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新幹線での焼身自殺で乗客が巻き添えに 逃げ場がないのは新幹線だけではない!

2015-07-06 | 地震防災談話室
先月30日、走行中の東海道新幹線の車内で男がガソリンをかぶり焼身自殺し火災になった。その巻き添えで乗客の女性1人が死亡、28人が重軽傷を負った。
このニュースを聞いたとき、60年余り前の旧国鉄時代に横浜で起きた列車火災(桜木町事件、1951年)を思い出した。
京浜東北線(当時)の赤羽発桜木町行きの電車が横浜の桜木町駅構内で垂れ下がっていた架線に触れて火災を起こした。63型と呼ばれていた車両(63系電車)は屋根や天井などに燃えやすい木材やベニヤ板、塗料が使われていたためたちまち火に包まれ1両目と2両目の乗客106人が死亡、重軽傷者92人を出す大惨事となった。
車両間の通路は今のように簡単に通り抜けることができず、ガラス窓も三段に分かれていて中段の窓が固定されていたため乗客は狭い窓から脱出することもできない。また、ドアコックの表示がなくドアを開けて逃げることもできないまま、多くの乗客が車内に閉じ込められ犠牲になった。
現場は高架になっているため、火事を知って周辺から駆けつけた人たちも燃えさかる窓から手を出して助けを求める人たちを見守るだけでどうすることもできなかった。

 ●新幹線の安全対策は大丈夫なのか
東海道新幹線は開業から50年間大きな事故もなく安全な乗物として国民に親しまれてきただけに、今回の火災事件の衝撃は大きい。
新幹線車両には、火災が起きたとき煙を車外に排出する排煙装置はない。換気装置は車内で乗客が快適に過ごせるように風を上から下に送る仕組みになっていて、発火後、暫く稼動していたためか、テレビで見た車内は煙が車内全体に漂っていた。これでは乗客は煙を吸わないように姿勢を低くしても煙を吸ってしまうことになる。窓は密閉構造で開けて換気することも、乗客が窓から逃げ出すこともできない。車内通路は逃げてくる人で乗務員は現場に駆けつけることもできず大混乱だったという。

新幹線は、快速・安全走行面への注力は認めたいが、乗客の利便性や快適性を指向するあまり、今回のような事件・事故が起きた際の乗客への安全面での対応が遅れているといわざるを得ない。
火災事件の徹底解明とともに、現在、車内に設置されている緊急通報装置や消火器などが、火災や事件・事故が起きた際に乗客を守るために具体的な対応がどこまでできるのかの検証を忘れないでほしい。

 ●“閉じ込め災害”からの脱出と情報共有
わたしたちは、ふだん何のためらいもなく、電車、バス、エレベーターを利用しているが、その時、もしも火災が起きたら…。悪い冗談というかもしれないが、正に新幹線で起きてしまった。
新幹線に煙や有毒なガスを感知して強制排気する装置がついていたら犠牲者を出さなかったのではないか。JRや私鉄各社はトンネルや地下走行中に火災が起きると最寄りの駅など安全なところまで走行して乗客を避難させることになっている。しかし、停車したまま、火が迫ってきたり津波などで浸水してくると乗客は車内から脱出して自主避難するしかない。最悪の場合、満員の車内からの脱出口は先頭の運転室など数箇所にかぎられていて大混乱は避けられない。

最近は、“一人乗務”の電車も走っており、火災や事件・事故発生時に乗務員の指示に従っての安全な避難には乗客の自発的な協力は欠かせない。そのためには、日頃からの鉄道各社と乗客との情報共有と災害発生時の迅速な情報の提供は必要だと思う。
車両によって消火器があったり、なかったり、また、緊急通報装置やドアコックがどこにあるのかわかりにくく、使い方のわからないものもある。

小田急のロマンスカーなどは全車指定席になっている。新幹線は走行距離も長く全席指定でもよいのではないか。乗務員の数も多く、検札で車内を行き来することで不審者や不審物の発見にも有効だと思う。乗客と乗務員の距離も近くなり急ぎの連絡も乗務員にしやすくなる。
車内の乗客への具体的な安全性向上にJRをはじめ鉄道各社に一考を願いたい。


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