新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

ウフツィ美術館の聖母比べ上 「自分の妻」のリッピ、「いやいや」のシモーネ、「長すぎる右手」のレオナルド。

2018-10-20 | フィレンツェ・ウフツィ美術館
 前回まで連載したボッティチェリ絵画の大半はウフィツィ美術館に展示されている作品だ。そのウフィツィ美術館にはルネサンス時代を中心とした膨大な作品群がある。そこで、ボッティチェリ以外の主な作品を見て行こう。今回は数多い聖母を描いた作品。

 フィリッポ・リッピ「聖母子と二天使」

 ウフツィ美術館でも人気の高い作品の1つ。清楚な聖母像。その横顔はうっとりするほどの美しさと共に親しみをも感じさせる。

 それまでの聖母像は、崇高な存在として描かれてきたのだが、リッピは遠く近寄りがたいという聖母像の観念を覆してしまった。

 なぜなら、この聖母像のモデルは、修道院から連れ出して自らの子を産ませた修道女ルクレチア。幼子キリストのモデルは二人の子供であるフィリピーノという、実生活の人物を聖母子として描き出した絵画なのだ。リッピさん、やりますねえ!
 それ以降、聖母像は美人画の対象ともなって行き、彼の弟子だったボッティチェリによってその流れが確立していったのだろうと思われる。

 シモーネ・マルティーニ「受胎告知」

 これほど大げさに体をひねった聖母像は見たことがない。まるで、イヤイヤをしているようだ。

 でも実ははにかみながらも喜びを含ませているようだ。

 アップしてみると、大天使ガブリエルと聖母マリアとの間にラテン語の文字が書かれている。

「おめでとう恵まれし方 主があなたと共におられる」
 
 主の子供を身ごもったことを伝える言葉だ。

 通常聖母は純潔を示すユリを持っているのだが、ここでは大天使がオリーブの枝を持っている。実は、ユリはフィレンツェの紋章だ。そして作者はフィレンツェのライバルだったシエナ派の代表格であるシモーネ。
 ライバルの紋章を描くのを嫌ってオリーブにしたとされている。こんなところにも政治的な対立が反映していたということのようだ。

 レオナルド・ダ・ヴィンチ「受胎告知」

 ご存知レオナルドの傑作。彼の描く聖母はかなり若々しい。

 まるで少女のような顔立ちだが、その一方でなんと貫禄十分なのだろうか。妊娠の告知にも動揺など全く見られない。シモーネの聖母とは実に対照的だ。

 また、大天使ガブリエルの翼の何と立派なことか!

 背景の風景など「モナリザ」の背景に通じる空気遠近法を見ることが出来る。

 何もかも堂々とした絵画。でもどうして聖母の右手はこんなにも長いのだろうか?


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ボッティチェリとフィレンツ... | トップ | ウフツィ美術館の聖母比べ下... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

フィレンツェ・ウフツィ美術館」カテゴリの最新記事