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横浜地球物理学研究所

地震予知・地震予測の検証など

『地震前兆現象を科学する』(祥伝社新書)の内容について

2016年02月08日 | 地震予知研究(その他)
 
2015年12月に、『地震前兆現象を科学する』(祥伝社新書)という本が出版されました。著者は、織原義明氏と長尾年恭氏で、おふた方とも、地電流異常や宏観異常現象を含めた地震予知の研究で知られた先生です。

  

以下に、本書で検証されている3つの民間の地震予知研究についての内容を中心に、紹介してみたいと思います。


 ■ 民間地震予知研究についての検証について

本書では、村井俊治氏のGPSによる予測、串田嘉男氏のFM電波による予測、早川正士氏のVLF電波による予測が、以下のように検証されています(75頁~93頁)。ここで、「適中率」は予測どおりに地震が発生した割合、「予測率」は地震を事前に予測していた割合を示します。


村井俊治氏: メルマガ(2014/10/1号) 適中率11%、予測率33% 
         メルマガ(2014/12/17号) 適中率25%、予測率100%
串田嘉男氏: 適中率6%、予測率9%
早川正士氏: 適中率15%、予測率13%


…このように、一般に宣伝されているよりも低い数字が挙げられていて、地震予知を推進する著者らにしては客観的であると言って良いかも知れません。しかしながら、この検証には以下の意味で不備があり、村井氏と早川氏については、不当に甘い数字になってしまっています。

まず、村井氏のメルマガについては、予測精度が他と比べて高くなっているのが分かります。これは、公開されているメルマガのサンプル号のみを検証したものだからです。サンプルとして村井氏らが公開しているのは、予測どおりに地震が発生した号を、あとから宣伝のため選んだものですので、予測率等が高くなるのは当たり前です。これでは、意味のある検証とは到底言えません。また、串田氏や早川氏の予測に比べて、村井氏の予測は範囲も期間も非常に広いので、同じ尺度で検証したような数字で並べるのは公平さを欠きます。

串田氏については、近藤さや氏等による既存の評価(こちら)をそのまま紹介しているだけで、特に著者らが独自に検証した新しい内容はありません。

早川氏については、「早川氏らが的中と判定したもの」を「的中」として計算しています。つまり、ほとんど自己申告を信じて検証したものであり、甘い結果になっています。著者ら自身も、栃木県から愛知県を結ぶ内陸エリアの予測に対して、千葉県東方沖の地震を当てた地震としていることに違和感を覚える(92~93頁)と書いていますが、実はこれも「的中」として計算した数字なのです。もっと厳密に検証すれば、さらに低い数字が出るはずです。

そして、最大の問題は、彼らが提示するデータは実際の前兆を捉えたデータであるという前提を、鵜呑みにしてしまっている点です。著者らは、「GPSデータでとらえられる地殻変動も、FM電波やVLF電波の異常も、地震の前にみられる現象であると、筆者らは考えています」(94頁)と言っています。つまり、彼らが単に観測上のノイズを捉えているに過ぎないのではないかという点を、疑いもしていないのです。この点は、非常に物足りなさを感じざるを得ません。

しかしながら、以上のように甘い検証であっても、以上の3つの研究についてのまとめとして、「今の情報の出し方は世間に誤解を与えかねない」「疑似科学やニセ科学と言われてしまうかもしれません」(94頁)と厳しい書き方になっている点は、注目に値します。


 ■ その他、本書における違和感

ほかにも、気になる意見が散見されました。まず、地震予知は難しいとする大多数の地震学者を不当に批判するような書き方が、論理の妥当性を欠いていて、違和感を感じました。例えば、以下の記載です。

地震学者が使う観測装置の代表は地震計です。(中略)地震計は地震が発生しないと、動きません。(中略)そのため、地震学者の発言は「地震予知は極めて困難」ということになるのです。


また、彼らが地震前兆を捉えたと主張する、神津島での地電流観測の紹介にも違和感があります。58頁に、著者らが観測した地電流異常と発生地震とを時系列で並べた図があるのですが、「地電流異常後に発生した地震」が濃い実線で示されているのに対し、「地電流異常がなかったのに発生した地震」が薄いグレーの点線で表されており、意図的に目立たなくされています。上記した民間の3つの研究の情報の出し方を批判しながら、自身ではこのような図の書き方をするのは、フェアではありません。

また、東北地方太平洋沖地震(2011/3/11)の前に地下水位の異常が報告されていたとし、これは前兆現象である、前兆現象はたしかにあるのだ、という書き方になっていますが、これも疑問です。異常があっても地震がなかったケースや、異常がなくても起きた地震などが、精査されていません。また、昭和三陸地震の前には、井戸水のにごりが多数報告されている、としていますが、水位異常とにごりでは異なる現象ですし、またにごりが出ても地震がなかったケースの有無については同様に触れられていません。こうした偏った情報の見せ方は、著者らが最近研究しているという「RTM法」の説明についても、同様です。


 ■ 興味深かった点

一方、興味深く読ませて頂いたのは、一般の方を対象に行なったというアンケートです。詳しくは本書を読んで頂くこととしたいのですが、たとえば「動物の異常行動や、電気製品の誤作動が、地震前に起こる」と信じている人が、予想以上に多いのではないかと思わせるアンケート結果になっています。

また、上述したように、話題となっている民間の地震予測をわりと厳しく批判したうえで、「筆者らは、こうした姿勢の方々とは一線を画し」(158頁)などと毅然として言い放ち、あたかも「いま話題の出鱈目予知と筆者らの研究を一緒にしないでもらいたい」という意思表明と思われる記載があり、なかなか面白いと思いました。

著者らは「地震には前兆現象がある」と思い込んでいる(自らに思い込ませている)フシがあり、その思い込みの根拠が説得力のある形で提示されておらず、全面的に賛成できない記述も多いと言わざるを得ません。ただ、織原氏などは宏観異常現象にも手を出しながらも、いつも客観的に検証している(たとえばイルカやクジラの打ち上げと地震との相関検証など)印象がありますし、今後のご活躍に期待したいと思っています。
 

地震予知に関する特許について

2015年11月30日 | 地震予知研究(その他)

意外と思われるかも知れませんが、幾つかの団体や個人が、地震予知の方法についての特許出願を行い、そのうちの多くが審査を経て既に特許を取得しています

ためしに、特許検索サービス「J-PlatPat」で、適当なキーワードで検索してみるだけで、以下のとおり、登録された特許が幾つもヒットします。



  (J-PlatPatより作成)


たとえば、本ブログでもたびたび取り上げている村井俊治・東大名誉教授ら地震科学探査機構(JESEA)は、地殻変動の監視による地震予測法についての特許を取得しており(特許番号3763130「地震・噴火予知方法」)、「自らの地震予測方法は特許を受けた方法である」と強調して、サービスを展開しています。彼らの特許は、上のリストでは10番目のものです(※なお、この特許については、明細書に不備がある点などについて、以前の記事でもご紹介しています)。

このように特許として認められた方法ですと、多くの方が「地震の予測実績がある、信頼できる方法なのだろう」と思ってしまうのではないかと危惧しています。そこで、改めて強調したいのですが、実はこのような考えは全くの誤解です。

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一般的に言って、特許出願は、同じような内容の発明が他者によって公開されていなければ、たとえ何の役に立たなくても、特許登録されるのです(もちろん、特許明細書に意味がわからない記載がある等の不備がある場合も拒絶されますが)。

言い換えますと、特許登録されているからといって、信頼できる技術というわけでは全くなく、デタラメの理論であるかも知れないわけです。特許明細書に書かれているとおりに実際に発明が作用するかなんてことまでは、特許庁の審査官が個々に審査できないからです。また、明細書に書かれているとおりのことをやっても、絶対に地震がひとつも予測できない、と断言できなければ、審査官は地震予知方法の発明を拒絶できません。100万個の地震のうち1個でも予測できるかも知れないのであれば、審査官としては拒絶できないのです。

このように考えますと、「特許技術」とか「特許取得済み」などという宣伝文句は、商品やサービスの信頼性を全く保証しないことが、お分かり頂けるかと思います。実際、一流企業の商品などには、最近はこうした宣伝文句は使われなくなっています。こうした宣伝文句は、無名の二流企業の商品に付けられることのほうが多いのです(私などは、こうした宣伝文句があると、逆に商品の信頼性を疑ってしまいます)。


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ところで上述の村井俊治・東大名誉教授は、著書『地震は必ず予測できる!』のなかで、自らの地震予測方法の特許出願について、以下のように記述しています。


 もちろん、特許出願もあきらめずに続けていた。一回、二回、三回と意見補正をしたが、すべて拒絶が来た。その拒絶理由の一つは、…(中略)…「地球物理学で有名な学者の本に、…(中略)…隆起して次に沈降する反転現象がすでに書かれている」というものだった。我々はその理解の浅さに閉口しながらも、根気よく説得した。…(中略)…

 しかし特許庁の拒絶は続いた。先方の拒絶はもはや難癖に近いものだった。二度目など、「三角網を使った地震予測など誰でも考えられる」という横柄なものであった。…(中略)…

 …(中略)…さすがに心ない三度目の拒絶が来たときは、私は…(中略)…敗北感に満たされた。おそらく地震の専門家が審査員なのであろう。それは大いに予想できた。…(中略)…私は地震学者と張り合うつもりはまったくなかったが、このときばかりはその料簡の狭さにため息が出た


(村井俊治著『地震は必ず予測できる!』(集英社新書)35~37ページ)

      
…いかにも、「権威にイジメられてきた異端の自分の武勇談」として書かれていますが、あまりにも的外れで、ため息が出るのはこっちだと言いたくなります。

まず、審査官が地震学者であることは、ほぼあり得ません。特許庁の審査は、審査専門の特許庁審査官が、基本的に1人で行います。地震学者たちが研究の合間に行うようなものではありません。地震学者が転職して特許庁の審査官になった、という話も聞いたことがありません。そういった実情を全く無視し、いかにも「異端な自分が、無能な正統派の地震学者たちにイジメられた」とでも言いたげな文章で、こういうのを読まされると本当にうんざりします()。


※実は、上記の特許情報プラットフォームでは審査記録も参照することができますので、村井氏らによる特許出願を担当した審査官の名前もわかります。1回目と2回目の拒絶理由通知は本郷徹審査官、3回目の拒絶理由通知は高見重雄審査官です。いずれも、特許審査第1部材料分析(当時)所属のようですので、地震学者とは全く関係ない審査官です。こうした情報は、そもそも拒絶理由通知書にきちんと記載されているのですが…。なお、村井氏の記述のなかにある「地球物理学で有名な学者の本」とは、審査記録をみると、力武常次先生の「破壊防止と安全の確保 地殻歪と地震発生予測」という非破壊検査学会(当時)の論文のようです。


また、おおむね半分以上の特許出願は、少なくとも1回は拒絶理由通知を受けるのです。それに対して意見を主張して、特許として登録される、という過程を踏むのは、ごくごく普通のことです。つまり、村井氏による特許出願のように、何度か拒絶されて、それに対して意見を主張して、ようやく特許登録される、というのは、極めて普通のことに過ぎません。なのに、いかにも「権力と戦って権利を勝ち取った」という書き方になっていて、本当にイヤラしいなと思います。

いずれにしましても、上記した2名の審査官による拒絶理由通知を、「難癖に近い」とか「横柄なものであった」とか「心ない」とか「料簡が狭い」などと、著しく不適切に誹謗中傷していることは見逃せません。彼らの名誉のためにも、村井氏の著書における上述の記載が極めて的外れであることを、ここで強調しておきたいと思います。そして、村井氏らの特許出願が登録されているからと言って、彼らの地震予測が信頼できるという証拠には全くならないのだということも、繰り返しておきます。
 

「麒麟地震研究所」の地震予測について

2015年09月28日 | 地震予知研究(その他)
 
以前から地震予測を行っており、一部では有名な、「麒麟地震研究所」というところがあります。ツィッターなどで精力的に情報発信していらっしゃるようです。

正直、詳しくは存じ上げない点が多々あり誤解があるかも知れません(適宜ご指摘いただけますと幸いです)が、公開された地震予測をもとに、彼らの予測が当たっているのかを以下に検証してみましょう。


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「麒麟地震研究所」は8月25日付のツィッターで、「無料情報」として8月12日発表分の地震予測を公開しました。以下のとおりです。


   
      (8月25日付「麒麟地震研究所」のツィッターより)



「麒麟地震研究所」の地震予測をみると、予測領域におおむね2週間後に地震が起きるという予測になっているようです。また、M5程度の地震でも、「予測に対応した地震が起きた」とツィッターで報告しています。

ですので、大きく誤差をみまして、8月12日から9月25日まで(1ヶ月半ほど)に、国内で起きたM5以上の地震の震源(赤丸)を、上記の予測図と重ねてみましょう。下図のとおりとなります。


   

…いかがでしょうか。率直な感想ですが、ものの見事に予測がハズレていると言わざるを得ません。これだけの予測円を、実際に起きた地震の震源を避けるように配置できるというのは、逆の意味でかなりの精度だと思います。

7ヶ所の予測円が確認できますが、予測どおりの場所にM5以上の地震が起きたのは1件(東京湾)のみ。的中率はわずか1/7(14.3%)です。また、実際に起きた14件の地震(下表のとおり)のうち、予測できたのは1件(同じく東京湾)のみ。予知率はわずか1/14(7.1%)です。

  
   (気象庁サイトの震源データベースにより作成)

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…以上のとおり、あくまで上記の無料予測情報にのみ基づいて検証した結果ですが、「麒麟地震研究所」の地震予測は、ほとんど出鱈目を脱していないように思われます。


※この「麒麟地震研究所」については、噂はかねがね聞いているのですが、正確な予測などについて誤解している点があるかも知れません。適宜、ご指摘いただけますと幸いです。




ディミター・ウズノフ氏の地震予測は、全然当たっていません

2015年04月03日 | 地震予知研究(その他)
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地震予測を発表している、「ハザードラボ」(運営:株式会社アース・サイエンティフィック)という防災関連情報サイトがあります。

ハザードラボでは以前、早川正士氏ら「地震解析ラボ」による地震予測を発表していました。現在は、ディミター・ウズノフ氏(チャップマン大学准教授)の研究に基づく、「Sensor NeT」と呼ぶ方法での地震予測を提供しています。人工衛星からの熱源観測、電離層における電子数観測、さらに地上でのラドン観測を、複合的に組み合わせたものだそうです。

では、その予測精度や実態はどの程度なのでしょうか。検証してみましょう。


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ウズノフ氏らは、地震から1~30日前の予兆を捉えているとしています。では、今から30日ほど前の3月3日に、ハザードラボのサイト内で放送された、彼らの予測情報をみてみましょう。おおむね、黄色の予測円がM5.5~M6.0程度、白色の予測円がM5.0~M5.5程度の予測です。




(ハザードラボによる3月3日放送の地震予測番組(Sensor NeT)から引用)



…ご覧のとおり、おびただしい数の地震予測が、日本中に発表されています。巷にあふれる地震予測サービスのほとんどが、このように下手な鉄砲を数打って、そのうちの1つでも当たれば「的中した」と宣伝するという手法だと言えます。ですが、そのなかでも、ウズノフ氏らの鉄砲の数は群を抜いていると言えそうです。合計12ヶ所もの予測円があり、M6前後の予想(黄色い予測円)だけで6ヶ所もあります。

これを見るだけで、まじめに検証しようという気力が失せてきますが、気を取り直して検証してみましょう。


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それでは、この予測を発表してから30日間(3月3日~4月2日)で、実際に発生した地震と比較してみます。以下に、当該予測期間内に発生した、M5以上の地震を挙げます。該当する地震は、以下の4件だけとなります。


・2015年3月15日 00時36分ごろ 震源地:関東東方沖 M5.1 (有感なし)
・2015年3月23日 19時13分ごろ 震源地:台湾付近 M5.8 (最大震度1)
・2015年3月25日 09時34分ごろ 震源地:十勝地方南部 M5.0 (最大震度3)
・2015年3月27日 12時04分ごろ 震源地:関東東方沖 M5.3 (最大震度2)


上に示したハザードラボの地震予測図に、この4件の地震の震央(赤い点)を重ねあわせてみましょう。







…いかがでしょうか。ほとんどの予測領域において、該当する規模の地震が全く発生しなかったことがわかります。

関東東方沖の2つの地震は場所も少しハズレていますし、いずれもM5台前半ですので規模の予測もハズレています。台湾付近の地震も、震央が予測円からハズレており、規模の予測もハズレです。唯一、十勝地方南部の地震(M5.0)が、予測円にかすっているようにも見えますが、北海道付近に描かれた5つの予測円にちょうど囲まれた隙間の、色が薄くなっているあたりが震央なのです(笑)。これだけ北海道付近に地震予測を出して震央を見事に外すというのは、逆の意味ですごい手腕です。しかしまあ、かすっていると言えば言えなくもないので、オマケで的中としましょう。


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以上まとめますと、日本各地に出した12件もの地震予測に対し、予測どおりの地震があったのは1つだけ(それもオマケ判定)です。オマケで的中として差し上げた1件も、太平洋プレートの沈み込みに伴い地震が頻発するエリアにおける、何も珍しくないM5.0の地震に過ぎません。他の11件の予測は、すべてハズレです。

こうしてみますと、現在ハザードラボで提供している、ウズノフ氏らの「Sensor NeT」とやらによる地震予測は、ほぼデタラメであると言って良いでしょう。

早川氏ら地震解析ラボの地震予測に有意な能力がないと判断したのか、地震予測サービスを切り換えたハザードラボ。残念ながら、新しく採用した地震予測も、全く有意な予測能力がないようです。

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VAN法を信頼できない理由の一例

2014年11月10日 | 地震予知研究(その他)
ギリシャで研究され、地震予知の実績を上げているとされる有名な電磁気学的手法に、「VAN法」があります。地電流に異常な波形(SES=Seismic Electric Signal)が現れると、その後に地震が起こるというものです。

ですが、このVAN法についても、説得力のある実績が提示されておらず、非常に自己弁護的な宣伝や誇張が目立ち、信頼できないと言わざるを得ません。以下に、その一例を示します。

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VAN法を研究し、日本におけるVAN法のスポークスマン的な存在でもある研究者に、上田誠也氏(東大名誉教授)という方が居られます。彼自身のウェブサイトにおいて、VAN法についての講演会の内容が公開されています。


 第3回一般教養研修講演会 「地震予知への挑戦」
 (http://www.geocities.jp/semsweb/IPCCnews.html)


このなかで、上田誠也氏は、VAN法の成果について、次のように肯定的に評価しています。

地震はSES検知から数時間~1カ月に起こる、対象はM5以上、震源は大体半径100km内、Mは0.7位の誤差に入る事を基準にして、殆どみな成功しています。

…いかがでしょうか。この説明を読んだだけだと、VAN法の実績を信じてしまうかも知れません。ですが、よく調べてみますと、この実績は全く評価に値しないものであることが分かります。

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まず、「殆どみな成功しています」と上田氏は言っていますが、これは明らかに誇張です。上記したサイトにおいても、「VAN法の成果」という図が示され、成功率を示したグラフ(下図の右側)が提示されています。



これをみると、予測成功率は、M5以上の地震44件に対し22件、つまり50%でしかありません。これを「M5以上で殆どみな成功」と言ってしまうのですから、いささか誇張が過ぎると言わざるを得ません。

さて、この50%という数字は、ほんとうに有意な的中率なのでしょうか? 実はギリシャでは、M5以上の地震は、ほぼ2ヶ月に1回の割合で発生しています。上に示したグラフも、1987年から1995年までの9年間(=最大でも108ヶ月)で44件、即ちほぼ2ヶ月に1回、この規模の地震が発生していることを示しています。

その状況で、前兆検知から「数時間~1カ月」という余裕をもって、的中と判定しているのです。この基準では、デタラメな予測であっても、地震の発生を時間的に50%程度の成功率で予測できるのは、統計学的に言って当たり前なのです。

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また、「半径100km内」であれば的中であるとする基準も、ハッキリ言って滅茶苦茶です。以下に、ギリシャの地図と、半径100kmの円を示します。





このように、半径100kmの円を描くと、ギリシャ国土の大部分が入ってしまうのです。しかも、上に示した「VAN法の成果」という図の左側の地図からも分かるように、ギリシャでは国土の中央部から南部に地震が多く、北部は比較的地震が少ないといった、地域的な偏りがあります。このような条件ですので、主にギリシャ中央部の半径100kmに予測を出せば、場所的に高い確率で的中させられるのは当然です。

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もし、VAN陣営がこの程度のデータしか出せないのであれば、VAN法の実績はほとんどが虚構であると判断できることになります。それに、VAN法について精査し熟考しているはずの上田誠也氏さえも、「SES検知から数時間~1カ月に起こる、対象はM5以上、震源は大体半径100km内、Mは0.7位の誤差に入る事」という的中判定基準が、異常なほどに甘すぎるということを、発言しながら全く気付いていないようなのです。この時点で、彼らの主張に説得力が感じられないのも無理はないのです。

今回ご紹介した講演会での発言をはじめ、とにかくVAN法の実績には、説得力が無いものが多いように思われます。また機会があれば、ほかの例もご紹介したいと思います。


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