感染症内科への道標

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PSSA菌血症に対するペニシリンG/アンピシリン vs セファゾリン

2020-09-03 | 抗菌薬・関連薬剤

論文名:Comparison of penicillins (penicillin G and ampicillin) and cefazolin as a definitive therapy against penicillin-susceptible Staphylococcus aureus (PSSA) bacteremia in Japan: a retrospective cohort study

雑誌:J Infect Chemother. 2020 Apr;26(4):358-362. 

著者名:Yuki Moriyama et al.

 

目的
セファゾリンは、日本ではオキサシリンやナフシリンが承認されていないため、ペニシリン感受性黄色ブドウ球菌(PSSA)菌血症の治療薬として第一選択薬とされてきた。2019年2月以降、日本では異物混入の問題があるため、セファゾリンの供給が滞っている。根治治療として使用できるセファゾリンの代替品を探すため、PSSA菌血症に対するペニシリン系抗菌薬(ペニシリンG、アンピシリン)の有用性を評価した。

方法
2012年1月から2017年9月までの間に、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)菌血症患者を対象としたレトロスペクティブコホート研究を実施した。MSSAは、Clinical and Laboratory Standards Instituteのガイドラインに従って判定した。PSSAは、ゾーンエッジテストやblaZ PCRを実施せずに、ペニシリンGのMIC≦0.03 mg/Lと定義した。

結果
登録されたMSSA菌血症患者280例のうち、138例(49.3%)がPSSAだった。組み入れ基準を満たした44人の患者のうち、11人にペニシリン系抗菌薬(ペニシリンG:n=3、アンピシリン:n=8)が投与され、33人にセファゾリンが投与された。両群の患者の人口統計学的特徴は類似していたが、ペニシリン投与群はセファゾリン投与群に比べてCharlsonスコアの中央値[四分位の範囲]が有意に低かった(0[0-1] vs 1[0-4],p=0.033)。有害事象および菌血症の再発に関しては両群で有意差はなかった。ペニシリン投与群では死亡例はなかったが、セファゾリン群では5例(15.2%)が30日内に死亡した。

結論
ペニシリン系抗菌薬は、安定した状態のPSSA菌血症に対する根治治療薬として有用であり、セファゾリンに代わる薬剤として使用することができる。

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