蜘蛛網飛行日誌

夢中説夢。夢の中で夢を説く。夢が空で空が現実ならばただ現実の中で現実を語っているだけ。

「貸切」書籍バーゲン

2006年03月25日 17時33分49秒 | 本屋古本屋
三月二十一日と二十二日に東京古書会館地下のイベントホールで洋書バーゲンセールが開催された。ほとんど英語の書籍でなおかつビジュアル系が多く出品されていた。ビジュアル系が多いのは最近の風潮でいまさら論うまでもないが、読み応えのある書籍も出ていて探せば結構おもしろいものが見つかった。わたしは二十一日に訪れたのだが、しかしそれにしてもなんと客の少なかったことか。わたしを含めて三人ほどしか入っていなかった。もろ貸切状態。まるで王様気分で一冊一冊をじっくりと嘗めるように観て回って四冊ほど購入した。
客が少ない原因は明白だ。そもそもわたしがこの催し物を知ったのが十八日の土曜日に古書展を覗きにいったとき、地下ホールへの階段踊り場にある掲示板に、ほんとうに素っ気ないチラシが貼り付けられているの見たからなのだ。筋金入りの洋書痴には先刻承知かもしれないが、わたしも含めてごく普通の読書家にとっては何のアナウンスもないに等しい。それを考えると主催者の対応には大いに腹立たしいものを覚えた。「日本の古本屋」は東京都古書籍商業協同組合が開いている公式サイトだがここでは古書展の開催しか告知されない。つまり古書会館でのエベントであっても今回のような洋書バーゲンにはまったく触れていないのだ。全国の洋書ファンは断固怒るべきではないだろうか。そりゃあ古書と新刊との違いはあるかも知れないけれども、同じ古書会館での催し物じゃあないか、もっと融通を効かさないことにはますます本離れが加速されるというものだ。
それはそうとして「王様気分」で本を見て回るのは確かに極楽気分なので、こればっかりは興味のない人からはまったく理解も共感も得られないことだろう。しかしそうはいうもののわたしたち書痴は「理解」も「共感」もまったく望んでいない、いやむしろ拒否するものである、なあんて力むこともないのだが、じつはこのセールにイタリア書房も出品しているというので見に来たわけなのだ。ところが勇んでイタリア書房のコーナーへいってみると、これがなんとも情けないほどに貧弱な品揃えで、一瞬なにかの間違えかあるいはわたしの勘違いではないかとさえ思ったのだが、間違えでも勘違いでもなかった。イタリア語の書籍は素人向けの美術解説書と、旅行案内みたような冊子、それに子供向けの本がパラパラと置かれているだけ。一冊やけに重厚な仮綴本があったのでひらいてみたらアクィナス本の索引集だった。これに比べてスペイン語系は多く出品されていたとはいうものの、あくまでイタリア語と比較してというに過ぎない。これには心底がっかりさせられた。
仏語、独語の書籍はついに見つからずじまいで、これで洋書セールとはおこがましい。花のお江戸の書痴をなめるのもいい加減にしてもらいたいものだとブツブツ文句を言いながらも、わざわざ休日の午後駿河台下までやってきたからには手ぶらで帰るわけには行かぬと、自分でも訳がわからない理屈をつけて最初にも書いたように四冊購入した。
1."Does Socrates have a Method? -Rethinking the Elenchus in Plato's Dialogues and Beyond-" The Pennsylvania State University Press 2002. これはメリーランド・ロイヤルカレッジ助教授Gary Alan Scott編集による論文集。
2."Platonic Writings, Platonic Readings" The Pennsylvania State University Press 2002. これも同じ出版社から出ている論文集で編集はCharles L.Griswold Jr。この人はボストン大学の哲学教授で"Self-Knowledge in Plato's Phaedrus"という本も上梓しているそうだ。
3."Husserl at the Limits of Phenomenology" Nortwestern University Press 2002. これはモーリス・メルロ・ポンティの英訳本
4."Witchcraft in Europe: 400-1700" University of Pennsylvania Press 2001. 読んでの通り五世紀から十八世紀にかけての魔術使いの歴史を記述した本で今回購入した四冊のうちでもっとも興味を引かれるタイトルだった。なお編者のAlan Charles KorsとEdward Petersはともにペンシルベニア大学の歴史学教授なんだそうだが、そんなことはどうでもよい。暇を見つけてさっそく読んでみることにしよう。
ところで、白状するとわたしは英語が最も苦手なのです。


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