9月10日~11日にかけての集中豪雨による関東・東北水害は、茨城県の鬼怒川が決壊するなど浸水被害が広がり、避難指示の遅れもあって、浸水域に取り残された多くの人がヘリコプターで救助されるなど住民にとっても虚を突かれた結果となった。
浸水した被災現場からのテレビ映像を見ていると、「何十年間もここに住んでいるがこんな経験は初めてだ」。「避難勧告や避難指示をもっと早く出せないのか」。毎回繰り返される被災住民の言葉だ。
今回は、早めに出ていた気象庁の大雨特別警報がどうして住民の避難行動につながらなかったのか。
気象庁が発表する台風や大雨に関する情報は、警報・注意報だけでも11ある。数十年に一度あるかないかの重大な被害をもたらす危険度の高い大雨や暴風、高潮などで出る特別警報は4つ。このほかに、土砂災害警戒情報、記録的短時間大雨情報、指定河川洪水予報と3つある。
危険な災害情報を正しく厳密に伝えようとする配慮が、利用する住民にかえってわかりにくくしてはいないだろうか。
これらの情報を受けての自治体(区市町村)が発表する避難準備情報や避難勧告、避難指示は遅れがちで、被害が出てから発表されることもしばしば起きている。
避難情報は、多くの自治体が防災行政無線で住民に伝えている。しかし、土砂降りの雨が降っていたりすると音がかき消され室内では聞こえないことがある。一部の自治体が実施しているエリアメールなど携帯電話やスマホの利用、消防団員による早めの呼びかけなど情報伝達方法にも工夫が必要だ。
●気象データを活用しての早めの自主避難 そのための日ごろの準備を
気象庁のホームページを開くと画面左上に、少し小さな文字で「アクセスの多いコンテンツ」と書かれていて、その下の「気象衛星30分ごと/2.5分ごと」の下線部分をクリックすると静止気象衛星8号により観測された台風や日本周辺の雲の画像を見ることができる。
その下のレーダーをクリックすると、気象レーダーによる日本列島に降った雨についての5分毎の「降水強度分布観測」が表示される。また、この画面に時間を入力すると降水ナウキャストによる「降水強度分布予測」が表示され、1時間先までの5分毎の降る雨を予想することができる。
河川の増水や氾濫情報については河川管理者に24時間体制での連絡先を聞いておくとよい。
自分が住んでいる地域で雨が降っていなくても周辺部や川の上流の雨の様子がわかり、浸水など水害の危険が迫っていることを早くに知ることができれば、自治体の避難勧告や避難指示を待たずに、浸水する前に早めの自主避難をすることができる。
大雨による水害などに備えて、低い土地での浸水、川の氾濫、がけ崩れなど自分が住んでいるところは大雨などが続くとどのような被害が出るのかを日頃から調べて避難場所を決めておくと安心だ。
ハザードマップでよくわからなかったら、自治体の防災関係者や最寄りの消防署で相談するとよい。この場合、具体的な避難路についての注意も忘れないこと。
道路が冠水すると水位がひざ上まで来ると危険で避難できなくなる。また、夜間の避難は停電などが起きると危険なので、こうした場合に備えて近隣の中層マンションや民間ビルを一時避難場所として協力を求められないかどうか地域で話し合ってみてはどうだろう。
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