地震、台風、火事、交通事故、…  突然にやって来る災害にどう備えるのか

日々の暮らしの中で、経験と知恵を生かして
自分のいのちは自分で守ろう!

減災に欠かせない情報の共有

2012-07-31 | 地震防災談話室
大規模災害発生時の都心の帰宅困難者対策について、国は、徒歩帰宅者で大混乱になった去年の東日本大震災をきっかけに東京都と協議会をたちあげ、滞留者に安全が確保されるまで一斉帰宅をしないで会社や学校などにしばらく留まるよう呼びかけている。都は、こうした滞留者の一時待機に備えて、3月に条例を制定し、企業など事業者に必要な3日分の水や食料などの備蓄を求めている。また、駅などの集客施設で被災した利用者への待機や安全な場所への誘導などで事業者に協力を求めている。

都心から一時間ほどの私鉄沿線に住む筆者は、時折、新宿に所用で出かけるが、さきごろ新宿区役所を訪ね、防災担当者に地震災害を想定しての具体的な質問をしてみた。「新宿駅に到着間もなく大地震にあい被災、いのちは助かったものの大けがをし、電車が止まり帰宅できなくなった」との想定で、今、けがの手当てをどこでしてもらえるのかをたずねた。
新宿区は新宿駅西口の超高層ビル街一帯を滞留者が逃げ込める安全スペースとして考えているようだったが具体的な回答は聞けなかった。
区役所からの帰りに、JRの新宿駅で、去年の震災後にJR東日本の災害時の乗客対策がどのように変わったのか、新宿駅に集まってくる滞留者に具体的にどのように対応するのかをたずねてみたが、行政機関に聞いてくれの返事でここでも答えを聞けなかった。

外出時に、大地震にあい大けがをしても混乱の中で救急車はまず期待できない。病院や応急処置をしてもらえる医療救護所も住民でない土地勘のない通過市民にはどこにあるのかわからない。
自分のいのちは自分で守るしかないと思っているが、でも、そのための仕組みとして、集客スポットの駅や商業施設の片隅に誰でも利用できる医薬品などの緊急用品の入った防災ボックスがあると助かる。駅では医薬品を取り出し乗客同士で簡単な傷の手当をすることはできる。抱っこ紐が入っていれば、母親は瓦礫でベビーカーが使えなくなっても赤ちゃんを抱いて避難できる。
近くの避難場所や公衆電話、トイレ、水飲み場などがわかる防災マップが停電でも見えるように表示してあると、それを見て、駅員にたずねたり駆けつけた対策協議会の商店街の人たちの誘導がなくても客同士で助け合って避難することは可能だ。とくに、水害などで列車ホテルの実績のあるJRは、不通で駅に停車している車両を幼い子供連れやけが人の一時避難所として準備し活用できないだろうか。
一斉帰宅の抑制で、勤め人や学生は会社や学校で一時待機することができるが、自宅に帰れない買い物客など通過市民のために待機場所が用意されているのは品川駅や渋谷駅周辺のビルなどまだ一部にとどまっていると聞いている。

  ●急がれる実践的な帰宅困難者対策
人々が災害から身を守るためには普段の防災関連情報の共有は欠かせない。
そのための、地震災害対策についての質問に答えてもらえなかったのは、具体的な対応策がまだ進んでいないためではないかと理解している。
都は来年4月の帰宅困難者対策条例の施行に向けて、都民や事業者に対して、職場や外出先に待機しての「一斉帰宅の抑制」をはじめ、家族などとの「複数の連絡手段の確保」、「駅や集客施設での利用者の保護」などを求めている。このほか、安否確認と安全情報の提供、帰宅支援など多くの課題を抱えたままだ。
待ったなしの地震災害対策で、滞留者のために今取り組むことは、具体的にできることからはじめることで、その進捗状況を、都民をはじめ広く通過市民にも伝え、減災にむすびつけることが急務だと思う。

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国会事故調が「原発事故は人災」の判断 多くの犠牲者を出した「三陸地震津波災害」は…

2012-07-12 | 地震防災談話室
国会事故調は、福島第1原発の事故原因を「想定外の大津波」としてきた東京電力と国の考えをひっくり返して、「人災」とした報告書を発表した。
原発事故で突然に暮らしを奪われ、放射線に追われるようにして見知らぬ土地で不自由な避難生活をしいられている福島の人たちにとっては複雑な心境だと思う。
報告書の公表で、避難生活をしている人や風評被害に苦しめられている人たちの生活再建とさまざまな支援活動で、東京電力と国、それに国民の対応に変化を期待したい。
国会は事故調の提言に基づき原発事故原因の未解明部分の究明を行い国民の安全と安心を取り戻してほしい。

福島の原発事故については、筆者も、事故発生当初、暴走をはじめた原子炉を冷やすために建屋に向けて放水された多量の水の行方が気になった。放水された水はもしかして高濃度の放射性汚染水となって海に垂れ流されていたのではないのかと疑念が残った。また、福島第1原発の遠景のぼやけた中継映像は、カメラマンを高い放射線から守るためと聞かされたが、無人ロボットカメラを原発建屋の近くに設置して、ありのままの姿を国民にどうして見せることができなかったのかと思った。国会事故調の報告書もここまではふれていない。

 ●三陸地震津波災害への国会の独立委員会による検証を
東日本大震災は、東電の原発事故による放射線騒動で片隅に追いやられた格好だが、大津波で1万9000人近い人たちが犠牲になったことを忘れてはいけない。明治、昭和の三陸地震津波に次いで、またもや多くの犠牲者を出した三陸地震津波災害だ。1000年に1度の想定外の巨大地震による大津波だったと片付けるわけにはいかない。
津波被害に比べ、震害は小さかったといわれているが水道や電気など各地でライフラインがやられ、仙台などではエレベーターの落下事故や建物の被害も出ていた。また、震源域から遠く離れた東京都心でも停電などで交通機関が止まり多くの帰宅難民が出た。長周期地震動による超高層ビルの大きな揺れは都心にとどまらず、関西でもビル被害が出た。
東北の被災地で確認された液状化の被害は、東京湾沿岸でもマイホームが傾くなど広がっている。新潟地震(1964年6月)で液状化により多くの県営アパートが倒壊し注目されたが、その後、液状化を防ぐため実際にどのような対策がとられたのかは疑問だ。
震災の後、気象庁は沿岸住民の避難行動に結びつく津波情報発表の仕方に適切さを欠いていたとして見直しを行ったが、津波常襲地帯の太平洋沿岸には津波警報や緊急地震速報に欠かせないケーブル式海底地震計(津波計)は数えるほどしか設置されておらず、課題は残ったままだ。
「津波は逃げるが勝ち」を実践し、全員が助かったという岩手の釜石東中のこどもたちの避難行動をメディアが取り上げているが、これとは裏腹に、津波のことを一番知っているはずの大人たちがなぜ逃げ遅れたのか。悲劇を繰り返さないためにすべての人が避難できる具体的な方策を地域と一緒になって国や自治体にお願いしたい。

津波に襲われた太平洋沿岸にはあちこちに瓦礫の山が残ったままで、防潮堤も壊され港湾などの復旧も遅れている。人々が津波災害を避けて安心して暮らすための高台移転も進んでいない。津波被災地の街づくりの遅れは沿岸住民の津波対策の遅れにもつながる。
国や自治体は、地震・津波の被害想定をひき上げて、近づいているといわれる首都直下地震や南海地震などに備えるよう呼びかけており、国民の不安が広がっている。
防災対策を進める国や自治体のお目付け役としての国会の役割は大きい。検証を通じて、国の危機管理体制への国民の信頼回復につなげてほしい。

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