電子基準点のデータを使い、『週刊MEGA地震予測』および『nexi地震予測』という有料の地震予測サービスを行っている、東京大学名誉教授の村井俊治氏(JESEA・地震科学探査機構)という方がいます。
村井俊治氏らは、2017年の6月28日の『週刊MEGA地震予測』で、自社の電子基準点に異常が出たとして、東北から関東の太平洋側と奥羽山脈周辺に、最大警戒の「レベル5」という地震予測を発表しました。
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しかしながら、本ブログでもこれまで検証しておりますとおり、『週刊MEGA地震予測』による地震予測は、大きな地震との相関がほとんど読み取れず、地震予測能力があるようには思われません。
下の図は、2015年12月から、『週刊MEGA地震予測』が発表してきた、地震予測の推移を示したものです。黒い×印で、この期間に実際に発生した震度5強以上の地震を、プロットしてあります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/f9/3b929721ac8233c8427b43406212f063.jpg)
(※JESEAが公開した情報から推測できる範囲内のみ)
…この図から分かるように、『週刊MEGA地震予測』は、日本全国にいつも予測をくまなく出しておいて、地震が起きたときには「当たった」と言い、地震が起きなければ黙殺している、というだけに見えます。
また、予測と発生した地震との間にも、特に相関があるようにも見えません。特に、2016年4月の熊本地震は、ピンポイントで予測失敗していたことが分かります。
さらに言えば、最大警戒の「レベル5」(紫色)と予測した地域に、予測どおり大きな地震が発生した実績は、全く無いことが分かります。
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以上のことから、『週刊MEGA地震予測』が「レベル5」という地震予測を発表したとしても、普段とは異なる特段の危険を感じる必要は全くないと言って良いでしょう。
ただしもちろん、地震はデタラメ地震予測とは全く関係なく起こりますので、大きな地震は起きないと言いたいわけではありません。地震予測の有無にかかわらず、日頃からの変わらぬ警戒と準備が大切だと思います。
事はわかりますが地震は神様だけが知っていると思います。神様の上を行くのは無理です。
お体だけは大切にしてください。
勝手な質問にもお答えいただき、ありがとうございました。
「干渉測位方式」では、水平方向の相対精度が向上すると思い込んでいたので、垂直方向の誤差が水平方向に比べて極端に大きくなると考えていました。
「アレシボで受信した電波が宇宙人からの信号では?」と話題になっていたおとめ座のロス128の「Weird!」ですが、静止衛星からの信号の干渉によるものと判明したようですし、干渉は、思ったよりも奥が深いようです。
衛星測位について、御推薦戴いた本で勉強し直したいと思っています。
管理人様
御迷惑をお掛けしました。
衛星測位の手法の内,搬送波位相を用いた相対測位は,昔の日本語教科書では「干渉測位方式」という用語があてられていました.
2点で観測したデータの差分を取ることから「干渉測位」という訳語があてられたと思われます。
ご質問は「干渉計」の方式だと受信機側に正確な時計が要るのではないか,という疑問を持たれたところからのようです。VLBIなどの原理をご存じなので生じたことなのではないかと拝察します.
結論から言うと,測量用のGPS(GNSS)受信機は原子時計までは持っていません.
先のコメントでも紹介した日本測地学会のサイト「2-4-1-1-2. GPS相対測位(**)」
http://www.geod.jpn.org/web-text/part2/2-4/
の「図4」とそのキャプションをご確認いただきたいのですが,搬送波位相を用いた相対測位は,2地点で観測した衛星信号の位相差を用いる点では干渉計的な考え方ですが,2つの衛星についてさらに位相差の差を取る「二重位相差」を観測量とすることで,時計の誤差は消去されるため,原子時計ほどの時間測定精度を必要としないのです.
搬送波位相を用いる方式では,衛星と観測点の間の波の数のうち整数値分の不確定(Ambiguity)を確定する(Fixする)必要があり,時間経過によって衛星配置が変化することで情報を増やしてfixする方法をスタティック(古くは「静的干渉測位」)法と言います.
RTK(リアルタイム・キネマティック)法は,5衛星以上の情報を用いて短時間にAmbiguityを推定して,その後も連続的に観測することで変化に追随する方式ですが,古くは「動的干渉測位」とも言われたようにAmbiguity の推定の手順に違いがあるだけで,測位の方式は同じと言えます.
そのほか,ひっかかっていらっしゃると思われるポイントについて出来る範囲でコメントします.
水平精度と上下精度が2倍違うのは,直感的に申し上げるなら,測位の基準としての信号を受信できるのが,水平方向なら東西南北全周の360度全方向から来るものが使えるけれど,上下方向は水平面より上側180度分(全球の半分)からしか信号が受けられないからです.
1秒データで得た相対測位解を長時間分スタックすると誤差の法則から精度が相当向上するのではないか,という疑問ですが、そもそもRTK測位の精度が水平3㎝と言っている時点で、1秒観測データから得た測位解を多数(例えば1時間分など)集めて統計処理した結果、そのばらつきが水平方向で1シグマ3㎝に分布している、ということですから、それをさらに長時間続けてもあまり精度は向上しません。
なぜなら「正規分布する偶然誤差」だけが衛星測位解のばらつきではないので,データの数を増やせば単純にシグマが1/√Nという計算にはなりません。時間経過により、対流圏、電離層の影響によるドリフトなどがみられ、平均値や中央値がずれていきます。(というのが衛星測位に関わっている技術者・研究者の常識的感覚です.)
GNSS測位の原理についてはいろいろと文献があります.
科学的な立場での議論を進められたいのであれば、それらが参考になると思います。
最近の教科書で言いますと以下の2冊などがお勧めです.
「衛星測位入門―GNSS測位のしくみ」(西修二郎著)\2,592(税込み)
出版社: 技報堂出版 (2016/3/1)
ISBN-10: 4765518310
ISBN-13: 978-4765518314
「わかりやすいGPS測量」(小白井亮一著)\2,700(税別)
出版社: オーム社 (2010/11/27)
ISBN-10: 4274209547
ISBN-13: 978-4274209543
ご参考になれば幸いです。
御教授ありがとうございます。
実は、以前にも似た指摘をされており、その方には『進歩がないね』と呆れられていると思います。
恥かきついでに御教授願いたいことがあるのですが、よろしいでしょうか。
RTKとは、干渉計に類するものなのでしょうか?
たぶん違うと思いますが、念のため。
干渉計であれば、アンテナ間の距離は計測精度より高い精度で分かっているか、または両アンテナに非常に精密な時計が必要と思います。
RTKがアンテナ相互の距離を精度良く計測できるのであれば、各アンテナはほぼ同一平面上にあるので、水平方向に対して垂直方向の誤差はもっと大きくなるように思うのですが、2倍程度に収まるのでしょうか?
また、関係する電子基準点で干渉のデータを相互に参照する必要があると思いますが、この考えで間違っていないでしょうか?
精度がσ=6cm(垂直方向)であれば、3時間の平滑化でも高い精度が得られそうですが、どうなんでしょうか?
単純な平滑化では精度はそれほど向上しないのでしょうか?
村井氏のグラフは、3時間毎のプロットで1ヶ月(240回)間に、4cm以上の異常変動が4回発生しています。
ざっとみて、σ=2cmくらいになりますが、これは妥当なところなのでしょうか?
村井氏の電子基準点がRTKを用いているか否かで最も気になる点は、周辺の電子基準点のデータ参照を行っているのかです。
自前の電子基準点だけでRTKを行っているのでしょうか?
まあ、村井氏本人に聞くしかない内容でしょうが・・・
ちょっと興味本位で聞いてしまいましたが、出来ましたら御教授の程、お願い致します。
伊牟田様のGPS測位データの見方に関するご理解には誤解があるように思えますので、それについて指摘したいと思います。
「電子基準点は、1秒に1回の割合で測位を行うので、3時間平均なら10080回の平均値となります。」
「GPSの測位精度を3mと仮定して測位精度のシミュレーションを行った事があるのですが、10000回で1~2cmの誤差が残ります。」
まず、「GPSの測位精度3m」というのは一般的なナビ等に使われているコード(擬似距離)を使った「単独測位」の場合の精度です。
一方、例えば国土地理院が発表している毎日の座標値は、24時間のデータ(毎30秒の衛星データ)を使っていますが、測位の方法は搬送波位相を用いた「相対測位」(スタティック方式)ですので、単に24時間分の単独測位結果を平均化するのとは全く原理が違います。
このあたり、国土地理院のサイトに簡単な違いの説明があります。
http://www.gsi.go.jp/KIDS/KIDS10.html
より詳しい説明は日本測地学会のサイトにもあります。
http://www.geod.jpn.org/web-text/part2/2-4/index.html
(2-4-1-1-1. GPS単独測位(**)と2-4-1-1-2. GPS相対測位(**))
村井教授が使っている方法も、RTK(リアルタイムキネマティック)方式の相対測位(搬送波位相を用いた測位方式の一種)であると推測されます。
RTK方式では、1秒の観測データで1つの座標の組(3次元座標)が得られますが、測量等にも用いられている経験から、精度(1シグマ)で水平3㎝、上下6㎝程度のばらつきをもった値になっていると思われます。
このばらつきには、対流圏遅延の変動、電離層遅延の変動、信号電波の反射回折の影響(マルチパス)などの要因が含まれて時間的にも空間的にも定式化することが難しく、容易に除去することはできません。
したがって、衛星測位・測量を行う技術者、そのデータを利用する研究者は、このノイズを低減させるためにある程度長時間の観測データを用いて信頼できる測位解を得ることを行います。地殻変動監視を行う国土地理院が定常的に発表する測位解が24時間データに基づくのはそのためです。(例えばマルチパスの影響は24時間周期でほぼ再現します)
また、効率的に測量作業を行いたい技術者は、それだけの誤差があることを前提に短時間の観測データを使いますが、作業結果を評価し、信頼性を確保するために網平均計算などを行うのです。
RTK-GPS測位の生の結果をそのまま地面の変動と解釈することは、非常に大きな変動が実際に生じる地震時の震動などを議論する場面以外では適切ではないと思われます。
ですから、村井教授の「予測」についての科学的評価については皆さんのご意見は妥当と思いますが、測位手法についての正しいご理解の上で、さらに議論を進めていただければなお幸いです。
私もあのTVのグラフを見て愕然、これからはもうプライベート観測点の「異常」の乱発でしょう。ともかくいたる所に頻繁に異常を指摘しておいて、地震が起こった後にあれが前兆だった、この手法ですから。
地理院の電子基準点と違って、JESEAのプライベート観測点ではわれわれ外のものは確認、検証ができません。詐欺商法としてはうまい手を考えたものと、その点は感心します。
その中で興味を惹いたのが、村井氏の測位のグラフでした。
村井氏がTVで見せたグラフは、3時間平均(または4時間平均)のようですね。
電子基準点は、1秒に1回の割合で測位を行うので、3時間平均なら10080回の平均値となります。
GPSの測位精度を3mと仮定して測位精度のシミュレーションを行った事があるのですが、10000回で1~2cmの誤差が残ります。
村井氏のグラフは、それと比較的一致しているので、グラフの上下の乱れの多くは、測位精度に起因する誤差ではないかと思っています。
他にも、このブログでも度々話題になる気象や電離層に起因するノイズも、グラフを乱す要因になっているのかなと思いました。
プライベート観測点を使用するメリットは、村井氏の弁によると、長時間の平滑化で消されてしまう短期的な小さな変化を捉えるためだそうですが、これまでのノイズに加えて測位誤差でも地震予知をしようとしているだけですね。
これなら、大量に異常変動(?)が見つかるので、日本中のどこでも警戒エリアを設定するための口実が得られるので、素晴らしい進歩です・・・・・・・・・・・?
…??? 全くそんな様相はないと思いますが。
むしろ、メルマガとは違う予測を週刊ポストに発表していたというインチキさが分かり易く明るみになったと思っています。
元々、村井氏信奉者にしても、村井氏否定派にしても、『予知成功』なのか、『予知失敗』なのかが主張の中心となっているので、「予知に失敗した!」と追及している時に隠し玉を出されると、総崩れになってしまうのでしょう。
同じようなことが懸念されるのが、ロバートゲラー氏が言う『前兆は観測された事がない』との主張です。
京大の電離層の研究や、海外でのAIによる研究等、前兆を探す研究が行われており、『前兆はある!』と『前兆はない!』の水掛け論になる危険性があります。
『前兆』に関しては、あると仮定した場合にどんな条件を満たす必要があるのかを考えるべきかと思いますね。
閑話休題
村井氏とJESEAの警戒エリアですが、今回のテーマは解除の時期の決定方法です。
管理人様もお気付きの通り、JESEAの警戒エリアの解除は感覚的ですね。地震が継続的に発生している所は、警戒を継続するようです。