なすがままに

あくせく生きるのはもう沢山、何があってもゆっくり時の流れに身をまかせ、なすがままに生きよう。

猫の話 その2

2005-05-02 18:41:03 | 昭和
僕に弟が出来た。昭和32年11月の事である。僕が9歳の時だから、9歳年下の弟の誕生だった。なぜ九つも年が離れたのかと言うと、昭和28年にも弟が生まれたのだが生後6時間で死んでしまった。僕の母は妊娠中毒がひどく、出産には向いていない体質なのだ、それでも、僕を一人っ子にだけはさせたくないとの両親の願いがかなったのが昭和32年11月の弟の誕生だった。母の年齢はその時36歳、当時ではかなりの高齢出産であった。僕は母から僕が生まれる時もかなりの難産だった事はよく聞かされていた。弟の分娩は「洋館長屋」の自宅分娩だった、その夜、僕は隣のT美の家に預けられていた。T美のお母さんや近所の奥さん達も総出で母の分娩を手伝っていた、お湯を沸かす音や、騒々しい音は深夜まで続いた、そして、元気な赤ちゃんの鳴き声が聞こえた。直ぐにT美のお母さんが僕のところに飛んできた。「Tちゃん、元気な男の子が生まれたよ、あんたはお兄ちゃんになったとよ」と涙ぐみながら僕に言った。僕は眠い眼をこすりながら「母ちゃんは生きとるとね?」とT美のお母さんに聞いた。そして、僕は隣の自分の家に戻って母の元気な顔と小さな赤ん坊と対面した。僕のその時の最大の関心事は弟の誕生よりも母の安否の事だった。母は大きな仕事を成し遂げた人のように満足そうな顔で布団に横たわっていた。その隣には猿みたいな弟が眠っていた。僕は嬉しかった、T美に言った「俺 兄ちゃんになったぞ」するとT美も「うちにも弟やけんね」。そしてその事件は弟が生まれて数日後に起きた。次回「猫の話 その3」に続きます。

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