あじさい寺としても知られる明月院は、2500株ものアジサイが植生されており、これからのシーズンにはしっとりとした美しさが展開される。
その境内に走る階段は、いかにも古寺を思わせる風情たっぷりの造りだ。
一段一段は長年のうちにすり減り、それだけに歴史を重ねた重みを感じさせる重厚感に満ちている。
しかし、それだけに踏みしめるたびに、鎌倉というかつては一国の幕府が存在した過去を再認識させるような趣さえ、足元から伝わってくる思いだ。
それでも、前方から明るく光が降り注ぐと、温かな気持ちが湧き出してくるのを感じる階段だった。
私が初めて訪れたのは、秋の季節だった。脇道には紅葉がきらりと光を反射してまぶしい。
本殿の、丸くくりぬかれた窓「悟りの窓」からは、奥の庭園の紅葉が、円に縁どられたようにして眺められた。心にしみる情景だった。