電気通信大学の早川正士教授らによる地震予知研究が、最近注目されています。その概要は、「地震の直前には電離層が乱れ、電磁波の伝搬異常が起こる」というものです。
しかしながら、彼らの論説は、全く信用に値しません。今回は、2008年の観測結果についての、彼らの主張を批判します。
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以下の図は、彼らが2008年に福島と母子里の間で観測した電磁波の振幅です。上のグラフがゆらぎ、下のグラフが平均値を示していると言います。

「地震の前には、ゆらぎが増大し平均振幅が下がる」と主張し、この年に実際に発生した地震がプロットされています。しかし、この図もひどいモノであり、悪質でさえあります。
(1)発生したはずの地震が隠されている
まず、4月29日に発生したはずの青森県東方沖の地震(M5.7、最大震度4)が、なぜか記載されていません。東方沖といっても震央は陸地に近く、福島と母子里を結ぶ直線のほぼ真下なので、前兆があれば観測できているはずなのに、です。
つまり、前兆と言えるような異常を観測できなかった地震を、意図的に隠しているのです。
(2)前兆は1週間前に出るという主張と矛盾
彼らの主張を信じれば、地震の前に電離層が乱れるはずです。なのに、3月24日は、どうみても当日以降に異常傾向が出ています。
4月16日の秋田地震や、7月23日の岩手地震にいたっては、そもそも彼らが主張するような特徴的な前兆自体が、どう贔屓目にみても読み取れません。
(3)異常傾向があるのに、地震が発生していない
それに、8月上旬や8月末にも、ゆらぎが大きく振幅が小さいという傾向が、極めてハッキリと読み取れます。ですが、この後には大きな地震は起きていません。彼らは、こうした不都合な観測データについては何も言及せず、意図的に無視しています。
(4)阪神淡路や東日本大震災のときとデータが違う
そして、最も許せないのは、これと同種のデータを2008年以外の期間については、全く提示していない点です。もっと言えば、この2008年のデータ、阪神淡路大震災の直前のデータ、そして東日本大震災の直前のデータが、全て違うのです。
要するに、幾つかある観測データのなかから、地震と関連づけられそうなデータを、地震が起きたあとに作為的に(あるいは無意識に?)選んでいるに過ぎないと考えられます。
■
こうして多種多様なデータを、様々な観測地点でとり、異常発生は地震の1週間前でも当日以降でも全てOKとするなら、そりゃあ前兆に見えるものもあるでしょう。彼らの主張は、統計学的にみて説得力がなく、非科学的であると言わざるを得ません。そのうえ、前兆がなかったのに発生してしまった地震を意図的に隠蔽しているのだとすれば、かなりの問題だと思います。
しかしながら、彼らの論説は、全く信用に値しません。今回は、2008年の観測結果についての、彼らの主張を批判します。
※ 阪神淡路大震災や東日本大震災の前にも予兆を捉えていたという彼の主張については、以下の批判をご参照ください。
早川正士氏らの地震予知研究を批判します(1)
早川正士氏らの地震予知研究を批判します(2)
※ 彼らの予測の的中率が実際に低い点については、例えば以下の記事をご参照ください。
「地震解析ラボ」地震予知の的中率はわずか3%
早川正士氏らの地震予知研究を批判します(1)
早川正士氏らの地震予知研究を批判します(2)
※ 彼らの予測の的中率が実際に低い点については、例えば以下の記事をご参照ください。
「地震解析ラボ」地震予知の的中率はわずか3%
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以下の図は、彼らが2008年に福島と母子里の間で観測した電磁波の振幅です。上のグラフがゆらぎ、下のグラフが平均値を示していると言います。

「地震の前には、ゆらぎが増大し平均振幅が下がる」と主張し、この年に実際に発生した地震がプロットされています。しかし、この図もひどいモノであり、悪質でさえあります。
(1)発生したはずの地震が隠されている
まず、4月29日に発生したはずの青森県東方沖の地震(M5.7、最大震度4)が、なぜか記載されていません。東方沖といっても震央は陸地に近く、福島と母子里を結ぶ直線のほぼ真下なので、前兆があれば観測できているはずなのに、です。
つまり、前兆と言えるような異常を観測できなかった地震を、意図的に隠しているのです。
(2)前兆は1週間前に出るという主張と矛盾
彼らの主張を信じれば、地震の前に電離層が乱れるはずです。なのに、3月24日は、どうみても当日以降に異常傾向が出ています。
4月16日の秋田地震や、7月23日の岩手地震にいたっては、そもそも彼らが主張するような特徴的な前兆自体が、どう贔屓目にみても読み取れません。
(3)異常傾向があるのに、地震が発生していない
それに、8月上旬や8月末にも、ゆらぎが大きく振幅が小さいという傾向が、極めてハッキリと読み取れます。ですが、この後には大きな地震は起きていません。彼らは、こうした不都合な観測データについては何も言及せず、意図的に無視しています。
(4)阪神淡路や東日本大震災のときとデータが違う
そして、最も許せないのは、これと同種のデータを2008年以外の期間については、全く提示していない点です。もっと言えば、この2008年のデータ、阪神淡路大震災の直前のデータ、そして東日本大震災の直前のデータが、全て違うのです。
要するに、幾つかある観測データのなかから、地震と関連づけられそうなデータを、地震が起きたあとに作為的に(あるいは無意識に?)選んでいるに過ぎないと考えられます。
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こうして多種多様なデータを、様々な観測地点でとり、異常発生は地震の1週間前でも当日以降でも全てOKとするなら、そりゃあ前兆に見えるものもあるでしょう。彼らの主張は、統計学的にみて説得力がなく、非科学的であると言わざるを得ません。そのうえ、前兆がなかったのに発生してしまった地震を意図的に隠蔽しているのだとすれば、かなりの問題だと思います。
コメント誠にありがとうございます。
これだけ明らかな瑕疵や隠蔽があって、なおかつ実際の地震予測がデタラメ以上の有意さを何ら発揮していない事実に接しながら、なお「中立」などと言われる方があとを絶たないわけで、いささか閉口してしまう感もありますが、なお一層、我々のような批判活動の必要性を痛感します。
早川教授や地震解析ラボやハザードラボは、給与やサービス料や広告料を得て活動しているわけですから、地震予測の根拠や成果を明確に示す義務があります。そこに瑕疵や隠蔽やごまかしがあってはならず、それは批判の対象となるわけです。
おっしゃるとおり、他人の批判は簡単ですが、その代わり我々は批判活動によって何らの報酬も利益も得ていません。その点、ご了承ください。
ははやすぎです。
早川さん自身が反省して
自己批判されてますから。
「研究段階での批判」は早すぎるとのご見解ですが、早川氏のような「稚拙な成果しかないのに過剰な的中率を謳って有料サービスを展開する行為」は早すぎないのでしょうか・・・?
本サイトでは、「研究段階で予測精度が上がらない」ことを批判しているのではなく、「研究段階で予測精度が上がらないのに過剰な精度を謳って有料サービスを展開している」ことを批判しているのです。
勝てます勝てます!?
>Unknown様
コメント誠にありがとうございます。
規模予測も全くはずれているのに、ひとつそれっぽい予測を出していたからといって、「この地震予測は信頼できる」と簡単に錯覚してしまう、その非客観的な態度を改めることが、まず大切だとおもいます。
>じゃああなた方も予測してどちらが精度が高いかで勝てます勝てます!?
勘違いしないで頂きたいのですが、我々は「我々の予測のほうが精度が高い」と主張しているのではありません。「できもしない地震予測を『できている』と主張してお金を取る」という態度を批判しているのです。
このようなサービスに対してお金を払うかどうかは、
各人が判断すればよいこと。
予測が当たるかどうかはHPの情報を見れば事前にわかるし、
実際にサービスの提供を受けてみて価値が無いと判断した人は、
会員登録をやめるでしょう。
それでもお金を払い続けている方々がいるのは、
全てでは無いが予測があたるときもあるし、
それに価値を見出しているからでは?
サービスを提供される側がそれで満足しているのであれば、
何ら問題は無いでしょう。
あなたが横から批判すべきことではないと思いますが。
>このようなサービスに対してお金を払うかどうかは、各人が判断すればよいこと
そうは思いません。たとえば「実際には宣伝文句どおりの効果がない商品」を消費者庁が取り締まっていますが、そのような取り締まりは必要ないのですか?
そもそも、「できもしない地震予測を『できている』と主張してお金を取る」のは、詐欺行為じゃないのでしょうか?
また、「できもしない地震予測を『できている』と主張する」という行為は、後続の無駄な研究を発生させるなど、科学の発展を阻害します。地震予測研究をしてみて、うまくいかないのなら、正直に「うまくいかなかった」と発表するべきです。そうすることで、何が良くで何が良くないのかが共有され、科学が前に進むのです。
有料サービスの展開はある種活動資金を募っているようなものではないでしょうか。
上ですでに書いている方もいらっしゃいますが、予報が外れることもあるというのを理解したうえで登録する人もいると思いますし、科学技術の進歩に期待してお金を払う人もいるのではないでしょうか。
価値がないと判断したら辞めれば良いのです。
>そうは思いません。たとえば「実際には宣伝文句どおりの効果がない商品」を消費者庁が取り締まっていますが、そのような取り締まりは必要ないのですか?
>そもそも、「できもしない地震予測を『できている』と主張してお金を取る」のは、詐欺行為じゃないのでしょうか?
詐欺には問われませんよ。
結果の正確性を販売しているのではなく、当たり外れは別にして科学的見地に基づいた予測行為に対してユーザーが対価を支払っているからです。
逆に早川さんが何の科学的観測も行わずに、さも科学的観測を行った風に装って適当な予想結果を垂れ流しているなら詐欺となります。
ユーザーが科学的検知からの地震予測を期待しているにも関わらず、それを行っていないからですね。
また、1日に30回ぐらい「数撃ちゃ当たる」的な適当な予知を発表してるような団体なら詐欺だとは思いますが…
※私は有料会員登録?をしてないのでどれぐらいの頻度で予測が発表されるのか知りません。
全く当たらない占いや競馬予想に詐欺罪が適用されないのも似たような理由(予知、予想行為に対しての支払い)だとお考えいただければ。
極端な屁理屈ですが、出来るor出来たことに対してしかお金を請求できないのであれば、お医者さんが治せない病気や怪我に対する治療行為もお金が取れないことになってしまいます。
そもそも今の天気予報だって予報が外れることも珍しくありませんし…。
記事内のリンクに『「地震解析ラボ」地震予知の的中率はわずか3%」』というものがありますが、私のような一般人からすれば3%でもすごいと思いますよ。
これが進化して5%になり、7%になり、10%になり…徐々に進化していくはずです。
まぁ、スマホアプリで日々災害に対する備えを意識出来るという意味では、完全に無駄なサービスとも言えないのではないでしょうか。
科学技術に疎い一般人の私としては次の日食や月食が予想出来るのと同じ精度で、次の天気や地震の予報ができればいいなーと思ってます。
批判した方がハズレています。
コメント有難うございます。
>私は有料会員登録?をしてないのでどれぐらいの頻度で予測が発表されるのか知りません。
それではぜひ、以下の記事もご参照ください。
「地震解析ラボ、126件の地震予測のうち、震度5弱以上の地震発生は2件のみ」
http://blog.goo.ne.jp/geophysics_lab/e/769947f136e4213a97a893881671af87
>私のような一般人からすれば3%でもすごいと思いますよ。
「早川氏がどれくらいの広さに、どのくらいの期間の余裕をもって、どれくらいの頻度で予測を出しているか」、「日本ではどれくらいの頻度で地震が起こっているのか」、この2つをぜひ考えてみることをお勧めします。
ご指摘ありがとうございます。もしかして、「関東から南に際限なく設定された予測領域に、M5程度」との予測に対し、小笠原にM8が起きたのが、的中なのでしょうか・・・?
また、彼らがどれくらいの頻度で、地震が起きそうな地域に予測を連発しているかも、考えあわせてみることをお勧めします。昨年実績では、早川氏らは1年間で126件もの予測を出しています(うち的中は2件)。
http://blog.goo.ne.jp/geophysics_lab/e/769947f136e4213a97a893881671af87
長々と書いてしまいますが、ご容赦いただければ幸いです。
hoge様
私も文系ですが、あなたの意見に疑問を感じます。どうも文系云々以前に、論理的なご意見ではないような気がしまして・・・。
大変失礼な言い方で申し訳ございません。
>有料サービスの展開はある種活動資金を募っているようなものではないでしょうか。
それはそうでしょう。
そう言うスタンスも存在するとして、地震予測の手法として妥当であるかは別問題です。
また、つまるところ、早川先生にせよ村井先生にせよ、企業がスポンサーについてくれないことの表れであると思います。
わかりますか? 企業はお金にならないところ、実績を上げられないと見れば、出資しないのです。
一般のユーザーからのメルマガ料や、著作の収入というのは、個人レベルでは大きな収益ですが、研究の資金とするのは、企業の出資とは比較にならないほど微々たるものです。
その微々たる資金で、本当に地震予測の研究と観測が出来るのか、残念ながら私にはお答えできませんが。
>詐欺には問われませんよ。
>結果の正確性を販売しているのではなく、当たり外れは別にして科学的見地に基づいた予測行為に対してユーザーが対価を支払っているからです。
詐欺かどうかは何とも言えませんが、限りなく詐欺に近い誇大広告であることは明白です。
あと早川氏にせよ村井氏にせよ、メルマガをとってらっしゃる方の多くは、「科学的見地に基づいた予測行為」ではなく、「予測に対する正確性」を期待してお金を払っていることは、彼らを称賛している「信者」たちの言動を見れば明らかです。
もちろんあなたの仰るように、「科学的見地に基づいた予測行為」を期待しているユーザーもいるとは思いますが。
たがらこそ明らかにこじつけのような「見事的中!」などと言うものに何の疑問もなく鵜呑みにしているのではありませんか?
今回の小笠原の件も、M6前後という予測に対し実際の規模はM8.1。規模が1千倍もずれているのに何故的中したことになるのか私には分かりません。
お金に例えれば、1千円の買い物で済むと思っていたら、100万円使ってってしまったという感じですよ。これがちょっとの差に見えますか? 私が詐欺に近い誇大広告と考えるのはこういう点です。
>全く当たらない占いや競馬予想に詐欺罪が適用されないのも似たような理由(予知、予想行為に対しての支払い)だとお考えいただければ。
申し訳ないですが、これは酷い屁理屈ですよ。
つまりサービス提供側の責任をすべて無視して、購入者側に責任が売るとする発想じゃないですか。
あと医師の治療行為も、いい加減な治療や誤診に関しては、法的な責任を問われることもあります。
早川氏などの手法が、本当に地震予知に繋がる科学的手法であるか否か、彼らは自分たちの理論の自画自賛は声高に仰っておいでですが、第三者の客観的な質問や検証は一切無視しています。その姿勢をあなたはどう感じますか?
>『「地震解析ラボ」地震予知の的中率はわずか3%」』というものがありますが、私のような一般人からすれば3%でもすごいと思いますよ。
>これが進化して5%になり、7%になり、10%になり…徐々に進化していくはずです。
この論法は、科学理論と、実際の観測技術の検証を無視して確率論のみに固執した詭弁です。
地震予測の成果は、理論と観測技術双方の妥当性を元に、初めて確率論を俎上をするのが合理的な科学的思考のはずです。
つまり、「地震の予測が的中した」事を、その科学理論と観測理論が合理的に予測しえたかを証明する必要があります。その結果については、すでに横浜地球物理学研究所様が検証していますね。
それを無視して「○パーセントの的中率、たいしたもんだ」とする考え方は、詰まるところ占いと競馬予想のレベルです。科学ではないのです。
あなたがどう考えようと自由ですが、横浜地球物理学研究所様が、何を批判しているのか、何が問題があると考えているのかという点をきちんと理解されてはいかがでしょうか。
長々と失礼いたしました。
もし、物理法則は傾向的真理である事を否定するのなら不確定性原理に基づいている量子力学は疑似科学だと言っている事になり、それを言った人間の見識が疑われます。
それで物理の実験でも統計的データを基礎として議論をしている訳です。
ところで、研究方法を改善しながら行い、現象を予測するという事を何回も行っているうちに、その予測の的中頻度が高くなるという事はあります。
これは野球のバッターが最初は球にバットを当てる事も出来なかったとしても、研鑽を積んで徐々にヒットやホームランを出すのに似ています。
もちろん、改善したつもりが改悪してしまって調子を落とす事だったあり得ます。
でも、結果が悪ければ、何が悪くて調子が落ちたのかを考えて試行錯誤しながら研究を続けていくのが科学的な進歩の仕方ではないでしょうか?
最初の事、全然当たらなかったからだめだ。研究は全面的にやめろと言うのは、野球のビギナーが最初打てないのを見て、今後一切バットを振ること全てが無意味だと言うのと同じだと思います。
的中頻度が上がってきたのなら、技術が上がってきたのだと素直に認めるべきなのでしょうか?
又、科学の世界は民主主義的と言われているのを知っていますか?
修士の身分が教授の身分の人の研究について批判をするなら、世の中のどれほどの人が現象の予測について共通的に傾向を認めているのか勉強した方がいいと思います。
分かりやすく言えば、世間では大勢の人が地震と電磁気には関係があると認めているのです。
早い話、もっと勉強してから発言しないと恥をかくだけじゃないですか?
せめて博士くらいになってからの方がいいんじゃないですか?
コメント、誠に有難うございます。
>野球のビギナーが最初打てないのを見て、今後一切バットを振ること全てが無意味だと言うのと同じ
いえ、そのようなことは言っていません。「本当はビギナーで全然打てないのに、打率4割だと嘘をつくのは良くない」と言っているのです。
>科学の世界は民主主義的
>せめて博士くらいになってからの方がいいんじゃないですか?
そもそもこのエントリは、「肩書に騙されてデタラメな地震予測を信じてしまう方が多く、民主主義に任せているとデタラメな科学が蔓延してしまう」ということを憂慮して書いています。たしかに、肩書がないと説得力に劣るかも知れませんが、そのぶん客観的な考察を心がけますので、なにとぞご容赦ください。
あなたの論法を良しとするなら、もちろんあなたは理学修士以上の学位をお持ちという解釈でいいのかな?
ならばそれを示してどうぞ建設的な議論を
お願いします。
昨年のSTAP問題に、最初に疑問を
投げ掛けたのはどんな人たちだったか?
それが理解できないなら、恥をかくのは誰なんだろうか?