地震、台風、火事、交通事故、…  突然にやって来る災害にどう備えるのか

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自分のいのちは自分で守ろう!

火山を抱える観光地に求められる“正しい噴火情報の共有”

2015-08-25 | 地震防災談話室
先週、神奈川県の観光地“箱根温泉”に家族で出かけた。箱根山の大涌谷で起きた小規模噴火で、大涌谷周辺1キロ圏で噴石が飛ぶような噴火が起こる可能性があるとして、「噴火警戒レベル3(入山規制)」が出ていた。また、一部で温泉が供給できなくなったといわれていたが、ゆっくり湯に浸かることはできた。
宿では、万一の噴火に備えての避難方法などの説明があるものと覚悟していたがなかった。3日間の逗留中、入山規制区域を通るロープウエーの運休などのお知らせを麓の駅で見たほかは、大涌谷噴火の現在の状況などを知らせる情報はどこにもなかった。
折から、鹿児島県桜島の噴火もあって、スマホに箱根は大丈夫かと心配するメールが入っていた。

箱根観光ルートの鉄道やバスのターミナルに、激しく水蒸気を上げる大涌谷噴火の中継カメラによる映像を流し、ジオラマの立体模型などがあると、訪れた観光客にも噴火の状況をリアルタイムに正しく理解する助けになる。
箱根町では、ことし3月に大涌谷周辺の観光客を対象とした避難誘導マニュアルを作成し、現在、噴火の拡大(噴火警戒レベル4,5)に備えて広域避難誘導計画を作成中という。秋の本格的観光シーズンを前に、観光・宿泊施設などへの周知徹底が急がれる。

 ●安全・安心に欠かせない迅速で正しい情報の伝達 
火山を抱える観光地では“地震や噴火”についてのちょっとした情報が流れるだけで宿泊のキャンセルが出るなど風評被害により地元は大変なことになる。一方、温泉や旅行を楽しみにしている観光客にとっても迷惑な話で、観光に出かける際には安全を担保する正しい情報の伝達が必要になる。

去年9月、登山者ら63人が死亡・行方不明になった御嶽山(長野県と岐阜県境)の噴火で、山麓の人たちは噴火前から地震や硫黄の臭いなどで山の異変に気づいており、これらの情報が観光案内所やエリアメールで登山者に伝わっていたら多くの犠牲者を出さずにすんだのではないかと思う。
箱根町は、噴火などの緊急時にはエリアメールなどで情報を提供することになっているというが、そのための観光客への普段の周知は必要だ。

地震や大きな噴火がいつ起きるのかについて、地震や火山の専門家にもよくわからないことが多いという。しかし、地震や噴火災害に直面したとき、噴石や火山ガス、火砕流などどのような被害が起きるのかを地域住民とともに、訪れる観光客に周知することは安全・安心に繋がると思う。


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横浜のJR架線事故 乗客が線路に降り並行の各線を急遽止め35万人に影響

2015-08-07 | 地震防災談話室
4日夜、横浜市西区のJR京浜東北線(横浜-桜木町間)で架線の切断事故が起きた。3本の電車が駅間で止まり、東海道線、横須賀線、湘南・新宿ライン、横浜線などJR各線が軒並み運転を見合わせ、大きな事故でも起きたのかと驚いた。
JR東日本横浜支社によると、この架線事故の影響で、鶴見と新子安の駅間で止まっていた電車の乗客が乗務員の制止を聞かずにドアを開けて線路を歩き出したことから、危険だとして京浜東北線と並行して走っている東海道線と横須賀線などを急遽止めた。私鉄への乗り換えにより品川駅などで混乱はしたがけが人などは出ていないという。
乗客は、停電でエアコンが止まった暑い車内に、いつ電車が走るのか知らされないまま閉じ込められた格好になった。
架線切断事故は、電力が切り替わる架線の切り替え区間にあたる「エアセクション」で電車が止まり、再出発の時にパンダグラフと架線の間でショートして架線が切れたという。
「エアセクション」で停車、再出発してこうした事故がこれまでも起きており、JR東日本では、「エアセクション」での停車は禁止されていた。

JR福知山線の脱線事故(2005年、107人死亡)をはじめ、最近の北海道で起きた列車事故などはいずれも安全の約束事が守られないために起きている。
列車事故は大きな事故につながるケースが多い。鉄道各社には、想定される事故についての事前の安全対策の徹底をお願いしたい。

 ●首都圏では都市交通の混乱がまねく都市災害への対応を
東日本大震災が起きたとき、東京とその周辺では地震の揺れによる大きな被害は少なかったものの、JRをはじめ私鉄各社が地震で安全確認のため電車を止め、その後の運転再開がまちまちであったため、ターミナル駅や周辺の幹線道路は家路を急ぐ人や車で深夜まで大混乱となった。
遠距離の通勤・通学者や観光客など乗客が多い首都圏では、電車やバスなどの公共交通機関が止まるだけで大きな混乱を引き起こす。地震や水害などの災害と重なると二次災害の恐れもある。
JRと私鉄各社には、列車の安全運行とともに、事故などによる運休時の振替輸送や災害時の一斉運転再開などで乗客の混乱を防止するための具体的な対応の検討をお願いしたい。そして、これらの情報の普段の乗客への提供を忘れないでほしい。


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被災地への迅速な救助・救援活動に欠かせない現地の被害情報 その収集に地元中学生パワーの活用を

2015-08-03 | 地震防災談話室
地震や水害などの災害が起きたときに、がけ崩れや浸水などで道路や電話が不通になり、被災者が助けを求めようとしても連絡も取れず、一方、救助・救援隊もどこでどのような被害が起きているのかわからないまま救助や救援が遅れることがしばしば起きている。

国は、こうした被災状況がつかめないまま人命救助などの対応が遅れ多くの犠牲者を出した阪神・淡路大震災(1995.1)の反省から、大災害発生時に救助・救援活動にあたる警察や消防の全国的広域支援体制を整備強化した。また、夜間でも上空から被災地の状況を撮影し伝送できる高感度赤外線暗視カメラ搭載のヘリコプターを全国の自衛隊基地に配備、さらに、災害発生とともに特定地域の被害予測や集められた被害情報を迅速に処理して被災地への救助・救援に結び付ける情報処理システムの実用化もはじまっている。
しかし、こうした試みも、被災現場で実際に救助に当たる警察や消防、自衛隊の隊員らにとっては倒壊した建物などのどこに人が閉じ込められているのかといった具体的な情報提供について住民からの協力がないと迅速な救助・救出は難しくなる。

 ●災害発生時の「地域の被害情報」は地元中学生の協力で収集へ

災害発生時に、住民の救助・救援拠点になる地方自治体にとって地域の被害状況を把握するために一番に求められるのが、住民の安否などの被害情報の収集である。
「地域の被害情報」は警察や消防、自治会などからの通報のほか、自治体職員の巡回による目視調査や住民からの救助要請、携帯メールによる住民参加型の情報連絡など様々な収集方法がとられている。しかし、被災して住居が倒壊し家族の安否確認などで混乱する中で道路や電話も不通になり連絡できなくなるとすべての住民からの網羅的な被害情報の収集には限界がある。

災害発生時の「地域の被害情報」の収集について地元の中学生たちに協力を求めてみてはどうだろう。
最近は、中学生に地域の自主防災組織への参加による災害時の救助活動などに協力を求める動きも出ている。中学生の消火活動や救助活動は危険をともないすすめられないが、危険を避けての「被害情報」の収集に限り、地元の役場などの防災情報管理システムへの簡単な携帯メール送信は可能だと思う。
中学生たちはそれぞれの居住地区ごとにグループに分かれ、安全を担保された被害情報収集マニュアルに基づいて情報の収集にあたり、GPS(全地球測位システム)による位置情報などを利用したスマホによりメール送信する。

東日本大震災の時に大津波に襲われた岩手県釜石市では、多くの大人たちが津波の犠牲になる中で、釜石東中の生徒たちは率先して避難し全員が助かり、“釜石の奇跡”といわれたが、生徒たちは日ごろの防災訓練などで津波災害の恐ろしさを理解しており自分たちの判断で行動し命を守ることができた。
最近は、学校での防災教育もさかんで、地域の安全を守るための防災活動への積極的な参加は生徒たちにとどまらず、地域住民への防災意識の啓発にも役立つと思う。

 ●救助・救援活動の迅速化に役立つ「被害情報電子地図(仮)」
防災情報管理システムに中学生たちからメール送信された被害情報は、「被害情報電子地図(仮)」に随時、描き込まれる。
「被害情報電子地図(仮)」は、近隣周辺を含む地域の道路や河川、建物、公園などの平面地図に小中学校(避難所)などの公共施設をはじめ、保育所や介護施設、病院や薬局、駅、コンビニ、郵便局などの集客スポットを描き込み、地震や風水害などにより被害が想定されるがけ崩れや浸水危険エリアなどを表示する。海岸や川、港に近い地域では、津波や液状化に備えて避難場所や地盤の標高、軟弱なども描き込む。

「被害情報電子地図(仮)」は、災害発生時に急遽、救助・救援に駆けつけてくれる警察や消防、自衛隊の隊員やボランティアの人たちに利用されるもので、地理不案内の人たちにもわかりやすいものでなければならない。
「被害情報電子地図(仮)」の作成には、中学生たちにも参加してもらい、自分たちが住む地域をあらためて歩いて、地震・津波や風水害などに襲われるとどんな危険が潜んでいるかを知って地域の防災に生かしてほしい。


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