学館229

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ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書 スワロ

2018年04月18日 10時53分05秒 | Weblog

 最近日比谷のど真ん中に出来た、ミッドタウン日比谷の中の映画館で、スピルバーグの「ペンタゴン・ペーパーズ」を見た。最新の劇場で、通路や席は広いし場内は程よい角度があってスクリーンが見難いこともない。映画館はどんどん進化している。

 席が狭くて、前の人の頭が気になる、昔の「銀座 並木座」「池袋 文芸坐」「渋谷 全線座」「飯田橋 佳作座」「新宿 日活名画座 昭和館 シネマ新宿 日東地下」などがちょっと懐かしい。でも暗いので痴漢も多かったなあ。

「ペンタゴン・ペーパーズ」の原題は何故か「POST」、つまりワシントンポストのことだ。

 この映画の主題は、権力の脅迫に負けずに、ベトナム戦争に関する機密文書を新聞に掲載公開し、米国の国是である報道の自由を守った、ワシントンポストの編集者、経営者の勇気と勝利を描くというところにある。

 しかし一方で私企業であるポストの経営者の苦悩も同様に扱っている。父親が創業したポスト紙の当時の経営者は、夫を亡くした未亡人のメリル・ストリープだった。世間を知らない中年女性の経営者は、周りから軽視され新聞経営も苦境にあった。資金難を解消するため、ポストは株式の上場をする。そのまさに上場した日にこの最高機密文書というセンセーショナルな記事掲載をするかどうかの決断を迫られる。もしかしたら投資家はリスクを嫌って株が大幅に下落するかもしれない。そうしたら会社も何もかも失うかもしれない。

 またメリル・ストリープの社主は、ワシントンの権威ある新聞人として、ケネディやジョンソンなどの歴代大統領とも家族ぐるみの親しい付き合いをしてきたということもある。記事掲載はその信義を破ることにもなる。まるで首相と某学園の理事長のようだ。

 この映画は、正義に燃えた新聞記者が政府の機密文書を暴いて、不正で不当なベトナム戦争を批判するということよりも、機密文書を公開することで刑事事件になり、経営者は刑務所に新聞は破産という大きな危険を冒してまで、報道の自由にこだわるのか、ということに重きを置いている。

 結局、多くの取締役(男性)は会社の安全のために記事掲載に反対するが、メリルストリープの社主はトムハンクスの編集長とともに、米国の自由の伝統を守るために、一か八かの判断で機密文書の記事を掲載する。

 その後は、最高裁で見事に機密文書公開の刑事訴追が却下され、一方米国大統領だったニクソンはウオーターゲイト事件で失脚していくという結末。まるで水戸黄門のラストを見ているような終わり方だ。

 2時間以上があっという間だった。メリルストリープの心もとないが芯がしっかりした女性社主がいいね。トムハンクスも渋くてかっこいい。お奨めです。