現代文化の快楽

60年代に東大の文系・理系の大学院生がコラボして、他大学にも声を掛けて、横断的に作っていた現代文化研究会へのオマージュ

棺に釘(六)  小保方嬢の「博士号」剥奪せず

2014年07月17日 | 随想録

 

今日7/17に行われた二大発表の内で、まともな方が、これでございます。

学位剥奪ができるための規定との比較部分は、至極常識的な判断です。素性が良いプロの判断と言えるでせう。長いのでその全文は末尾に転載しまする。

大学院指導・運営等のプロの目から、ここが重大なポイントの一つだと思って居たことは、抽象的に次のように指摘されて居ました。

報告書 第2章調査結果Ⅲ.

2.本研究科・本専攻における制度上及び運用上の欠陥・不備

・早稲田大学外の機関で研究を行う学生に対する指導の限界

・異なる研究分野に対する指導の限界

愚がここに問題の根源が有ったと思ったのは、上の方でございます。一般の人はそれよりも下の方が問題だと思うでせうけれども。専門分野だって、真に新しい問題の指導は学生と共に手探りなので、そのことは、正に指導教授のトータルなレベルの問題でございます。

但し、下の方に絡み、早稲田の教授方が、どのように立派で、どうきちんと指導されたかは、別問題で、失礼ながら、世間の想像を否定する根拠は有りませぬ。

もう一つ失礼ながら、弁護士さんが委員長で、理系(医学系)が委員というのは、早稲田らしからぬ実に不見識なことで、これは理研の最初の構成の方が、少なくとも見掛け上は真っ当だった。理系も馬鹿にされたものでございます。

ま、理系に圧倒的に優秀な人材が集まった時代は終わったのでせう。

 

(付)

報告書第2章Ⅱ.2.(3)

「不正の方法」と「学位の授与」との間に因果関係(重大な影響を与えたこと)が必要と解釈すべきであるところ、本研究科・本専攻における学位授与及び博士論文合格決定にいたる過程の実態等を詳細に検討した上で、「上記問題箇所は学位授与へ一定の影響を与えているものの、重要な影響を与えたとはいえないため、因果関係がない。」と認定した。その結果、本件博士論文に関して小保方氏が行った行為は、学位取り消しを定めた学位規則第23条の規定に該当しないと判断した。


佚楽園(25)  ‥[戦争]自衛隊に軽空母 

2014年07月15日 | 随想録

(自衛隊が買うという「軽空母」   最新型は「アメリカ級」*)

 

佚楽園(22)で、空母のことを書きましたが、自衛隊は、「軽空母」とも見做されている強襲揚陸艦を買う方向のようでございます。(7/12 東京、日経など)

ま、分相応という所なのでせうが、純粋な軽空母の能力†に加えて、接岸して海兵隊千6百余名(アメリカ級の場合)を上陸させることが出来るので、日本の島嶼防衛には確かに向いている面が有るとは申せませう。

ネット販売のカタログには探しても載って居なかったので、価格は不明ですが、比較的初期のもので建造費14億ドル、つまり千4百億円という記事をどこかで見かけたような気がします。それだと最大の原子力空母の30分の1ですが、最新型(写真)だと2千億円位になるものか?

なおイギリスが建造予定という普通空母の「クィーンエリザベス級」は、2千670億円とのことだから、そう外れては居ないでせう。

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孫崎氏は、先日偶然聴いた放送大学の国際関係論のゲストになったときに、日本が中国に圧勝すると、一部マスコミ(愚注 フジ産経グループなど)が頻りに言い立てているのは海上戦力だけの話であって、現代戦争の死命を制する航空戦力では、日本は中国に全く歯が立たないと強調して居ました。

更に孫崎氏が得々と追い討ちを掛けている論点は、前回も紹介しましたが、日本の米軍基地は中国ミサイルの射程内だから、滑走路が先にやられて、使い物にならぬというのです。

そうだとすれば、アメリカの空母が近くに居ないと絶望的なことになるわけですが、それ故にか、2008年より横須賀に1隻常駐して居ます。世界でアメリカ以外の所に原子力空母が常駐しているのは、此処だけという。(他にフランス海軍が1隻保有。ロシアには無い。)‡

しかしこのアメリカの原子力空母については、実に奇怪なことに、放送大学の授業の中では孫崎氏も高橋氏も全く触れることなく、中国と尖閣問題で争うな争うなと只管に誘導するばかりだった。法律(条約)論や外交論としては兎も角、軍事論としては誠実さを欠くものではないか?純粋に平和を説く高邁な発言でも、中国の軍事力を侮ることを戒めるために警鐘を鳴らしているものでもなくて、なんらかの思惑を持ったプロパガンダとみるべきでせうね。

識者はどう見るのか?もし自衛隊の「軽空母」で、中国による島嶼占拠を阻止できれば、日米同盟によって、なんとかなるということでせうか?

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* † 標準的には、 戦闘爆撃機6機、輸送機12機、ヘリコプターやオスプレイと全部で30機程搭載する。乗組員約千人、上陸して闘うためのいわゆる海兵1,687人。

‡ 現在はジョージ・ワシントンで、2015年8月に同じニミッツ級のロナルド・レーガンに代わる。兵員数は同じだが、搭載機数は5機増えて90機になる。

 

(蛇足) 消費税の増額は、現在の建前は兎も角、軍事費のためも有るのかも知れませぬ。


棺に釘(五)   滋賀県知事選挙は民主党の勝ち

2014年07月14日 | 随想録

 (この位なら頼りにしても良いかもしれないけれども。下にも写真)

 

口調査で伯仲とされて居た滋賀県知事選挙に、オナゴさん知事の後継者とされる民主党推薦候補が、25万3千何ぼ対24万数百という僅差で勝った。「卒原発」というスローガンと「アベノミクスによる地方経済成長」のそれとの戦いとされていたが、流石に後者に釣られる方が劣勢だったのかも知れませぬ。

戦争願望を隠せない石破幹事長の応援は、やや時期が悪かったこともあるか?(写真上下)

一方で、当選した側も、JR西労組出身で衆議院に4期も当選しているという経歴の割りに大苦戦したとも言えまする。

何はともあれ、今の民主党は、人材も国民の期待も消え果てたけれども、政権交代が原理的に可能な唯一の政党だから、或る程度維持されて居るほうが、日本のために良いでせう。

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国民は、戦争や兵器について、もう少し現実感を持つべきでせう。この石破氏程に喜ぶのは、時局柄、一国のリーダー格の人物として如何なものかとは思うけれども、一度も戦車を間近に見たことも無い男や、武装兵士を見たことも無い女子供というのも問題でせうね。

(何とも嬉しそう。右下隅には大根の様な物も 2013/4/28)


棺に釘(四)   戦争の歯止め

2014年07月12日 | 随想録

 (フライデー 昨日発売)

 

戦争に対しては、単にその言葉にヒステリックに反応するだけの人も居れば、その反対に、石破幹事長(常識的には将来の総理の最有力候補の一人。)のように、自衛隊の海外派遣にワクワクして胸躍らせている様な人も居る。

前稿までで見たように、形式的には(ヒトラー同様に)選挙で支持された総理大臣が、突如正体を現してクーデター的に強い権力を行使し始めたとき、それを止めることは決して容易では有りませぬ。今回の事態をクーデターとする慶応の小林なる御仁の指摘は、本質論では完全に正しい。

自らは決して戦場に駆り出される恐れが無い、官僚、政治家、財界人のペースで、国民生活の在り様が戦争向きにじりじりと変えられて行くと、選挙自体も、決して公平公正な物ではなくなってしまう。いわゆる茹でガエル現象も起こり得る。

例えば、東京の零細~小事業主は、自分達がどんな目に会おうと、ましてや他の国民(若者やサラリーマン層)がどうなろうと、かつて農民が自社野合体制を支持し続けたように、自民党か公明党を支持する。芸能人や大衆作家やプロスポーツマンは(良く知られている様にかなりの人数がもともと創価学会員であるが)、現在の生活を保障してくれるのは自民党体制だとして、自民党或いは自公野合体制支持を続ける。

  • それが「公平公正そのものだ。何が悪い。」というのは、皮相の論でしかない。
  • 秘密保護法や萎縮や権力すり寄りに基づく自主規制どころかついに始まった報道干渉(☞蛇足 国谷事件[写真])に依って国民に正しい情報が伝わらなくなると、余程賢くてしかも一定の生活が保障されて居る者でないと、目先の状況に支配され、組織的な宣伝にも「目が眩み」やすい。
  • その結果、投票行動に於いて、国家としては勿論、自分自身や家族にとっても、ほんの少し長い目で見れば誤っている選択をしてしまうことは避けられぬ。
  • それを「民主主義」を支える「自由意思」とはとても呼べないことは、先進「民主主義」国の思想家の中にはすでに指摘して居る者が有るべきだが、その紹介は文系の人にお願いしませう。
  • 「自己疎外」などと言う陳腐で多義性が有る言葉を今更振り回すつもりは無いが、現在日本に起こりつつある事態の本質は紛れも無く「民主主義」の中のそれだろう。
  • 自由選挙制度は、21世紀の今日では、日本社会の強欲で無反省で不道徳な経済的強者に与えられた「免罪符」の役割を果たしているものとして観察される。

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アメリカの場合は、議会の予算と交戦の承認権限で、戦闘力に限界が出る。(だから別に論じるべき事柄だが、尖閣紛争で、必ずしも米軍が出動する保証は有りませぬ。☞蛇足 孫崎見解)

翻って、日本の場合、東条の様に、飢餓輸出ならぬ飢餓戦争をする気で有れば、金が無くても、人員が居る限り、それを戦争に使うことが出来る。だからABCD包囲網の様に石油の輸出を止め、最後は原爆まで落として見せなければ、戦争は終わらなかった。

日本の場合、明治憲法でも、今の憲法でも、実質クーデターに対しては、非常に脆い。その理由は、一言で言えば日本は、アメリカと同じような議会を持っていても成熟した民主主義国家ではないからですが、案外天皇制が、民主主義の形骸化に寄与しているのかも知れませぬ。東条総統、安倍大統領であれば戦争責任も政治責任も分かりやすい。日本国民には、未だ、いざとなれば選挙で政権を引っくり返せるという客観的に見れば確たる根拠が存在しない自信と、それでもだめならば天皇が戦争を止めてくれるという甘い幻想が有るのでせう。

ま、今の日本では、天皇以外に人間としての道義的模範を示す人が居ないから(100%望ましいことばかりとは限らないが)、天皇制でもなければ、財界人のホンネ丸出しだけの下卑て賤しい社会に堕ちて行くだけでせうね。最近目立った米倉、籾井、丹羽、勝俣氏などは、さぞバブル時代に浮かれて居たサラリーマンの憧れの的の立派な人達なのでございませう。これについては別の視点から改めて議論したいと思いまする。

 

(蛇足) 人員については、安倍・石破両氏や外務官僚にとって「朗報」が有る。それは現代戦争だと、オナゴさんも、コンピューター画面を見ながら、十分戦闘参加できることでございます。

蛇足の蛇足 放送大学の高橋-孫崎コンビの話をカーラジオでマタ聴いた。孫崎が言うには、尖閣帰属問題は先送りしただけだし、中国が一旦占拠したら「実効支配」になるから、アメリカは安保条約や議会の姿勢として、恐らく日本の領土保全のためには動かない。空軍力は日本は中国に負けるほか、米軍滑走路も中国のミサイルでやられるから、海軍力だけで議論している一部メディアが言うような日本優位ではないそうな。

其のマタ蛇足 孫崎の言う通りなら、尖閣も沖縄も、アメリカにとっては前線のワンノブゼムなのか?アメリカの国力もここまで落ちた以上、いつ「整理仕訳対象」にされても仕方ないというのが冷厳な事実かもしれぬ。

更なる蛇足 NHKの例の番組の後で、出演した菅氏自身に代わって、身代わりの秘書官に脅し上げられた国谷裕子氏が泣いて居たそうな。愚は国谷ファンでは有りませぬが、NHKの代表的番組と有名キャスターについてもそこまで牙を剥き出して来たとは、驚きです。これで菅氏のやり口もはっきりしたわけでございます。

官邸圧力問題でクローズアップされた国谷裕子キャスター(57)のスゴさとは? (元記事は昨日発売の「フライデー」 写真)

愚は、それよりも安倍政権側のすごさをヒシヒシと感じまするが。

お終いの蛇足 いや、フライデーも本当に報じたかったのは、後者なのでせう。流石にプロの書き方というべきでございます。


棺に釘(三)   ハマスの二百発のロケットとガザ地区百ヶ所*の爆撃      

2014年07月11日 | 随想録

* 朝日(7/11)によれば、ロケットはエルサレムに着弾したものや核開発地区を狙った(ハマス声明有り。)ものを含めて100発、空爆は4日目の10日までで550か所とされる。

 

安倍総理大臣閣下の祖父の岸と東条) 

 

中国の日本に対する現段階での挑発行為は勿論、南アジアでの侵略行為より流石に本格的ですが、アメリカの力が衰えた上にリベラル派のオバマ大統領では、ネタニヤフ氏を止め切ることは出来ないようです。オバマ氏はイランとの妥協を図り始めたばかりだから、タイミングが悪いが、ハマスもそこは計算に入れて攻勢を強めている。

元を正せば、日中問題同様に、イギリスが、己の身に直接被害が及ばなければ、アングロサクソン以外はどうなっても良いということで、碌でもない戦後体制を作ったことの後遺症でございます。

イスラエルとハマスとは、文化レベルが高いユダヤ人国家と、捨て身のアラブ人武装集団とだから、正規戦争ならば力の差は明らかだけれども、それに踏み切るのは容易ではないし、オバマ氏にしてみれば、今親アメリカ諸国が新たに戦端を開いたり戦線拡大することは、止めて欲しいでせうね。

国家の性格を見れば、アメリカが最後まで信用できるのはあの界隈ではイスラエルだけだから、ネタニヤフ氏が地上軍進攻に踏み切ったときに、いくら肌が合わないオバマ氏でも、間接的には支持せざるを得ないでせう。

さて日本国民から見たらどうか?安倍氏はどこに海軍を、次いで地上軍を派遣する構想を温めて居るのでせう。東条と違って、現段階では人的資源が無尽蔵というわけではないから、良~く考えなはれや。(蛇足参照)

 

(蛇足) 集団的自衛権は、取りあえず「外務官僚」に、金に次いで交渉の武器を与えたもの。国益よりは、念願だった大いなる「省益」なのだけれども、おめでたい安倍さんにはそんなことは分からず、すっかり有頂天になっているのみでございます。

蛇足の蛇足 今回の実質改憲(一種のクーデター)に比べたら、徴兵制は、遥かに簡単に閣議決定できる。 「兵役」は憲法18条の「苦役」に該当しない。見方によっては、憲法論争の盲点に入って居た。原発の大事故と同じ。

其のマタ蛇足  戦争は、アレキサンダー大王でもジンギスカンでもナポレオンでも、少なくとも兵員を食わせなければ成り立たない。東条は徴兵徴用した軍人軍属の戦没者210万人(230万人という統計も有る。)の内2/3(或は60%強)の内実に140万人を外地で餓死させている。これは、人類史上最悪最凶の軍事指導者だったのではないか?

更なる蛇足 写真の下の見出しは、「西郷派大東流」と名乗る或る合気道団体のサイトの記事へのリンクになっています。そこでは、詳しい内容は読んで居りませぬが、一見して、敗戦に至るプロセスについて、天皇や文民と東条の役割について、或る程度20年代初頭に日本国民が受け取った常識的な見方を述べて居るようです。愚としては、ここでは、上の極めて象徴的な写真(他にも数葉掲載されている。)の借用元として敬意を表するに留めまする。