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現代ビジネスOPEN!! どりこの探偵局


   1兆5000億円のビジネスチャンス 
~「メディア半減期」の向こうにあるもの
~ 

 

 先週、ニッポン放送の重村一会長の話を聴く機会があった。
 民放ラジオ局の営業収入は、ピーク時に比べて、半減に近いレベルになっているという。

 2015-20年に半減期に達する

 物理学で半減期という言葉があり、ウィキペディアでは「半減期(はんげんき、Half-life)は、放射性核種あるいは素粒子が崩壊して別の核種あるいは素粒子に変わるとき、元の核種あるいは素粒子の半分が崩壊する期間を言う。これは核種あるいは素粒子の安定度を示す値でもあり、半減期が短ければ短いほど不安定な核種または素粒子ということになる」と書いてある。

 

 で、気になって調べてみた。

 

 電通の「日本の広告費」によると、ラジオ広告費のピークは1991年で、2,406億円、2008年は1,549億円なので、36%減っている計算だ。しかし、07年から09年に120億円減っているということからみて、2010年か2011年に半減期に達すると思われる。

 テレビは、ピークが2000年の20,793億円で、08年が19,092億円。8%程度の減少だ。   

 しかし07年から09年に900億円減少し、今年はそれ以上落ちそうな情勢だ。年間1000億円のスピードで落ちると、半減期は2017年ごろという計算だ。もう少し早まるかもしれない。

 新聞は、広告だけだと、ピークが1990年の13,592億円、08年が8,276億円で39%減っている。これも07-08年に約800億円減っていて、2010年には半減期になる。しかし、新聞は購読収入が半分以上だ。日本新聞協会の新聞の総売上高のデータだ 

 と、ピークは2000年度の25,222億円。2008年度は21,400億円なので15%減だ。このデータだと07-08年度に約900億円減になっている。このスピードだと、2018年が半減期になる。これも部数減が進めば、広告の減少がさらに進むので、早まっていくと危惧している。人口減と、購読者年齢の高齢化が懸念材料だ。

 景気が影響するので、これから、減少のスピードが早まるのか、緩くなるのかは不透明だが、一時的な鈍化はあっても、減少に向かうトレンドは変わらないだろう。つまり、2015年から2020年の間にマスメディアは半減期になるという見通しだ。

単純な有料化で成功する新聞サイトは皆無

 減った分がどこに吸収されるのか? それが問題だ。

 私はそこにチャンスが生まれると見る。マスメディアを代替するメディアが出てくれば、そこが大きなパイを奪っていくわけだ。08年度のインターネット広告費は6,983億円。テレビと新聞の減少で穴が開く部分が約2兆2000億円あるので、GDP(国内総生産)が減少しなければ、1兆5000億円のビジネスチャンスがあるということだ。

 最近、マスメディア関係者から、いくつかの相談を受けた。一つは新聞のネット事業は有料化に成功するかということ。もう一つは地方の新聞社のネット事業をどう成功させるかだ。

 端的に言うと、現状のネット事業をそのまま有料化して成功する新聞社は皆無だろう。日経が2010年に電子新聞を有料で発行するが、これもサービス内容を現状から大幅に改良して初めて、成功の鍵を握るだろう。

 地方の新聞社も、県庁や県警本部に常駐して、ありきたりの情報を流している程度なら、沈下は避けられない。米国の地方新聞社が続々倒産しているのは対岸の火事ではない。どういう情報を、どういうサービス形態で配信するか、ゼロから考えるべきだろう。

 そこで大事なことは、ネット事業はコンテンツがポイントではないということに気づくことだろう。一番大事なことはサービスだ。書籍のアマゾンや、モールの楽天が成功したのは、サービスの質が決め手だった。

 画面の見易さ、ボタンの配置、情報の更新頻度などが決定的に大事で、「いい記事だから読まれるだろう」などというセンスでは戦えない。

つまり、我々が相手にしているのはインターネットという土管ではなくて、Webという情報環境なのだということだ。建築で例えれば、空間設計そのものだ。お飾りの絵画などは、従属物だということ。そこを考えてほしい。
                          2009年10月7日
                                        坪田知己


 

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