感染症内科への道標

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血液培養検査ガイドライン 

2010-02-12 | 微生物:診断・検査法
松本哲哉 満田年宏 訳

医歯薬出版株式会社より出版、2000円。 
Cumulative Techniques and Procedures in Clinical Microbiology:Cumitech
米国微生物学会出版部の刊行する技術書であり、米国臨床検査標準協会(CLSI)の発行しているような検査精度管理のための標準ではない。全42冊でその内の一冊。

血液培養の実施
・検体血液量を2ml→20mlに増すと、培養陽性率は30-50%増加
・血液量20mlでは10mlと比較し30%検出率を向上。(20ml→好気、嫌気に10mlずつ)
・血液量30mlでは10mlと比較し47%検出率を向上。 
・血液量40mlの血液培養での検出率の更なる増加は、30mlの場合と比較して増加はわずか7%。
・80例の菌血症患者において1回の培養あたり20mlの血液を使用し、経時的に得られた結果を報告。初回血液培養では80%の症例を検出し、2回の培養検査で88%の症例を検出。3回の血液培養では99%を検出。他の報告では、1培養20mlを用い、163例の症例において65%は1回目の血液培養で、2回の血液培養により80%、3回の血液培養により96%、4回の血液培養により残りが検出された。→1回の血液培養しか実施されなかった場合、相当数の菌血症が見逃される可能性がある。

・不明熱:2~3回の血液培養検査を実施、1回は最初の採決の直後に最初とは別な部位から血液を採取する。24~48時間の培養の結果が陰性だった場合は、さらにもう2回、1回は最初の採血の直後に最初とは別な部位から血液を採取する。 
・急性の原発性菌血症あるいは真菌血症、髄膜炎、骨髄炎、または肺炎の疑い:2-3回の血液培養検査を実施、血液培養の必要性にせまる臨床的状況が発生した場合、1回は最初の採血の直後に最初とは別な部位から血液を採取する。 
・抗菌療法の迅速な開始が必要とされる緊急の状況では、血液培養は同時または短い期間で採取しなければならない。患者が比較的安定していてそれほど緊急でない状況ではⅠ-2時間間隔をおいて採血を実施することが望ましい。

血液培養用の検体採取
・皮膚消毒:70%イソプロピルアルコールによる消毒に引き続き、1-2%ヨードチンキまたはヨードフォアの使用が一般的である。ヨードフォアは消毒薬としての効果を最大限に引き出すために1.5-2分の接触時間を必要とするが、ヨードチンキ(アルコールの入ったヨウ素)は使用後30秒でその効果を引き出す。グルコン酸クロルヘキシジン群ではポピヨンヨード溶液群より汚染率が低い。
・動脈血の血液培養は、静脈血の血液培養より診断上の検出率と関係しない。
・血管内留置カテーテルから採取された血液による血液培養の場合、適切に準備した皮膚の穿刺部位から得られた血液より2倍も汚染菌が検出される。→結果の判定をより正確にするために静脈穿刺による別の血液培養検体の採取が必要となる。 
・滅菌注射針とシリンジを用いて血液を採取後、培養ボトルに血液を接種する前に針を交換する2針法が以前は一般的であったが、現在は職業上の針刺し、切創のリスクを低下させるために許容される。

血液培養ボトルの輸送と最初の処理
・可及的速やかに、できれば2時間以内にインキュベータに入れる必要がある。2時間以上培養開始が遅れると、陽性結果を得るのに時間がかかる。
・培養のための血液は、決して冷蔵あるいは冷却してはならない。
・血液培養ボトルは、落下や衝突のから保護するため、特定の容器に収納して運ぶ必要がある。直に手で運ぶことは、危険なので行ってはならない。
・最近の持続モニタリングシステムを使用している細菌検査室であれば、通常は長期間の培養は必要ではない。 

血管内留置カテーテルへの菌定着による敗血症の検査室診断 
1. 血管内留置カテーテルを留置している患者が、原発部位不明の敗血症性ショックを発症した場合、あるいはカテーテル挿入部位の化膿巣や蜂カ織炎のような感染の局所的徴候がみられる時、カテーテルを抜去し、カテーテル先端の半定量的培養法(Maki法)または定量培養(Cleri法または超音波処理法)を実施し、さらに末梢からの血液培養を少なくとも2セット追加しなれければならない。 
2. カテーテル感染が疑われる患者が臨床的に安定した状態にある場合、他の感染巣を否定するために、例えば抗菌薬投与前にカテーテルを抜去するといった方法を試みなればならない。 
3. 定量的血液培養が利用可能な場合、血液検体はカテーテルと末梢静脈からそれぞれ採取し、菌数を比較することができる。カテーテルから採取した血液と、末梢血との菌数の比が4を超えている場合は、カテーテル感染が示唆される。 
4. 液体培地を基本とする自動血液培養システムを使用している場合、陽性と判断されるまでの培養時間がカテーテルから採取された血液と末梢血との間に2時間以上の開きがあった場合、カテーテル感染と確認できる。 
5. サイトスピンのグラム染色またはアクリジンオレンジ染色やカテーテル管腔内ブラシの使用などの補完的な方法も有望と思われる。しかし、この方法を勧める前に、それについての経験が必要とされる。
6. 血管内留置カテーテルの場合は、好気培養だけを行うべきである。 

検査室への搬送と検査室における取扱と移動 
・採取した血液は、2時間以内に、検査室に輸送されインキュベータに入れる必要がある。 
・培養のための血液は、決して冷蔵あるいは冷却してはならない。

精度管理 
検査室専用のパラメーターによる汚染率、部門ごと、採血者の職種毎(たとえば看護師と検査技師)、あるいはカテーテルからと末梢血管からの採血とを分けて検査を行う
→毎月、標準を超えている施設には適宜報告する。

各部門で採取される血液量、もし問題が発見されれば各採血者のモニターを必要とする。→毎年、決められた回数を実施する。 

一回のみの血液培養→最初は毎月、問題がなければチェックの頻度を減らす。
多すぎる血液培養→適宜(全体で80ml以上の採取が意味がない) 

血液培養陽性の割合→毎月、部門ごとや患者の種類に応じて 
1000患者・日あたりの血液培養数:毎年 臨床的基準による陽性率は8.2%で、検査室基準では平均7.7%の陽性率であった。陽性率が5%に低下したり、15%以上に上昇した場合、調査を開始する必要がある。 

塗マツと培養結果の相関→毎年・検査技師毎に調査 
陽性が検出されてから担当者への連絡までに要した時間→毎年一定期間・もし医師からのクレームがあればさらに長期間実施する。

検体からの直接感受性検査と、純培養した菌をもちいた感受性結果との比較→常時 
事務処理のミス、請求、払い戻し:定期的(例えば3カ月毎)

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