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台湾で16階建てのマンションが地震の揺れに共振して倒壊 わが国でも急がれる中高層ビルの揺れへの共振対策

2016-02-29 | 地震防災談話室
2月6日に台湾南部を襲った地震(台南地震、M6.4)で、震源に近い台南市では16階建てマンションが倒壊し住民ら110人余りが死亡した。
また、周辺で、8階建ての銀行ビルが傾くなど多数の中高層ビルに被害が出た。
16階建てマンションが倒壊したのは、設計や施工に手抜きがあったためではないかといわれていた。しかし、その後、地震計の記録から台南市内で1秒~4秒程度の周期の長い揺れ(長周期地震動)が見られたことから、東京大学地震研究所では、地震で揺れるマンションの0.8秒~1.3秒程度の固有周期(建物が1回揺れる時間で高い建物ほど長くなる)が手抜き工事などで変わったため、地震の揺れ(地震動)と合って共振して倒壊した可能性があるという。

5年前に東日本大震災が起きたとき、東京都心の新宿で都庁などの超高層ビルがゆっくり大きく揺れ続け驚いた。一方、震源から700キロ余り離れた大阪では軟らかい堆積層に建つ55階建ての大阪府咲州庁舎が約10分間にわたって大きく揺れ建物に被害が出た。咲州庁舎の場合は、庁舎の上下階と近くの地下に設置してあった地震計がいずれも周期6.5秒の揺れを観測していて、ビルの固有周期が地震動に一致し共振現象を起こしたためとわかった。

専門家によると、M7級以上の大きな地震が起きると地震断層から出る揺れの周期の長い「表面波」と呼ばれる長周期地震動(周期1秒~10秒程度)が地表面に沿って伝わり、建物の固有周期と合うと建物が共振現象を起こし何倍にも大きく揺れ出す。「表面波」は減衰しにくく軟らかい地盤では増幅することもあって、建物はいつまでも揺れ続けやがて大きな被害が出る。
地震の揺れとの共振現象は、1964年の新潟地震や83年の日本海中部地震(秋田)の際にも見られ、石油タンクのスロッシング(地震波に共振して液面が激しく揺れる)により火災が起き、一部の専門家に注目された。
しかし、1985年にメキシコ地震(M8.1)が起きたとき、首都メキシコ市内で超高層や低層のビルはあまり揺れずに無事だったのに、10数階建てなどの中高層ビル500棟以上が大きく揺れて倒壊し多くの犠牲者が出た。日本から調査に出かけた多くの専門家は、軟弱地盤や建物の耐震性に問題があったのではないかとして、揺れの周期との共振には関心がなかったという。
その後、2003年9月に十勝沖地震(M8)が起き、震源から230キロ離れた北海道・苫小牧の石油タンクがやはりスロッシングを起こし炎上。これを翌年1月にNHKがテレビ番組で取り上げたことから、建設関係者などからは「パンドラの箱を開けた」とささやかれ、広く一般にも知られるようになった。

  ●“固い地盤”でも地盤の揺れに建物が共振して思わぬ被害が
東日本大震災が起きたときに、東北大学の青葉山キャンパスで10階建て前後の研究棟などが地震で柱や壁に亀裂などが入り危険だとして、やがて撤去された。青葉山キャンパスは比較的に固い地盤で、しかも建物は専門家によって耐震補強されていたので大丈夫と思われていた。しかし、固い地盤が「周期1秒の地震の揺れ」を伝えやすく、建物の1秒の固有周期と一致して共振を起こし、建物が大きく揺れて被害が出たという。
固いしっかりした地盤は地震の揺れに強いと一般に思われているが不安になった。市役所や建築の専門家に尋ねたところ、液状化や土砂崩れなどの恐れのある地盤についてのデータはあるが、地盤がどのような周期の地震波を伝えやすいかについてのデータはないといわれた。

去年は、ビルの免震装置に使われる免震ゴムの性能データ改ざんやビルを支える杭打ちデータの流用騒ぎが起き、まだ多くの住民は不安を抱えたままだ。
国は、去年、南海トラフ巨大地震が起きたときの超高層ビル(高さ60㍍超)の長周期地震動の影響予測を初めて出したが、超高層ビルより低い10数階建て前後の中高層ビルへの共振の影響についての説明を忘れてほしくない。
東京都内のマンションだけでも140万戸を超え、4世帯に1世帯はマンションに居住している。地震の揺れ方によっての家具やテレビなどの転倒防止や固定の仕方、配置換えや避難路の確保についての専門家のアドバイスは必要だと思う。

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