横浜地球物理学研究所

地震予知・地震予測の検証など

ディミター・ウズノフ氏の地震予測は、全然当たっていません

2015年04月03日 | 地震予知研究(その他)
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地震予測を発表している、「ハザードラボ」(運営:株式会社アース・サイエンティフィック)という防災関連情報サイトがあります。

ハザードラボでは以前、早川正士氏ら「地震解析ラボ」による地震予測を発表していました。現在は、ディミター・ウズノフ氏(チャップマン大学准教授)の研究に基づく、「Sensor NeT」と呼ぶ方法での地震予測を提供しています。人工衛星からの熱源観測、電離層における電子数観測、さらに地上でのラドン観測を、複合的に組み合わせたものだそうです。

では、その予測精度や実態はどの程度なのでしょうか。検証してみましょう。


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ウズノフ氏らは、地震から1~30日前の予兆を捉えているとしています。では、今から30日ほど前の3月3日に、ハザードラボのサイト内で放送された、彼らの予測情報をみてみましょう。おおむね、黄色の予測円がM5.5~M6.0程度、白色の予測円がM5.0~M5.5程度の予測です。




(ハザードラボによる3月3日放送の地震予測番組(Sensor NeT)から引用)



…ご覧のとおり、おびただしい数の地震予測が、日本中に発表されています。巷にあふれる地震予測サービスのほとんどが、このように下手な鉄砲を数打って、そのうちの1つでも当たれば「的中した」と宣伝するという手法だと言えます。ですが、そのなかでも、ウズノフ氏らの鉄砲の数は群を抜いていると言えそうです。合計12ヶ所もの予測円があり、M6前後の予想(黄色い予測円)だけで6ヶ所もあります。

これを見るだけで、まじめに検証しようという気力が失せてきますが、気を取り直して検証してみましょう。


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それでは、この予測を発表してから30日間(3月3日~4月2日)で、実際に発生した地震と比較してみます。以下に、当該予測期間内に発生した、M5以上の地震を挙げます。該当する地震は、以下の4件だけとなります。


・2015年3月15日 00時36分ごろ 震源地:関東東方沖 M5.1 (有感なし)
・2015年3月23日 19時13分ごろ 震源地:台湾付近 M5.8 (最大震度1)
・2015年3月25日 09時34分ごろ 震源地:十勝地方南部 M5.0 (最大震度3)
・2015年3月27日 12時04分ごろ 震源地:関東東方沖 M5.3 (最大震度2)


上に示したハザードラボの地震予測図に、この4件の地震の震央(赤い点)を重ねあわせてみましょう。







…いかがでしょうか。ほとんどの予測領域において、該当する規模の地震が全く発生しなかったことがわかります。

関東東方沖の2つの地震は場所も少しハズレていますし、いずれもM5台前半ですので規模の予測もハズレています。台湾付近の地震も、震央が予測円からハズレており、規模の予測もハズレです。唯一、十勝地方南部の地震(M5.0)が、予測円にかすっているようにも見えますが、北海道付近に描かれた5つの予測円にちょうど囲まれた隙間の、色が薄くなっているあたりが震央なのです(笑)。これだけ北海道付近に地震予測を出して震央を見事に外すというのは、逆の意味ですごい手腕です。しかしまあ、かすっていると言えば言えなくもないので、オマケで的中としましょう。


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以上まとめますと、日本各地に出した12件もの地震予測に対し、予測どおりの地震があったのは1つだけ(それもオマケ判定)です。オマケで的中として差し上げた1件も、太平洋プレートの沈み込みに伴い地震が頻発するエリアにおける、何も珍しくないM5.0の地震に過ぎません。他の11件の予測は、すべてハズレです。

こうしてみますと、現在ハザードラボで提供している、ウズノフ氏らの「Sensor NeT」とやらによる地震予測は、ほぼデタラメであると言って良いでしょう。

早川氏ら地震解析ラボの地震予測に有意な能力がないと判断したのか、地震予測サービスを切り換えたハザードラボ。残念ながら、新しく採用した地震予測も、全く有意な予測能力がないようです。

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3 コメント

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父島近海と三陸沖の予測も外れそうです。 (サンピラー)
2015-04-03 20:30:43
あさってには父島近海と三陸沖の地震予測の答え合わせができます。

父島近海の方は、Yahoo地震情報に、
2015年3月14日1時15分・北緯26.3度・東経141.9度・M5.1
というのがあって、当たりかな?と思いましたが、
気象庁のサイトで、M4.7に修正されていたので、結局はずれになりそうです。

三陸沖の方は、
2015年3月5日16時30分・北緯39.9度・東経143.4度・M4.6(のちにM4.5に修正)
という地震がありましたが、マグニチュードが全く当たっていないので、これもはずれですね。
このままでは、この地震予測もはずれです。

3月31日には、沖縄本島北西沖に地震予測の情報を出してます。
28日頃から、そのあたりで微震が数百回起きているようなので、「もしかしたらこれから何か起きるかもしれない」とあわてて情報を出したのかもしれません(笑)

「ウズノフ氏のラドン仮説」には疑問がいくつかあります。
1.「マグニチュード」と「熱源の強さ」と「熱源観測から地震発生までの時間」の相関はどうなのか?
2.東日本大震災や四川大地震の画像について、熱源発生位置と震源地が100km位ずれているように見えるが、これくらいのずれは許容範囲なのか?
3.四川大地震の6日前に観測されているらしいけど、3日前位はどうなっていたのか?
4.熱源が発生して、そのあとしばらく近傍で大きな地震が観測されなかった例はどれくらいあるのか?
5.熱源が発生しなくて、その数日後に近傍で大きな地震が観測された例はどれくらいあるのか?
6.村井氏のときと同様、ノイズの可能性はないのか?(気象レーダーには、「ブライトバンド」という一種のノイズがあることはよく知られたことです。)
7.地震直後には最も地層のひび割れが起きるので、もしウズノフ氏のラドン仮説が正しいとしたら、地震直後に最も大きな熱源が観測されるはずではないのか(実際に観測されているのか)?

4と5と7は特に知りたい疑問です。
返信する
>ハザードラボの地震予測は、全然当たっていません (ばーど)
2015-04-06 00:21:03
早川氏のハザードラボについては、村井先生ほど私は知りませんが、まぁ似たようなレベルと言うことでしょうかね。

予測図を見ていてやっぱり思うのは、日本列島をほぼ網羅した地震予測というものになっている点ですかね。しかも地震が年中起きている地域ばかり、これでは予測とは言えませんね。

あと図を厳密に見れば、長野県や群馬県あたりは範囲外ですが、信じていらっしゃる方からすると「少しずれただけで当たっている」になるんでしょうね。
サンピラー様のコメントにある疑問点ではございませんが、そう言った要素を一つ一つ検証して、「理屈倒れ」にならない理論を構築するというのは、容易なことではないのでしょうね。
ストレートな言い方すれば、理論も実績も共にないなら、信じるに足るものではないと言うことになりますが(苦笑)。

それではまた。

返信する
コメントありがとうございます (横浜地球物理学研究所)
2015-04-06 09:28:14
>サンピラー様

j実は私も2は疑問に思っていましたし、4と5は重要ですね。ほとんどすべての地震予知研究者(当たっていると言い張っているひと)に、この4と5の検討に基づき6も検討する、という姿勢が欠けているように思えます。非常に残念です。

>ばーど様

仰るとおりで、本サイトでも理論と実績の瑕疵を同時に指摘していくという姿勢を心がけてきました。ですが、なかなか准教授や名誉教授という肩書きに打ち克つのは容易なことではないようです。微力ながら細々と続けていきたいと思っています。
返信する

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