仏教に対するキリスト教の影響 から転載
仏教は初期の段階で「小乗仏教」と「大乗仏教」に分派します。
「小乗仏教」(上座部仏教)とは、大乗仏教成立以前の仏教で、現在は、セイロン、タイ、ミャンマー(旧ビルマ)、インドシナに残ります。
「大乗仏教」は、小乗仏教が 個人的解脱の教えであるのに対し、広く人間の全般的救済と 成仏の教義を説き、 一~二世紀頃に成立しました。中国、日本などに伝わった仏教は、大乗仏教です。
大乗非仏論、「大乗仏教はシャカ自身の教えではない」?
釈迦は、長い苦行の末に「悟り」を開き、一切のものは空(無我)であると説きました。人間世界の苦も、生も、死も、すべては空であり、実体のないものであると説いたのです。
そして、前世も来世も、あの世のことについて、釈迦は何も説いていません。釈迦は、無神論者で、キリスト教でいう「神」、絶対的存在者に関する思想は持っていませんでした。原始仏教では、人間から悟りを開いて如来となったという釈迦仏だけを信奉するものでした。
ところが、大乗仏教になると、釈迦の他に、「大日如来」(大ビルシャナ仏)とか「阿弥陀仏」とかいうような 実在しなかった架空の"神的存在者"が出てきます。
「大日如来」とは、「光明があまねく一切を照らす」という意味で、宇宙の実相を霊化した存在者です。ですからキリスト教の「全知全能なる神」と同一です。
また「阿弥陀仏」とは、極楽浄土に住むとされる神的存在者で、この仏を信じ、「南無阿弥陀仏」と唱えれば、どんな人でも 極楽に往生できる、というのです。
大乗仏教には、「浄土」とか「仏国土」という思想があります。
「浄土」(仏国土)は、キリスト教で言う「天国」と同じです。
「浄土」の思想は、もともと釈迦の教えにはなかったのです。
また、小乗仏教では、この世界の事物は「空」(無我)であり「無常」であるという世界観に終始していたのに対し、大乗仏教になると、「無常」の世界の奥に、さらに「常住なるもの」(変わりなく存在するもの)を捉えようとします。
すなわち大乗仏教になると、移り変わる物事の奥に、"永遠的なもの"を探ろうとするのです。