西伊豆(宇久須)だより

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ヤーコン六次産業 栽培から販売は本当に可能か 長尾勤

2013-06-18 21:45:27 | 日記
 藤原 私たち宇久須の方は栽培の方は比較的得意なんですけども、流通になると全く手も足も出ないという感じです。南伊豆に住んでおられて、株式会社ベックの社長をされている長尾勤さんに、ヤーコン6次産業 栽培から販売は本当に可能かと題してお話を伺います。
 
 長尾 私は南伊豆に一昨年越してきまして、株式会社ベックを経営しており、ヤーコンに専念しております。宇久須では浅賀さんや藤原さんを通じて、ヤーコンの株をいただきました。去年からはじめまして今年2回目です。先日植えて数えましたところ、約900株ほどありました。広さでおよそ1反歩弱。去年はかなり大失敗といいますか、思惑の40%程度しかできなかったということを前もってご報告させていただきます。



 私は実は農業というのは初めてでして、どんな職業でも最初から成功するとは思いませんが、喜びを感じるということが本当はいいんですね。喜びというのは人によって違うかもしれませんが、共通していえるのは、思い通りになったとか、あるいは物事が完成した、というようなときに喜びを感じるのかなと思います。

 ご承知のように6次産業というのは、1次=生産ですね、それから加工=2次、それからサービス産業=3次、かけても足しても6になるということで、6次産業というそうです。私たちはいままで、自分たちが生産したものが収入につながるということに対して、興味を持っていたわけですけども、それを実感することを1つの目標にする。農業ビジネスに育てあげることかなと、思っています。

 私を含め、農業を始めた者は販売というものを体験していない。これをいかに体験していくか。そのビジネスのメカニズムといいますか、ストーリーを知って、自分自身がリスクをまず感じる。それから利益も得るということを、実際に体験してみる。これは大変なことなんですが、なかなかそれに踏み込めないのが実情かなと思います。成功したらやりましょうかと、誰かが成功体験をすればその通りにやればいいんじゃないかなということで、最初になかなかその手をつけることができない。難しい、やったことがないということではないかと思います。

 ただいきなりやるといっても、リスクは取れない。したがって6次産業化はやはり地域とか仲間、あるいは業者間といった、ビジネスの最小単位で行動するのが妥当ではないかと思います。

 先ほど来、上田先生から「つなぐ」というお話がありましたけど、まさにその「つなぐ」ということですね。皆さんのいままでの実績を尊重しながら、仲間でつないでいって、一つの組織に完成する。ということですね。

 私は藤原先生とか浅賀さんとか、あるいは下田北高の先生、それから地域の人と協業を今やっております。住んでいるのは南伊豆なんですが、行政の尻が重いもんですから、とにかく民間で立ち上げましょうということで今やっています。

 先日は畝作りとか、あるいはマルチの作業を手伝っていただいて大変助かっています。できない事を無理して自分でやるということではなくて、やはり皆さんと協業していくということが大切ではないかと思うんですね。

 その場合やはりリスクも分散して、リスクを取っていくという1つの勇気が必要ではないかと思います。喜びを共有できるという面において、やはり6次産業は常に成長していく。それから組織もそうですけども、つねにイベント、それからサプライズが必要です。会社経営もそうですけど、ひとつのイベントとして決算というものがあります。それからサプライズとしてはいろんな新規商品の開発とか、新規のお客さんの開拓とかですね。いろんな意味で刺激になるようなイベントとサプライズ、これは常に頭に置いて私は行動しております。

 それからこれは全体的にいえることですけども、ヤーコンの事業をこれでクロージングするのではなくて、このヤーコン事業というものをそのものを1つのパッケージ化して、これを全国展開して行く、ということを目論んでいます。

 具体的には栽培から販売をテーマにしています。栽培はそれこそ藤原先生ほか実績のある方々の指導を仰ぎ、時期、植える間隔だとか深さ、あるいは肥料をどうするかとか、といったものを全部細かく教科書にするわけですね。つまりそれを1つのモジュール化します。

 ヤーコンというのは北海道から九州まで栽培が可能ですので、このモジュールをパッケージCDにしまして、これを販売あるいは指導をしていく。栽培から販売までのおまけといいますか、そういう事業にできればいいかなと思っております。

 ヤーコンは茨城大学の月橋輝男先生という方が、ヤーコンサミット、NPOの法人で日本ヤーコン協会というのを平成22年に立ち上げました。ヤーコンは非常に栄養価が高くて、機能性が高い。ただ、家庭菜園といいますか、小さなところで何十株か作っている方はわりといるんですけど、それ以上に作っている方はなかなかいらっしゃらないですね。

 地域的に多いのはやはり茨城県、先日震災に遭いました福島県もそうです。栃木県もかなり多い。それから広島。九州でも作っているところがあります。しかし一般消費者の普及が進んでいない。これはやはり進めなければいけない。いかにしてその食品の加工技術を開発していくか。そしてその良さ、これは栄養的良さもあるし、それから現代病というんですか、太り気味な人たちあるいは、高血圧とか血糖値の高い人、その人たちに「良さ」の理解を深めてもらい、健康維持を求めるように努めていくというのが、ヤーコンのNPO法人の目的の1つでもあります。

 アグリビジネスという言葉がありますね。いわゆる儲かる農業です。そういうことを農水省あたりは盛んに啓蒙していますけども、この1つには生産性の安定があるんですが、これがいまのところ、ヤーコンについてはなかなかされていないんですね。

 いまヤーコン栽培している事業で一番大きいのは、茨城県の石島さんという方で、そこが1町8反歩。それから三島の石黒ツヤ子さんという方が、かなり休耕田を利用して活動しています。その方のメインはお茶ですね。葉っぱを利用したお茶ですね。全国的に大きいのはあと1つ山口県にもあるそうですが、そういったことで静岡県賀茂郡、この宇久須のあたりとか南伊豆もそうですが、そこを中心に伊豆のヤーコンというようなひとつの特産物に育てていければと思っております。従いまして品質の安全、安心。

 それから3番目の新商品や新サービスの開発。これがわりと大変です。生イモだとかあるいはお茶、新商品に関して私もいろいろやっており、全国的にも販売をしているんですが、なかなかその製作工程が難しい。実は私も麺を作っています。蕎麦を作ったり、ウドンも作ったりしているんですけども、その前の製粉工程が大変難しい。

 年内、12月までに収穫したヤーコンはオリゴ糖がかなり抑えられていて、製粉作業が割と簡単といいますか、わりと出来るんですね。だけど年を越すとオリゴ糖がかなり増え、変質してそれが製粉機にくっついてしまう。擦れないというかくっついてしまって、機械を回す段階で温度が高くなれば、すぐにアメ状になってくる。そういうことで、製粉工程が大変難しいんです。

 製粉工程を私も研究していますが、静岡県で二、三見積もりをもらったところ、いまは100グラム製粉するのに950円かかります。1番高い牛肉よりも高いぐらいじゃないでしょうか。それぐらいですので、ネットで探しても100グラムのヤーコンの粉は、1番安いところで1,320円くらいです。それでも実は売れているんですね。売れてはいるんですけども、買う方もこれでは継続しないんじゃないかと思うんですね。

 私はどうにかしてこれを半分くらいのコストに持っていきたいということで、いまそれを研究しています。ただし待っていても仕方がないものですから、違う方法で麺に練り込めないかなとことをやっています。それは西伊豆の佐野製麺さんにご協力いただきまして、もうすぐ出ると思うんですが、麺と蕎麦とうどん。これを作っています。

 粉でも作っているんですが、これが美味しいんですね。歯ごたえというか喉越しといいますか、皆さんは秋田の稲庭うどんというのをご存知かもしれませんが、あのようなツルツル感、喉越し感があるんです。これをやっぱりオリゴ糖なんです。食べて美味しくて、栄養にもなるということで、私は相当良い食材になると思うんですけど、いかんせん製粉代が高いから、流通する値段にまで圧縮できるかというのが1つのポイントです。

 新サービスの開発というのは、そういう点で難しいかなというのがありますが、これは解決します。ちょっと時間をいただいて、新商品が出来たら是非皆さんに試食していただくという段取りをとっていきたいと思います。

 それからその次のステップです。商品がさて出来ました。販路をどう展開していくか。これは生産者、私たちだけが頑張ってもダメなので、是非皆様のお近くの例えば蕎麦屋さんだとか、あるいは知り合いの流通関係だとか、あるいは食品を扱っている方とかに紹介していただきたい。私に連絡いただければ、商品があるときには商品を提供しますので、どんどん啓蒙活動を展開して頂いて、宇久須のあるいは南伊豆のヤーコンを、賀茂地域の全体の商品、あるいは名産に育てていければという風に感じております。

 私の会社はsix farmという名称でやっています。まさに6次産業というつもりなんですけども、24年の実績は予想の4割。これは藤原先生にご指摘いただきましたけども、元肥が足りなかった。私は全く素人だったものですから、ちょっとなめてマルチを敷かなかったんですね。そうしたら相当雑草が生え、一時期は雑草の方が背が高くなりまして、慌てて草刈り機で刈りましたら、ヤーコンまで刈っちゃったんですね。それでも株はかなりできました。

 加工品としてはそばうどん、それから販売は今私の知り合いに東京の御徒町で蕎麦屋をやっているのがいまして、そこにうどんを納入しています。これをはご長寿うどんという名称で出しています。それから南伊豆でそば、うどんの試食会を3回くらいやりました。今後そういうこともやりまして、是非皆さんに知名度だけは上げていきたいと考えています。

 問題点としましてはやっぱり栽培を安定するということですね。商売は何でもそうですが、注文を受けても在庫がありませんというのでは商売になりませんので。これは年間を通じて品質を安定させて、量も安定させることが必要です。

 それから2番目として加工工程の研究。これはまさに費用を圧縮して、お買い求めいただきたい値段にする。

 それから新しい製品の開発。私はお茶は作らないんです。イモをなんとかしようと思っていますので。お茶はいまはつくらないつもりなんですけども、お茶も含めてヤーコン全体の商品、製品を開発していく。

 それから4番目はいちばん大事な販路の開拓なんですけども、やはり少なくとも地元の蕎麦屋さん、あるいはうどん屋さんに提供できるような商品だけには最低進めていきたいなと思っています。

 アグリビジネスという、いわゆる農業を成功させるビジネスということなんですけども、やはり先程の先生のお話の通り、立場を超えて利益を追求する。これからのビジネスは利益を追求する中で、やはり欲張らないということですね。そこそこの利益を共有するわけですけど、欲張らないということをキーポイントに1つおきながら、しかしながら利益は出していく、という事はやっぱり考えていかなければいけないと思っています。

 3つ目として地域の名産品ですね。ネットは利用すべきだと思います。うまいPR法をやっているところもありますので、そういう人たちにお願いするにしても、やっぱりネットは十分活用していきたいなと思います。

 それからもうひとつは、やっぱりレシピですね。これは割合大事なんです。特有のレシピ。これを是非。今まであるもの以外のもの。エッというようなレシピ。カレーに入れるとかいうようなオーソドックスな話ではない、そんなものを考えていきたいと思います。私はパスタ、それもピザ生地とかですね、それからきょうふっと浮かんだんですが、センベイなんかいいですね。あれはちょっと甘みがあるので、 チップスのようなセンベイ、というよりはつまみものですね。ホールフードという考え方ですね。一物全体という考え方。要するにただスライスして干すというだけではなくて、ちょっとひねれば面白いチップスができるんではないか。

 日清の昔の社長さんが徹夜して考えたカップヌードルみたいに、大化けさせていきたいなという思いを持っているし、その可能性もあるかなと感じています。

 そういうことで、私が思っているのは次の結論です。もう最初の6次産業はできるかどうかということに対しての結論はできると断言したいと思います。
 それをやるのはいつからですか。
 今でしょう。
 ということです。どうもありがとうございました。

 ――御徒町で実際にうどんを出しているとおうかがいしましたが、いくらぐらいでお出しになっているんですか。
 売値は200円となっています。一束120グラム、消費税込み210円で出しています。
 ――採算が合ませんね
 あいません

 ――全国に栽培の方法をCDに焼き付けてというようなお話がありましたけれども、全国にやった場合出来上がってくるヤーコンの量的、質的なものについてはどう考えているんですか。
 先日のヤーコンサミットでの平均的な生産高は1株にだいたい4キロのイモができます。茨城県の場合はかなりつめて植えているんですね。つまり1反歩で1,800株ぐらい植えているんです。
 だけど藤原先生のお考えではちょっと多いのではないか、やはり株の間あるいは畝の間を少し多めに広げてやって、1500株くらいかな。私はいまは60センチの株間隔で、畝の間は120センチとっているんですね。そうすると1反歩では1,500株はできるのではないかと思っています。従ってだいたい1株4キロ、イモが小さい場合は3キロくらいになります。
 買い取りという立場になりますと、買取の値段というのは大変今難しいんですね。最後のページに参考資料として色々値段を書いていますけど、生の形の良いのは1キロ400~450円くらいと茨城の場合はいっていますね。しかし業者から聞いた話ですけど、やはりなかなか売れないらしいですね。形の悪いのは、かなり引いているそうです。それと茨城の場合は学校給食にも出しているらしいです。学校給食に提供する場合は相当低く、1 kg 60円ぐらいらしいです。ですから 1株で4キロできて、どのくらい規模ができるか掛け算をして、平均200円かどうかではないかと私は思っていますけど、その程度だと思います。したがって1反歩でざくっと計算して、4キロで1,500株で6,000キロ。平均が150円から200円だとすると。問題はもう一つあって、それを私のところで引き受けた場合に、製粉の問題と販路の問題、これをクリアーしてうまくいくかどうかというところは、今のところ割合リスキーなところですね。現状はそんなところです。

 ――ちなみにヤーコン社の買い取り価格は、上物でキロ200円、普通のものでキロ100円、ちょっと劣るもので50円というのが三島のヤーコン社の買い取り価格です。

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