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横浜地球物理学研究所

地震予知・地震予測の検証など

島村英紀氏の批判に対する、村井俊治氏らJESEAの反論について

2015年09月17日 | 地震予知研究(村井俊治氏・JESEA)
 
電子基準点のデータを使い、有料メルマガ「週刊MEGA地震予測」などで地震予測サービスを行っている、東京大学名誉教授の村井俊治氏(JESEA・地震科学探査機構)という方がいます。

本ブログでは、彼らの電子基準点データの取り扱いはデタラメであり、実際に地震予測もほとんど当たっていないと説明してきました。先日、島村英紀・武蔵野学院大学特任教授も、ほぼ同じ論点で村井俊治氏らの地震予測サービスを批判しました。

当たって当たり前?「MEGA地震予測」を科学的にどう見るか
http://thepage.jp/detail/20150912-00000003-wordleaf
http://news.yahoo.co.jp/pickup/6174160


これに対し、村井俊治氏らJESEAが、ホームページで以下のような反論を発表しています。

YAHOO ニュースに取り上げられた記事について
http://www.jesea.co.jp/yahoo-news/


…この村井氏らの反論を読みますと、全く批判に対する答えになっていないことが分かります。このような反論しかできないこと自体が、村井氏らが科学的に間違った態度で研究を行っていることを如実に示しているように思えます。以下に説明します。



■ ノイズをそのまま使っているという指摘に反論できていない

村井俊治氏らはこの反論において、以下のように主張しています(下線は本ブログによる)。

 

…これは話になりません。村井氏は、「異常なデータは棄却している」と主張していますが、1週間といった短期に起こる鉛直方向の数センチもの変動は、ほとんど全てが「ノイズ」すなわち「異常なデータ」なのです。近くにビルや樹木がなくても、電離層の状態や大気中の水蒸気量等の影響で電子基準点には数センチのノイズが簡単に出るのです。こうした棄却すべきノイズを全然棄却せずに「地殻変動だ!」と偽っているという批判に対し、彼らは全く反論できていません。

村井氏が、国土地理院が公開している数字を、そのまま使って地震予測をしていることは、メルマガや雑誌の記載から明らかです。たとえば、南関東での地震予測の根拠とした「山北で4.2cm、箱根で4cm、湯河原で4.3cm、静岡の宇佐美で5cm」といった数字は、国土地理院が公開したデータそのままであり、そして、これはノイズだと国土地理院がハッキリ見解を出しているのです。詳しくは、国土地理院からの回答を踏まえた以下の記事をご覧ください。


「週刊MEGA地震予測」の内容は、全く信頼できません
http://blog.goo.ne.jp/geophysics_lab/e/98691b7b417e3670144d0d61fe544e41


以上のとおり村井氏は、近くにビルがあるような基準点しか棄却せず、そのほかの基準点については、国土地理院がノイズであると言っている異常なデータを棄却せずそのまま使っている訳です。こうした指摘に対し、村井氏は全く回答ができていません。



■ 地殻変動の基準点についての反論も的外れ

また、村井氏らJESEAが使っている座標系について、以下のように反論しています。

 

…この反論も、お粗末極まりないですね。球面上で各点が移動しているとき、球面上の動きを記述する絶対的な基準を設定するなら、球面上に設定しなければなりません。「球の中心が固定されているでしょ」という反論は、全くナンセンスです。これくらいのことは、中学生レベルの幾何でも理解できるはずです。

地球中心座標系とは、地球の中心に対して任意にX軸、Y軸、Z軸を選んで固定したときの座標値を表します。一方、地球表面ではプレートテクトニクスの影響で、プレートに乗ったあらゆる点がプレートと共に動いています。極端な話、X軸、Y軸、Z軸(をどこにとるべきかの基準)も動いていると言えるのです。ですから、やはりたとえ地球(=球)の中心を基準として固定しても、地表(=球面上)でプレートテクトニクスで動いている各点については、絶対的な基準点は設定できないことになります。私や島村先生が指摘しているのは、そういう意味です。

実際、気象庁や国土地理院が発表する地殻変動のデータや説明図では、必ずどこか任意の観測点が基準局(固定局)として設定されています。小さい字で資料の隅に書いてあることが多いので気づかないかもしませんが、今後はぜひ注意してみてください。

また、そもそもXYZ座標系を使うこと自体がおかしいと言えます。JESEAの説明図でもわかりますが、ノイズが激しく残る鉛直成分が、XYZの全てに含まれてしまうのです。XYと言うといかにも水平成分に思えるかも知れませんが、違います。ですので、銚子と館山でXの増減が逆になっていたとしても、「東西方向で逆の動き」とは言えません。この意味でも、やはりメルマガの記載は間違っているのです。

※1 ただ、動きベクトルの差分を注意深くとれば、相対的な位置の変動はわかります。この指摘は単に、「逆方向に動いている」という言い方をする時点で、地殻変動の観測についての理解が乏しいのではないかと指摘したにすぎません(少なくとも私の意図は)。ただし、上述したとおりXYZには全て鉛直方向のノイズが含まれてしまうので、いずれにしても短期的にはノイズまみれになります。

※2 島村氏の指摘のなかに「銚子と館山の間の地点に基準点があるから逆方向に動いているように見える」とありますが、これについては島村氏が不正確です。銚子と館山の間になくても、銚子と館山と比べた場合に別方向に動いたどこかの基準点を不動点にとれば、銚子と館山が逆方向に動いて見えます。



■ 特許を「自分たちが正しい」ことの根拠とする愚

また、彼らは自分たちの特許を、自分たちが正しいという根拠を補強するものとして主張しています。

 

…もうこれは、無知なのか、よほど悪質なのか分かりませんが、呆れる他ありません。実は、地震や噴火の予知方法などという特許は、他の個人や団体によっても非常に多く出願され、登録さえされています。たとえば、以下の検索サービスで検索してみてください。

特許情報プラットフォーム J-PlatPat:
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage


こうした特許が出願され、多くは登録すらされているのは、「この方法なら地震が予知できる」と審査官が認めたからではありません。ただ単に、「同様の方法が、それまでに特許出願等されていないから」に過ぎないのです。特許の審査は、ほとんど1人の審査官が行います。審査官に地震学者など、おそらく一人も居ないと思います。「地震や火山の予知方法」などという特許出願がされても、論文の査読のように、科学的な根拠を綿密に審査されるわけではないのです。

また、「国がその相関関係を認めた」などと主張していますが、実際に彼らの特許明細書をみると、電子基準点データに異常があってから地震が起きた例は、たった1例しか記載されていません。しかも、その1例も、間違っているのです。詳しくは、以下の記事をご覧ください。

地震科学探査機構(JESEA)による地震予測サービスについて
http://blog.goo.ne.jp/geophysics_lab/e/5b8a8daa27cdfa11240b6660d6ea0a5f


またそもそもこの特許の方法は、メルマガ「週刊MEGA地震予測」では使われていません。村井氏らの特許は、任意の3点でつくられる三角形の面積変動から地震予測をする、というものです。それに対し、メルマガ「週刊MEGA地震予測」では、単点の上下移動を「週間異常変動」として予測の根拠にしています。ですので、村井氏らのメルマガと、この特許は無関係であり、「週刊MEGA地震予測」が正しいという根拠には、全くなり得ないのです。


 ■

まとめますと、以上の村井俊治氏らJESEAによる反論は、全く反論にすらなっていない代物です。彼らのサービスの程度を、はからずも如実に示すものとなっています。

とにかく、最も重要な点は、村井俊治氏らJESEAが、国土地理院が「ノイズだから地殻変動を表すものとしてそのまま使うな」と警告しているデータを、そのまま使って有料の地震予測をしている点です。この点について、彼らがきちんと研究とサービスを見直し、科学的に真摯な態度に改めて頂くことを、強く希望します。


※本記事は彼らの反論を受け取り急ぎ書いたので、不正確な記述や間違いがあるかも知れません。適宜ご指摘いただけますと幸いです。それに応じて加筆等があるかも知れませんがご了承ください。また、このJESEAの反論は、メルマガ購読者に向けたもののようですが、島村氏の名誉のためにも、この反論も極めて的外れなものであることを指摘したく、ここに記事としたものです。


 

「週刊MEGA地震予測」の内容は、全く信頼できません

2015年08月14日 | 地震予知研究(村井俊治氏・JESEA)
 
8月18日後記 国土地理院に回答を頂いた内容を踏まえて、一部加筆しております(赤字部分)。


電子基準点のデータから地震予測サービスを行っている村井俊治氏らJESEA(地震科学探査機構)が、有料メルマガ「週刊MEGA地震予測」において、南関東警戒レベルを最大に引き上げたと一部でニュースになっているようです。


MEGA地震予測創設以来初 南関東警戒レベルを最大に引き上げ:
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150810-00000022-pseven-soci
(NEWS ポストセブン 8月10日)


ですが、この内容をみてみますと、科学的な検討が全く十分になされておらず、信頼できないものであることがわかります。もちろん、地震はいつどこで発生するかわかりませんので、常に備えは必要ですが、ことさらに不安にならないようご注意ください。以下に説明します。


 ■

まず村井氏は、記事中、以下のように述べています。

「6月28日~7月4日の週に「神奈川の山北で4.2cm、箱根で4cm、湯河原で4.3cm、静岡の宇佐美で5cm、伊豆諸島の三宅で5.5cm、八丈で4.4cmと、一斉異常変動が見られた。経験則として、長い静謐後に異常が見られたら、近いうちに大地震が起きる可能性が高いと考えられます」


…ご注意いただきたいことは、これら電子基準点のデータは、村井氏らが独自に観測しているものではないということです。彼らは、国土地理院が発表している「日々の座標値」を、そのまま使っているだけなのです。この「日々の座標値」は公開されており、誰でも見ることができます。その国土地理院は、こうした日々の座標値の変動はノイズにまみれており、実際の地殻を表すものとしてはそのままでは使えないことを、以下のように厳しく警告しているのです


「日々の座標値」の利用上の留意点について:
http://terras.gsi.go.jp/geo_info/information/information_20141001.html


このなかで国土地理院は、日々の座標値において、数センチ規模のノイズは、水蒸気量といった気象条件や周辺樹木など、様々な原因によって簡単に出てしまうことを、明確に説明しています。それなのに村井氏らは、何の証拠も示すことなく、「国土地理院の説明は間違っていて、自分たちの主張が正しい」と言い張り、「これらの値の変動はノイズではなく、実際の地殻変動だ」として、地震の予兆だと騒いでいるのです。


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なお、具体的に実際のデータをみると、山北、宇佐美、湯河原、八丈といった観測点で、7月1日に数センチだけ、楕円体高(垂直方向の地表の位置に相当)の値が高くなっています。この1日の値によって、この週の最高値と最低値との差が、上述した数値(山北で4.2cm、宇佐美で5cmなど)となったわけです。





このように、異常な値と言えるのは、このたった1日だけなので、これは明らかにノイズです。そうでなければ、これらの観測点で、1日だけ地殻が数センチもポコっと隆起して、次の日にはシュッと元に戻ったことになります。そんな荒唐無稽な話を、信じてはいけません。

なお、この程度のノイズによる異常値は、年がら年中、日本中のあちこちで見られるものです。とりたてて騒ぐほどのことではなりません。たとえば、以下に、同じく宇佐美の過去1年間の楕円体高を示してみます。



ご覧のように、昨年も7~8月に非常に大きく値が上下していることが分かります。あるときは+3cm近くになり、すぐに-4cmほどにまで下降しています。このように、昨年も値は大きく変動しましたが、実際に地面が動いたわけではなく、いずれも単なるノイズ変動です。もちろん、このあとに特段大きな地震が宇佐美付近で発生したわけではありません。

また、国土地理院は、近隣の観測点との比較も使ってノイズをできるだけ小さくしようとデータを補正しているので、ひとつの観測点で異常があると、連動して周辺の観測点にも同じ日にノイズが出ることがあります。近隣点で同じように値が変動しても、「一斉変動」などと驚くべきことではないのです。

こうして実データをみると、常に値が数センチも上下に変動しているのが分かると思いますが、これも単なる測位誤差です。実際に地面がうねうね上下に動いているわけではありません


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ではなぜ、これらの観測点で、7月1日にノイズが出てしまったのでしょうか。現在、国土地理院に問い合わせてもいるのですが、はっきりした理由はわからないかもしれません(なにせ、普段からみられるような、珍しくもないノイズですので)。

考えられる理由としては、この週は天気が悪かったことです。7月1日も、上述の観測点のほぼ全てで雨が降っており、厚い雨雲や水蒸気の影響で異常値が出てしまったのかもしれません。



※8月18日後記 国土地理院から、この週の電子基準点データについて質問したところ、以下のご回答を頂きました(対応頂きました担当者の方、お忙しいところ、本当に有難うございました)。一部を、以下に引用します。

(前略)お問い合わせにありました電子基準点については、アンテナ交換や保守などの人為的なオフセットが生じる原因はなく、また、座標値の変化が1日のみでもとの傾向に復帰していることから、地殻変動を表したものではなく、先にお示しした人為的なオフセット以外のいくつかの原因によるものと考えられます。(後略)

(筆者注:「先にお示ししたいくつかの原因」とは、「前線の通過や大雪といった気象の変化、上空の電離層の擾乱、周辺樹木による電波の受信障害」等とのことです)。


…このように、6月28日~7月4日の週における電子基準点のやや異常な値は、「地殻変動を表したものではない」というのが、国土地理院の見解です。これに対し、「週刊MEGA地震予測」は、何らの科学的な根拠も一切示すことなく、当該データ提供元である国土地理院の見解とは全く逆に、これらの異常が地殻変動を表したものであると主張して、南関東に対する地震予測の根拠にしているのです。このことからも、「週刊MEGA地震予測」を信じるべき理由は何もないと言えることが分かると思います。




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また村井氏は、記事のなかで以下のような面白いことも言っています。

「特に注意すべきは房総半島です。北東部にある銚子と南部にある館山で水平方向の動きが真逆になっており、そのゆがみが拡大している」


これは、ハッキリ言って間違いです。地球上の各点が動いている地殻変動において、絶対的な基準点は設定できません。どこに基準点を置くかによって、どの地点がどの向きに変位しているかは変わってしまうのです。つまり、銚子と館山が逆方向に動いているというわけではなく、銚子のほうが館山よりも東北地方太平洋沖地震の余効変動域に近いために、水平方向の移動が大きさが違うというだけなのですが、たとえば銚子と館山の間の地点に基準点を置くと、逆方向に動いているようにみえるのです。別の基準点をとると、銚子と館山は、同じ方向に動いています

こうした、ごく初歩的なことすら理解していない団体が、村井氏らのJESEAなのです。こうした団体による地殻変動の検討など、全く当てにできません。信じないのが賢明です。



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なお、彼らはこれまでにも、電子基準点の異常値を、単なるノイズであることをきちんと確認することなく、地殻変動だと主張して、国土地理院に釘を刺されています(詳しくは、こちらのエントリをご参照ください)。なのに、懲りることなく、そして自らの研究内容を真摯に反省することなく、こうしたサービスを続けているのです。

信じたくはありませんが、もし仮に、分かっていてサービスを続けているのだとしたら、彼らは相当に悪質だと言えるのではないでしょうか。ご利用を検討されている方は、よくよくご注意されたほうが良いかと思います。

村井俊治氏(JESEA)の地震予測を検証します(2015年1月~5月)

2015年07月23日 | 地震予知研究(村井俊治氏・JESEA)
 
電子基準点のデータから、有料メルマガ「週刊MEGA地震予測」などで地震予測サービスを行っている、東京大学名誉教授の村井俊治氏(JESEA・地震科学探査機構)という方がいます。

本サイトでは、そもそも彼らの電子基準点データの取り扱いはデタラメであり、実際に地震予測もほとんど当たっていないことを説明してきました。

今回は、2015年1~5月について、彼らの予測実績を検証してみましょう。

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今年1月発売の『週刊ポスト』誌において、村井俊治氏らは「異常変動全国MAP2015」なるものを発表しています。「警戒ゾーン」なるものが全国に5カ所指摘されており、これが今年1月時点での彼らの地震予測だと言えます。

  


彼らは週刊朝日誌上で、「異常変動から地震発生までは5ヶ月くらいかかる」とハッキリ言っています。ですので、この年初の地震予測発表時から、5月までに発生した地震を検証すれば、妥当な(かなり甘目の)評価ができるはずです。

今年2015年の1月から5月に、実際に発生した震度4以上の地震は、以下のとおりです(気象庁のデータベースより作成)。




村井氏らは震度5以上の地震を予測できるとしていますが、震度4でも「当てた当てた」と事後によく喧伝していますので、震度4も含めました。

それでは、これらの地震の震央を、上に示した「異常変動全国MAP2015」と重ねてみましょう。最大震度5弱以上が赤色の丸、最大震度4がオレンジ色の丸です。


  


…いかがでしょうか。率直に言って、ほとんど予測が当たっているようには見えません。なお、与那国島近海、奄美大島近海、小笠原諸島西方沖での地震については、震央が地図にさえ含まれていないので、図中のプロット位置は不正確です。

震度4以上を観測した地震が18個ありますが、そのうち「警戒ゾーン」で起きたのは4個だけ(しかも3個はゾーン境界ギリギリ)です。これだけ広い警戒ゾーンを5カ所も設定しながら、震度4以上の地震がその間を縫うように起きており、逆の意味で見事です。

また、こうしてみると、村井氏も週刊ポスト誌も「またズバリ的中」と騒いだ徳島県の地震が、数々の予測のうちたまたま当たった1つに過ぎず、数々のハズレ予測や見逃し予測が無視されていることが、よくわかります。そもそもこの「南海・東南海警戒ゾーン」は、実は昨年9月に発表した「異常変動全国MAP」からずっと継続して設定され続けていた(こちら)ものなので、統計学的に言って、これが1つだけ当たったからと言って、有意な予測能力は全く感じられません。


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以上のように、電子基準点のデータも取り扱いがデタラメである上に、地震予測も実際に全く当たっていない村井俊治氏らのサービスを、信じるべき理由は全くないと言えます。
 

村井俊治氏(JESEA)による地震予測の実態

2015年06月08日 | 地震予知研究(村井俊治氏・JESEA)
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電子基準点のデータから、有料メルマガ「週刊MEGA地震予測」などで地震予測サービスを行っている、東京大学名誉教授の村井俊治氏(JESEA・地震科学探査機構)という方がいます。週刊ポストやフジテレビをはじめとするメディアが、「震度5弱以上の地震を全て的中」などと、彼らの地震予測を紹介し続けています。

しかしながら、詳しく調べてみますと、村井俊治氏らは、単に日本中のあちこちに年がら年じゅう地震予測を出しているだけにすぎません。予測地域が異常に多く、かつ予測範囲も広く、しかも予測期間が長く、そのうえ地震が起こるまで予測期間を延長するので、当然ながら的中となる、というだけなのです。以下に説明します。

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2015年6月7日に放送された『Mr.サンデー』(フジテレビ)にて、メルマガ「週刊MEGA地震予測」の最新号(6月3日発行)の内容が公開されました。このなかで、「要警戒地域」と「要注意地域」との予測が挙げられており、以下のようなものでした。

 要警戒地域
(震度5以上の地震が発生する可能性が極めて高い)
・南海、東南海地方
・奥羽山脈周辺及び日本海側
・北信越地方(岐阜県飛騨地方含む)

 要注意地域
(震度5以上の地震が発生する可能性が高い)
・東北、関東の太平洋岸
・南関東地方
・北海道釧路、根室、十勝、浦河周辺
・南西諸島
・福島県、茨城県、千葉県内陸部
・鹿児島県、熊本県、長崎県周辺


それでは、以上の地域に該当するであろう地域を、以下に示してみます。「要警戒地域」を赤色、「要注意地域」をオレンジ色で囲みます。


 
  (※国土地理院地図より作成)


…ご覧のように、国内において地震が起きやすい地域を、ほとんど網羅しているのです!

今回のみならず、メルマガ「週刊MEGA地震予測」の内容は、いつもこのようなものです(たとえばこちら)。このような予測を毎週出しているのですから、予測が的中して当たり前です。このように広範囲に予測を出し、しかも予測期間は1ヶ月から6ヶ月もあり、期間内に地震が起きなかった場合には期間延長するのです。そのうえ、「南関東」と予測して小笠原諸島で地震が起きても、やはり「的中」と主張するわけです。

こんな予測内容で、「震度5弱以上を全て的中」などと自慢しているのですから、呆れて言葉が出てきません。デタラメを有意に超える予測能力が全く読み取れず、率直に言って、こんな地震予測のどこにお金を払う価値があるのか、理解できません。

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なお、そもそも村井俊治氏らの電子基準点データの取り扱い方はデタラメであり、単なるノイズ変動を地殻変動による異常だと勘違いしているだけだという点については、すでに以下に説明しておりますので、ご参照ください。

 村井俊治氏の地震予測を信じてはいけません(2)
 ネパール地震の前兆を捉えていたという村井俊治氏の主張は、デタラメです

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また、このような地震予測サービスを、よく調べもせずに盲目的に絶賛して紹介する週刊誌やテレビ番組のレベルは、いささか低すぎると言わざるを得ません。フジテレビの番組では、村井俊治氏の専門がGPSを使った測量であるといった説明や、日本の地面は常に毎週1~2cm動いているといった説明がありましたが、いずれも間違いです。

メディアの矜持として、視聴率や販売部数を伸ばすという目的以前に、視聴者や読者に正しい情報を伝える姿勢を見せて欲しいと願います。
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ネパール地震の前兆を捉えていたという村井俊治氏の主張は、デタラメです

2015年05月11日 | 地震予知研究(村井俊治氏・JESEA)
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電子基準点のデータから、有料メルマガ「週刊MEGA地震予測」などで地震予測サービスを行っている、東京大学名誉教授の村井俊治氏(JESEA・地震科学探査機構)という方がいます。

この村井俊治氏はtwitterで、2015年4月25日のネパールでの大地震について、以下のように発言しています。





つまり村井俊治氏は、「アジア太平洋地域の地殻変動」において、ネパール地震の前に、ラサで地殻変動が観測されており、それがネパールでの大地震の前兆だったのだと主張しています。

※なお、「アジア太平洋地域の地殻変動」は、こちらから誰でも参照できます。


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これに対して、読者の方から(Skullcrusher707様、ありがとうございました)、ラサだけではなく水原市(韓国)、ユジノサハリンスク(ロシア)、つくば(日本)、南鳥島(日本)などでも、ラサの異常と同日(3月20日)に同様な異常値が観測されており、村井氏の主張はおかしいと指摘をいただきました。

確かに、ラサだけではなく、これらの観測点ですべて、同日に10センチ規模の異常なデータの「跳び」があります。



ご指摘のとおり、このような広域に同時に観測される短期的な異常値は、まず間違いなくノイズです。少なくとも、ラサだけではなくサハリンや日本でさえも異常値がみられるので、これを「ネパール地震の前兆」だとする村井俊治氏の主張は、明らかに無理があり、到底受け入れられません。


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そこで、この異常値の具体的な原因について、国土地理院に問い合わせてみました(担当者の方、ありがとうございました)。

国土地理院からの回答によりますと、3月20日は、主要観測点である台湾の新竹市(TCMS)の観測点において、24時間のうち2時間だけしかデータが得られないという異常があったのだそうです。このデータの欠測によって、この日の新竹市の座標値に異常が生じた(高さ方向に平常値から約13センチ)とのことです。



ご存知のとおり、近隣のデータとの比較をみて各点の誤差をある程度修正したデータが公開されていますので、この観測データの不安定が、周囲の観測点における同日の値の「跳び」の原因になったとみられる、とのことです。従って、台湾から遠い南半球やハワイなどの観測点では、この3月20日の値の「跳び」は、みられません。

この例から、わずか1点の観測点で欠測があると、近隣の観測点も含めて、10センチ規模のノイズが簡単に出てしまうということが、よく分かります。こうした異常値が1日だけ出現するのは、村井俊治氏らJESEAが主張するような地殻変動ではなく、まず間違いなくノイズだと言えるのです。


※この問い合わせに対するリアクションだと思うのですが、国土地理院のサイトで、以下のような注意喚起が新たに掲載されました。比較的厳しい書き方になっており、村井俊治氏らJESEAに対する、国土地理院からの一種の警告ともとれます。

GNSS解析結果に含まれる異常値(値の飛び)に関する注意


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いずれにしても、冒頭の村井俊治氏のツィートは、いかに彼が、ノイズを全く考慮することなくデータを使うという愚を犯しているか、を如実に示しています。

また、村井俊治氏が地震予測の根拠として使っている電子基準点の異常値が、明らかにノイズなのだということも、こうした実例から良くおわかりいただけると思います。

このように、単なるノイズをみて地殻変動だと勘違いして地震予測をしている、村井俊治氏らJESEAのサービスは、実にレベルが低いと言わざるを得ず、全く信用するに値しません。ぜひ彼らには、科学的に真摯な態度で、研究を見直していただきたいと期待します。

(※実際、彼らの地震予測は単なる下手な鉄砲であって、ほとんどデタラメ程度にしか的中していないことも、これまでのエントリで説明しています。よろしければ参照ください)

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