市丸の雑記帳

創価学会婦人部、市丸の個人ブログです。記事本文、コメント共に、無断転載・引用お断り。誹謗、中傷は即削除します。

心を師とする「己心の妙法が本」

2009-09-27 00:32:29 | Weblog
 『禅宗云く、是心即仏・即身是仏と。答えて云く、経に云く「心は是れ第一の怨なり。此の怨、最も悪と為す。此の怨、能く人を縛り、送つて閻羅の処に到る。汝独り地獄に焼かれて、悪業の為に養う所の、妻子兄弟等・親属も救うこと能わじ」云云。
 涅槃経に云く「願つて心の師と作つて心を師とせざれ」云云。愚癡無懺(グチムザン)の心を以て即心即仏と立つ。豈未得謂得・未証謂証の人に非ずや。(蓮盛抄 152頁)』
(読みやすいように句読点、改行を加えました)

 蓮盛抄は、建長七年 日蓮大聖人三十四歳の御作とされるものです。禅宗に対しての破折がなされています。冒頭の文は、その禅宗の誤りを、実に見事に言い表わされている部分ではないでしょうか。通解の必要もないでしょう。
 ただ、ここで気を付けなければならない事は、心を師とすることの怖さです。

 まず一言言っておきたいことは、よく言われるように、弱い心とか、移ろいやすい心を師として、ということを、私は考えていません。心を師として、宗教の域にまで高めた禅宗の精神の固さは、理解を超えるものがあります。すべての苦痛を、喜びとさえしてしまうほど、すさまじいまでに堅固な精神力を持ったものが禅宗だ、ということです。禅宗を基軸にした武士が、切腹を誇りとしたことを見ても、それはわかると思います。
 「武士道とは、死ぬことと見つけたり」といった葉隠れの精神も、禅宗が基本にあった、と言えるのかもしれません。

 閑話休題
 最近ネットに現れた、仏教の鬼っ子思想に「己心の妙法が本」というのがあります。よく読んでいくと、禅宗を基本にするほどの精神力があって言っているようにも見えず、さりとて、本来の仏法の深い思想から発されているとも思えません。
 年老いたはぐれ仏教徒の、単なる思いつき、と言ったら言い過ぎでしょうか。その程度の内容としか思えないぐらいのものです。

 しかし、自己顕示欲が異常に強かったり、自らの置かれた位置に満足できなかったり、中途半端に仏法がわかったように思いたい方々にとっては、実に心地いい響きを持つのかもしれません。
 これこそが仏法である、とごく一部の人たちが、その教義で、市民権を得ようと必死です。

 そもそも日蓮大聖人は、何のために御本尊を顕されたのでしょうか。それを考えると、小難しい理屈など必要なくなるはずなのです。
 『顕仏未来記』という御書があります。その中に,正法時代、像法時代の衆生の方が機根が勝れているのに、なぜ広宣流布はその二つの時をはずして、末法を選んだのか、との問いかけがあります。
 衆生の機根が勝れていれば、宗教は力がなくてもいいが、末法のように善根のない衆生は、本当に力のある宗教によってしか救われないから、大聖人は末法に出現して、すべての人が、平等に修行して、平等に成仏できるように、御本尊を現わされた、というのです。
 
 確かに、一切衆生は、その生命に仏界も持っています。その仏界を以って「己心の妙法」と言えるでしょう。しかしそれは、生命全体の三千分の一にすぎないのです。
 三千分の一。
 そんな当てにできないものを本としたら、どんな人生を送ることになってしまうのでしょうか。自らの、全く当てにできない仏界を本とした時に、どこかで御本尊をないがしろにし、禅宗と同じような、心を師とした生き方になってしまうのではないでしょうか。

 「己心の妙法が本」という教義が、正しい、と思っていらっしゃる方がいたら、ちょっとご自分の一日の生命の動きにを冷静に見つめてみてください。
 「私が正しいのです」とおっしゃるその御老人の基底は、ご本人は菩薩だ、と思っているようですが、まさに勝他の念にかられた修羅です。シンパさん達は、それよりも当然低い境涯を基底にしているので、その御老人の修羅さえも、立派に見えてしまうのでしょう。

 そして、その方たちの文面から感じることは、自らの置かれた立場の危うさに、全く気が付いていない怖さです。

 仏法は厳しいものです。
 どんなに取り繕ったとしても、自らを誤魔化すことはできません。
 たとえ誤魔化せたとしても、同生天・同名天の監視から逃れることはできません。

 そういえば、この御老人は、こんな事も言っていましたね。
 「法華経の兵法を用いるのではなく、法華経を兵法として用いるのだ。(趣意)」

 「心の師」となる事を言っている仏法に対して、「心を師」として人生を送る方にとっては、ぴったりの教義なのかもしれない、とふと思ってしまいました。

 でも、幸せになりたい、と思っているのだったら、絶対に「自らの心を師」とするような生き方だけは、避けて行きたいものですね。