なすがままに

あくせく生きるのはもう沢山、何があってもゆっくり時の流れに身をまかせ、なすがままに生きよう。

悲運のいとこ

2006-02-04 16:14:47 | 昭和
僕の嫁さんのいとこにエイちゃんという男性がいる。現在57歳、僕と同じ年である。このエイちゃんは人のよさで定評がある。彼は25歳の時、行き付けの飲み屋の女性と結婚した。やがて、娘が生まれエイちゃんは幸せな生活を送っていた。だがその幸せも長く続かなかった、エイちゃんの女房が水商売に再び勤めだしたのだ。そして、スナックに通ってくる常連客との浮気が発覚したのだった。エイちゃんの女房は昼間から3歳の娘を連れてホテルに男と入浸っていたのだ、その様子を幼子はエイちゃんに「ママがほかのおじさんと布団の上でダンスしてたよ」と告げたのだ。びっくりしたエイちゃんは同居していた母親に昼間の女房の監視を頼んだ、数日後ホテルから出てくるエイちゃんの女房を見つけ懲らしめたのだ。そして、エイちゃんはその女房と離婚したのだった。離婚後にエイちゃん名義で借りていたサラ金の借金300万の置き土産も残されていた。以来、エイちゃんは一生懸命働いて元女房の借金を返済し一人娘の成長だけを楽しみに生きてきたのだ。結婚に懲りたエイちゃんは以後独身を貫いた「女はしたたかな生き物よ、特に水商売の女はしたたか者よ」と水商売の女を忌み嫌っていた。そして、エイちゃんは寝食を忘れて働いた、そして、将来娘が結婚してもみんなで住めるような大きな家を建てた。今から15年前の事だ。
 昨夜、エイちゃんの親戚から電話があった。実はエイちゃんは昨年秋から体調を崩して入院していたのだ。病名はガンである、本人もガンを告知されて、余命があとわずかしかない事を知っていると言う、体重も35キロまで落ちている。その彼が最期は自分の家で迎えたいと希望し点滴を付けたベットごと自宅に帰ってきたという内容の電話だった。
 会って何と声を掛けたらいいのだろう、「頑張れ」とか「絶対良くなるよ」とつきなみな慰めの言葉など何の意味もない。今から3年前ガンで入院していた僕の店に勤めていたパートさんを見舞った時僕はいつになく大きな声で「頑張って」とか「必ずよくなるからね」と言い残して病室を後にした事を思い出していた。その後パートさんの葬儀の席で何と無意味な事を言ってしまったのかと僕は後悔した。そんな事を考えていると昨夜はなかなか寝付けなかった。

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