今日は中目黒に用事があり、終わってすぐ近くの目黒区役所へ又足を向けてみた。
庁舎は元千代田生命の本社ビルで村野藤吾75歳の時の傑作である。
区役所として改装されてからは、そのアルキャストの外観をグレーに塗られてがっかりし、いつも駅に近い裏口や駐車場から入ることが多かったが、今日は正面玄関から入ってみた。
入り口の繊細なアルミ庇の車寄せからアプローチするとさすがに緊張する。
入口のロビー空間は真っ白な大理石に覆われた広いスペースがそのまま残っている。(写真)
昔のようにイタリーの抽象彫刻は置かれていなかったが、独特の村野調のモザイクタイルを使ったトップライトや、柱の面を取り柔らかく見せた縦長の八角形の水の中から立ち上がる柱、そこから見える中庭の風景もそのままである。
以前は巧みなデザインや材料の使い方のうまさに感嘆するばかりであったが、今日は、配置計画や空間、中庭と池そして高低差を生かしたアプローチ計画などを改めて見て感じることが多かった。
文芸春秋の6月号で”名匠が遺した宿”の記事で村野藤吾設計の旅館・ホテルが掲載されている。
名作と言われた京都都ホテルの和風館”佳水園”や箱根プリンスホテルそして最晩年の伊豆三養荘などである。
村野さんはもっとも脂の乗り切るだろう50才代を戦争で設計活動を中止せざるを得なかった。
本格的に活動を再開するのは65才以降である。
その重要な時期を彼は読書によって気を紛らわさざるを得なかったと言う。
村野さんのおそらく最後であろう作品展示会を随分前横浜で見ることが出来た。
そこには90歳を超えた村野さんとともに、彼の読書したいくつかの本が展示してあり、そのほとんどに細かい字で書き込みがビッシリしてあるのに驚いた記憶がある。
世に傑作と言われ、感動を与える建築を造るような人はやはり多くの経験と勉強を人知れずしているのだなと改めて思う。
一言コメントもつもりが長くなりました。お許しを。
おっしゃるとおり一般の建築雑誌と違う空気感で切り取られていると思います。
実感では私の村野建築に感じるものとは違うところを切り取っていると思いました。
吉村さんも私の好きな建築家ですが、吉村さんの写真は違和感を感じませんでした。
ポイントは照明の当て方にあると思います。
以前ニューヨークとローマを同時に訪れたとき、ローマは照明効果によって様々な表情を作るのに驚きました。モダンなものはそれほど変わりません。
その違いでしょうか?