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妊娠中のマクロライド投与による児への有害事象

2020-09-11 | 抗菌薬・関連薬剤

論文名:Associations between macrolide antibiotics prescribing during pregnancy and adverse child outcomes in the UK: population based cohort study

雑誌名:the bmj | BMJ 2020;368:m331

著者: Heng Fan et al

抄録

目的:妊娠中のマクロライド処方と主要な奇形、脳性麻痺、てんかん、注意欠陥多動症障害、小児の自閉症スペクトラム障害の関連性を評価する。

デザイン:母集団ベースのコホート研究。

設定:英国臨床実践研究データリンク。

参加者:この研究コホートには、1990年から2016年までの期間で、妊娠4週目から出産までに、母親がマクロライド単剤(エリスロマイシン、クラリスロマイシンまたはアジスロマイシン)またはペニシリン単剤を処方された104605人の子供が対象としている。2つの陰性対照コホート試験では、受胎前に母体にマクロライドまたはペニシリンを処方された82314人の子どもたちと、研究コホート対象者の子どもの兄弟姉妹53735人で構成されている。

主なアウトカム:マクロライドまたはペニシリンを第一期(妊娠4-13週まで)、第2~3期(妊娠14週から出産まで)、または任意の妊娠期間で処方された後の、主な奇形とシステム特有の奇形(神経系、心血管系リスク、消化管、性器、尿路)のリスクについて、さらに、脳性麻痺、てんかん、注意欠陥多動性障害、自閉症スペクトラム障害のリスクをアウトカムとした。

結果:妊娠中に母親がマクロライドを処方されていた8632人中186人(1000人あたり21.55人)、ペニシリンを処方されていた95973人中1666人(1000人当たり17.36人)に主な奇形が記録されていた。第一期の妊娠期間中に投与されたマクロライドはペニシリンに比べて奇形のリスクが高い(1000人当たり27.65対17.65、調整済みリスク比1.55, 95%信頼区間1.19~2.03)、特に心血管系奇形(10.60v 6.61 per 1000、調整済みリスク比1.62、95%信頼区間1.05〜2.51)のリスクが高い。 マクロライドの処方はどの妊娠時期でも性器奇形(特に尿道下裂)のリスクが増加する(1,000 人当たり4.75 v 3.07、調整済みリスク比 1.58、95%信頼区間1.14~2.19)。妊娠初期のエリスロマイシン投与は、主な奇形のリスク増加と関連している(1000人当たり27.39 vs.17.65、1.50、1.13~1.99)。他のシステムの奇形や神経発達障害については有意な関連性が認められなかった。

結論:マクロライドはペニシリンと比較して、妊娠第1期に処方すると奇形のリスクの増加、特に心血管系の奇形のリスク増加と関連している。どの妊娠時期でもぺニシリンと比較してマクロライドは性器奇形のリスク増加と関連があることがわかった。これらの所見より、妊娠期間中のマクロライドの使用には注意が必要であり、可能であれば代替の抗菌薬を処方すべきである。

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