地震、台風、火事、交通事故、…  突然にやって来る災害にどう備えるのか

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御嶽山火山噴火災害を教訓に 登山者への防災警戒情報は迅速・明快・実効性のあるものに

2014-10-11 | 地震防災談話室
長野・岐阜両県にまたがる御嶽山で起きた火山噴火災害で55人(10日現在)が亡くなり、いまなお行方のわからない登山者の、警察、消防、自衛隊による懸命の捜索が続いている。
亡くなった登山者の多くは火口に近い山頂付近で突然の水蒸気噴火で飛んできた噴石にあたって死亡したということだが被害を避ける手立てはなかったのか。

先月10日から火山性の群発地震が続いていた御嶽山では、気象庁から火山情報の推移に注意をうながす火山状況解説情報が出されていたが、警戒レベル1「平常」のままで噴火は起きた。
気象庁の噴火警戒レベルの説明文を見ると、レベル1「平常」の火山活動の状況の欄に「……。火山活動の状況によって、火口内で火山灰の噴出等が見られる(この範囲に入った場合には生命に危険が及ぶ)。」と記載されている。
多くの登山者は「平常」を、もしかして正しく理解できぬまま通常の「安全」「危険はない」と読んでしまった落とし穴があったのではないか。
警戒レベルを「平常」の1から「火口周辺規制」の2へ引き上げていてもよかったのではないかと批判する声もある。
筆者はレベル1の「平常」の文字がもし「注意」になっていたら一般の登山者も危険性を共有でき、噴火にいち早く気づき早めの避難行動に移れたのではないかと思う。

 ●減災・遭難防止に欠かせない登山届とエリアメールによる防災警戒情報提供を
長野・岐阜両県では御嶽山登山の登山計画書の提出を義務付けていないと聞くが、火山や危険性の高い山では遭難防止のために登山計画書の提出は必要だ。
登山道や避難小屋などの整備にかかわっている地元や周辺自治体、火山や気象などの専門家による一般登山者への登山口でのアドバイスは安全登山に役立つ。

登山口での登山届提出の際に、万一に備えて登山者の居場所を検索できる携帯電話やスマートフォンについて登山者への貸し出しを含めての活用を考えてほしい。
御嶽山に、登山者の携帯電話やスマホにいつでも情報を送れるエリアメールで防災警戒情報を受信できる仕組みが備えてあったら、噴火直前の火山性微動や山体のわずかな膨張の異変を間髪入れずに登山者に伝えることができたと思う。情報を聞いた登山者は噴火を警戒して、早めに避難できたのではないかと残念だ。

気象庁は、戦後最悪の御嶽山の噴火災害を教訓に、国内にある110の活火山についての常時監視体制の見直しや観測機器の増設を図り、火山活動に変化があった際の登山者への情報提供のあり方を検討するというが、登山者への情報提供は、迅速で、わかりやすく、避難などに実効性のあるものを期待する。
                                   

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紅葉見物の登山者を噴石が直撃 御嶽山の噴火前兆情報はなかったのか…

2014-10-06 | 地震防災談話室
雲一つない青空にもくもくと上った白い噴煙。山頂付近で弁当を広げ休息をとっていた登山者たちは瞬く間に噴煙に包まれ暗闇の中に閉じ込められた。逃げる間もなく飛んできた噴石に当たり次々と倒れていったという。
先月27日、長野・岐阜両県境にある御嶽山で起きた火山噴火。山頂の火口近くにいた登山者ら51人(5日現在)が飛んできた噴石の直撃を受けたり火山灰に埋まるなどして亡くなった。
まだ多くの登山者の行方がわからず捜索が続いている。

24時間監視体制におかれている御嶽山では噴火前の先月10日、11日と火山性の群発地震が起きたため、気象庁は、火山状況に関する解説情報を関係自治体などに出した。その後、地震回数は少なくなり地殻変動などに変化がないとして警戒レベルは1の「平常」に据え置いたまま、火山活動の推移に注意するように呼びかけていた。
警戒レベル3の「入山規制」に引き上げたのは噴火発生後だった。

登山には天気予報とともに山の安全情報は欠かせない。気象庁の火山解説情報はネットで配信しており、登山者はスマートフォンなどで何時でも見ることができる。
御嶽山山麓の地元の人たちは噴火前から地震や硫黄の臭いなどで山の異変に気づいており、こうした情報が警察や観光案内所などを通じて登山者に伝わっていたら、登山に細心の注意と警戒を強めることができたと思う。

 ●道半ばの火山噴火予知情報
火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長は、テレビで、火山噴火の予知の難しさ、とりわけ今回の“水蒸気噴火”の発生を予知することは難しく予知ができるレベルにないと話している。
火山噴火の直前予知の成功例として、2000年の北海道・有珠山の噴火があげられるが、噴火する前に地震が多発する有珠山の“癖”を知り尽くしていた当時の北海道大学教授の岡田弘氏が2日前に噴火を予知し、周辺住民1万人を無事避難させることができた。

御嶽山に設置の傾斜計が、噴火約7分前に山体がわずかに膨らむ変化を観測。これより前、約11分前には火山性微動が発生していたが、いずれもごく小規模な変化だったので予知につなげることができなかったという。
筆者は、予知云々はさておいて、これらの観測情報が登山者に迅速に伝わっていたら、登山者の咄嗟の避難行動につながる可能性があったのではないかと思う。
東日本大震災のとき、地震発生から約15分後に、震源域の岩手県釜石の70キロ沖の海底に敷設してあった東大地震研究所の海底地震・津波観測システムが5mの海面上昇を観測しながら、気象庁の警報を出す観測体制に組み込まれていなかった理由で沿岸住民に知らされなかったことを思い出す。このとき、ラジオやテレビでこの観測情報をニュースとして放送していたらもっと多くの人のいのちが助かったのではないかと悔やまれた。

テレビで火山噴火予知連の関係者が、御嶽山の噴火が行楽シーズンでなければ、気象庁は、噴火前に警戒レベルを2(火口周辺への立ち入り規制)に引き上げたのではないかと話していた。
噴火災害の後、現地では観光旅館の宿泊客のキャンセルが相次ぐなど風評被害が出ているということだが、災害からいのちを守る情報のあり方やわかりやすい情報の伝達・利用方法について、防災関係機関やマスコミ、情報の受け手である私たちも真摯に考え直す必要がある。

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