木村 和美 Architect

建築家木村和美の日常活動とプロジェクトについてのブログ

●巨大建築とユニットの発想

2012-03-28 22:30:00 | Weblog

 

今週は久しぶりに時間が出来たので、建築会館の図書室で調べ物をした。

海外雑誌の最近のニュースを追ってみるが、特別目に留まるようなプロジェクトはなかった。

 

日本の日経アーキテクチャーの記事を見ると、ほとんどが震災の復興記録や関連記事だが、その中に東京のビッグプロジェクトを集めて紹介した記事があった。

アジアに遅れをとる日本の建設事情と言いながら、見てみると東京のビッグプロジェクトもかなりの数がある。

虎ノ門に建設中のマッカーサー道路を内部化した超高層建築として話題の環二・新橋、虎ノ門再開発事業ビル(写真左)、東京都の再開発事業だが、特定事業者は森ビルである。

東京でははじめての道路の上に建設される超高層で、高さはミッドタウンタワーを抜いて都内で2番目になるという。

 

もう一つは、渋谷駅前の東急文化会館跡地に建設中の”渋谷ヒカリエ”(写真右)34階建てだが、商業施設や劇場、オフィスを含んで、それぞれ縦に積層、分節化した表現を持つ超高層ビルである。

延べ床面積が約15万㎡で、これは新宿高島屋とほぼ同じ面積で巨大な建物である。この4月26日にオープンと聞いた。

いささか気になって、帰りに渋谷に行き駅前のバスターミナルの前に立って建物を見てみた。

渋谷駅前の歩道アーケードからはこのビル全体を見ることは出来ないほど大きく、 以前は広く感じた前のバスターミナルを含むオープンスペースが今日はそれほど広く感じない。

周囲の建物とは比較にならないほど大きな規模で、都市のスカイラインとしては、周りと全く調和が取れていない。

分節化して圧迫感を少なくしたというファサードも、覆いかぶさってくるような感覚で、直感的にこれだけの規模で交通問題は起こらないのだろうかと心配になる。

 

金融のグローバリゼーションを受け、投資が巨大化し、土地さえあれば誰でも巨大建築が可能な時代となった。

もともと都市計画などあってないような日本の大都市、とりわけ東京では資本の増殖作用で、周りの環境とは関係なく超高層建築が処かまわず林立する。

果たしてこれは東京という大都市にとって好ましい状況なのだろうか?

 

以前チーム・テンのアルド・バン・アイクという建築家が語った”都市は大きな住宅で、住宅は小さな都市である”という言葉。

有名な部分と全体は等価であるという例の哲学を披瀝し、巨大化する都市に警告を行なった。

そして日本の高度成長期、メタボリズム・グループは単なる巨大化に対抗してユニット化、あるいは単位を設定し、それが集積して大きくなる場合は、内部に秩序が発生し全体も制御可能なことを、いくつかのプロジェクトで試みていた。

私も当時黒川さんの事務所で教えられ経験したこともある。

 

今の私は、残念ながら現在進行しつつある多くの巨大建築の設計にタッチできる機会はまずない。

しかしあの頃と同じように、小さくても都市の単位、あるいはユニットとなりうるような建築の設計を心がけたいと、眼前に覆いかぶさる渋谷ヒカリエの圧倒的なガラスの塊を見ながら思ったものだった。

 

 


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