957   初の人工衛星 スプートニク1号(ソ連)
1964     ゲルマン、ツヴァイク:クオーク模型
1965   宇宙の3K背景輻射を発見(ペンジアス、ウイルソン)
1967   ワインバーグ、サラム:弱電統一ゲージ理論発表
1969   人類が初めて月面に立つ アポロ11号(米国)
1977   惑星探査機 ボイジャー1、2号打ち上げ(米国)
1981   最初のスペースシャトル・コロンビア打ち上げ(米国)
1987   超新星1987Aからニュートリノ検出(日本)
2012   ヒッグス粒子の発見
2015   米国の観測装置LIGO(2基のマイケルソン干渉計)で重力波を検出
2019   国際研究プロジェクト(EHT):ブラックホールシャドウを世界で初めて撮影

 

(出典 WEB 嶋作一大(東大)TMT 時代のサイエンス 銀河の形成と進化 )

 


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