昨日は母の注射の日で 朝そろそろ出かけようとしていたら NHKあさイチへ
女優の 香川京子さんが出演しております。
病院の予約時間を気にしつつ おだやかに語る 香川さんを見ておりました。
女優 香川京子さん 現在82歳とのことで 彼女の若い頃の映画しか知らない
私は 美しい銀幕スターだった彼女が 年月を重ねた顔を しみじみ見ました。
特に彼女のファンではありませんでしたが ただ 小津安二郎監督の 『東京物語』
に出演した香川さんは はっきり覚えております。
日本映画を代表する秀作 東京物語は デジタルリマスター版で美しい映像に蘇り
今なお 多くの人を引き付ける名作であって 小津監督の代表作でもあります。
この映画が作られて60年以上が経ち 主だった出演者は ほとんどが故人となりました。
都会へ出た兄や姉は それぞれ都会で家庭を持ち 忙しい毎日を送っておりますが
香川さんの役は末娘で独身 まだ尾道で両親と暮らしており 地元小学校で教鞭を
取っております。
都会の子ども達を訪ねた両親が 尾道へ帰ってきて 母親が急死し 兄弟全員が
葬儀に駆けつけますが お葬式が終わったらまたすぐ 東京へとんぼ返りする有様で
残された父親を気遣う者はおらず 更に 形見分けを催促する始末です。
しかしこの映画のヒロイン 戦死した次男の未亡人 原節子が残り 父親の話し相手
になり数日を過ごし また東京へ帰って行きます。
その義姉が乗った列車を 高台にある小学校の教室から 授業中に見送る香川さんが
とても印象に残っており そのシーンで 東京物語は幕となります。
60年前の 美しい尾道の風景や 尾道水道がふんだんに映画には使われ これがまた
なんともいえず 美しいラストシーンを見せました。
香川さんは この映画が撮られたときは20代前半で 主要出演者の中では 1番の若手
となりました。
あ ほとんどが故人 と書きましたが主演の 原節子さんの訃報はまだ聞いておらず
もう 相当のお歳でしょうが ご存命と思われます。
香川さんは華やかなスターでしたが 堅実に 一般サラリーマンと結婚後 普通の主婦と
して子育てや家事をこなしていたらしく 自分の時間が持てた今 また再び 女優としての
場所に帰ってきて いくつかの作品に すでに出ております。
若い女優時代の彼女は 小津作品や黒沢作品に多く起用され それらの作品の主要メンバー
が鬼籍に入った今 稀代の名監督を語る 生き証人でもあります。
主のおらぬ実家に 白のシャクナゲが咲き 青空に映えておりました。
これを見ながら 香川さんの 無理をしない生き方を 少し考えたことでした。