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『PARTNERS IN CRIME』 by Rupert Holmes

2008-03-30 23:36:43 | 音楽:懐かしの洋楽
 私がRupert Holmesの存在を知ったのは、八神純子さんの本『54日間のアメリカ人』です。その後「恋のマジックトリック」という八神さんの歌の作曲もされ、昭和55('80)年の世界歌謡祭には「Morning Man」という楽曲で出場されました。

 この『PARTNERS IN CRIME』は昭和54('79)年のアルバムです。これは高校の同級生から「Him」を聴かせてもらって好きになりました。
 それまで聴いてきたポップスやハードなロックとは明らかに異なる、ギターやドラムスの演奏法に驚きました。ニューヨーク派のフュージョンといった趣です。

 そしてHolmesといえば、詞の題材が興味深いです。このアルバムでは「昼休み」の慌しさを歌った「Lunch Hour」、「留守番電話」でのすれ違いを扱った「Answering Machine」などのストレートなタイトルの楽曲群に、思わずニヤッとしてしまいます。もちろん英語詞でのお約束である「韻律」を守りながら、テーマを切っていく鋭い視点に感心するばかりです。美しいバラード「Nearsighted」は、そのタイトル通りに「近視」がテーマです。こんなテーマまでもが美しいバラードになってしまうというのは驚きです。さすがにミュージカルの楽曲を手がけるだけあって、題材を歌としてまとめる才能に溢れています。アルバム・ジャケットの写真でメガネを手にしているのは、この楽曲のイメージなのでしょう。

 では、収録曲です。

●Escape (The Piña Colada Song)
 見事に全米1位に輝いた楽曲です。結婚生活の倦怠期に入った男が、新聞の個人広告に惹かれてある女性と文通し、日常から「脱出」しようといざ密会してみたらその相手は奥さんだった。男は個人広告の内容から奥さんの素晴らしさを再認識する‥‥という内容を、爽やかな演奏で聴かせます。
 ドラムスのパターン、ギターの自由なカッティングに、演奏力のあるミュージシャンのプレイが楽しめます。ミドルのホワイトノイズが風のような波のような音色で、非日常を夢見る主人公のロマンティックな夢想を想起させてくれます。私のlife-time favoriteの1曲です。

●Partners In Crime
 危険な関係の男女2組の歌。スリリングな曲調ですが、アルバムの中では退屈な印象の楽曲です。

●Nearsighted
 近視だけれど、人や物を見かけだけで判断することもないし、ぼやけていた方が世の中がステキに見えるかもしれない。見ていたいのはあなただけ‥‥という内容がドラマティックに歌われています。
 ストリングスとホルンが歌を劇的に盛り上げます。ちょっとシンバルがうるさいかも‥‥。

●Lunch Hour
 奔放なドラムスがカッコいい! 慌しい昼休みに彼女と密会している男の悲喜劇? 不思議なメロディが慌しさを感じさせます。いかにもミュージカル的なアプローチだと思います。

●Drop It
 ユルいレゲエのリズムに乗って、面倒なことは投げ捨ててしまいましょう。

 アナログLPではここまでがA面でした。

●Him
 このアルバムを代表するもう1曲。全米6位。三角関係を、見えざる男(Him)が残したタバコのパッケージから膨らました詞作に感心します。
 ミドルのスキャットが、Holmesらしいです。
 曲の内容とは反対に、静かに鳴っているアコギのストロークが爽やかです。

●Answering Machine
 「留守番電話」が既に生活必需品だった、アメリカ人らしい発想の歌ですネ。プロポーズを留守電に録音するのですが、肝心なところで時間切れになってしまうというマヌケさが歌になってしまうなんて!
サビ前の
「I'm so sorry you have just reached my answering machine
 I'm not in at present, I'm sure you know this whole routine
 Leave your name and number, and I'll try to get back to you
 You have 30 seconds to talk to me before you're through」
の留守番電話のセリフの歌詞に、非常に感心しました。シンセを留守電の始まりと終わりの「ピー」音に使う発想が素晴らしいです。

●The People That You Never Get To Love
 恋に臆病なニューヨークの人々の点描。当時はアメリカに対する憧れとともに聴いていました。

●Get Outta Yourself
 ユルいシャッフルが、心地いい佳曲です。shrink(精神分析医)が日本以上に一般的なニューヨークならではの題材です。

●In You I Trust
 世の中の何も信じられないけれど、あなただけは信じられる‥‥という内容で、ちょっと手垢のついた題材ですが、世の中の様々なものとして「ガソリンの値段」「タイム誌」「トーマス・ジェファーソン」「ドル紙幣」が採り上げられているところが面白いです。
 曲調、演奏ともにあまり凝られていないのが残念です。

 現在はCDは輸入盤のみが入手可能です。

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