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細菌性髄膜炎の腰椎穿刺前CTで穿刺後合併症を予期できるか

2018-10-15 | 臓器別感染症:中枢神経系・頭頚部
論文名: Cranial Computed Tomography, Lumbar Puncture, and Clinical Deterioration in Bacterial Meningitis: A Nationwide Cohort Study
雑誌: Clinical Infectious Diseases 2018;67(6):920–6
著者名:Joost M. Costerus et al.
要旨
目的
髄膜炎での腰椎穿刺前のCT検査でどれだけ腰椎穿刺後の合併症が予期できるかの検討

方法
2006年に細菌性髄膜炎の予後に関する患者側・細菌側遺伝学的因子同定のためprospective cohort studyを開始(MeninGene)

対象者
16才を超える細菌性髄膜炎患者
the database of the Netherlands Reference Laboratory for Bacterial Meningitis (NRLBM)に 1 March 2006 から 31 November 2014までの間に登録されている
細菌性髄膜炎として合致する身体所見があったものの、髄液培養/PCR陰性の場合は髄液所見のうち(髄液糖 <1.9 mmol/L, 髄液/血液糖比 <0.23, 髄液蛋白 >2.20 g/L, 髄液中白血球 >2000 cells/μL)のいずれかがあれば含めた
除外: 脳神経外科手術患者・脳神経デバイスが入っている患者・1ヶ月以内に脳外傷を負った患者

手法
診療録から腰椎穿刺後8時間以内に脳ヘルニアを発症した可能性のある患者を同定
初診時GCS≧8かつ腰椎穿刺後8時間以内に意識状態の悪化(an acute decline in consciousness or cardiorespiratory function)があったものをスクリーニングに含めた
GCS<8で入院後7日以内に死亡した場合も含めた
診療録・退院時書類・剖検記録から腰椎穿刺と状態悪化の関連性を推測
除外
腰椎穿刺後48時間を超えて臨床的改善を認めた後の死亡
臨床的・死亡後検査で脳ヘルニア以外の死因だった場合
腰椎穿刺前に臨床的に脳死だった場合
髄液が脳室内ドレーンや剖検時に採取された場合

細菌性髄膜炎で良好な経過を辿った患者で同様の背景を持つ患者をcontrolとして対にした
対象患者に行ったCT検査を二人の神経科医・二人の神経放射線科医が腰椎穿刺の禁忌が無いか確認
腰椎穿刺後のCTを二人の神経科医が確認し、画像が無ければレポートを解析に使用

結果
Mar. 2006-Nov. 2014までの533例の細菌性髄膜炎が含まれ、58人がGCS≧8で受診して腰椎穿刺後8時間以内に状態が悪化し7日以内に死亡
42人がGCS<8で受診し7日以内に死亡
53人を除外し、残りの47人を解析
平均年齢 63才 (IQR 49-68)
男性45%
15人が免疫不全患者(DM 7, 免疫抑制剤使用 5, 悪性腫瘍 5)
10人が視神経乳頭浮腫を評価し2人が陽性
平均GCS 9 (6-11)
19人が髄液初圧を評価し400mm水柱を超えていたのは15人
髄液培養では77%で肺炎球菌を検出
43/47で腰椎穿刺前にCTを施行 (ガイドラインでCTを推奨されている患者に限ると35/38; GCS score

まとめ
細菌性髄膜炎で腰椎穿刺後の脳ヘルニアは稀(0.1%程度)
腰椎穿刺後状態が悪化したうちの半数でCTで脳ヘルニアを指摘された ↔︎腰椎穿刺のせいか、細菌性髄膜炎自体が原因なのかは不明
腰椎穿刺後の脳ヘルニアについて調べた最初の全国的前向き調査であり、高リスク患者であっても比較的安全である事が示された
頭部CTではしばしば頭蓋内圧亢進の所見が見落とされる↔︎脳偏倚の無い頭蓋内圧亢進(圧の勾配が無い)が腰椎穿刺の禁忌であることを示す証拠はない
ガイドラインにはどのような異常所見があれば腰椎穿刺を見合せるれば良いのかの記載がない
細菌性髄膜炎の際、頭蓋内圧を利用して髄液ドレーンを外部から留置しドレナージする方法を提唱する者もいる←カナダの研究では通常の治療よりも予後が良かった
limitations
細菌性髄膜炎の患者しか含んでおらず、腰椎穿刺後細菌性髄膜炎が否定された患者のデータがない
多くの患者で髄液培養が陽性となっていることからselection biasが疑われる
脳ヘルニアの臨床徴候が前向きに記録されていない



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