予てJR飯田線の秘境駅には興味があり、折を見て訪れてみたいと思っていたが、飯田線は名にし負う交通不便なルートで決心が付かなかったが、偶々、「ジパング倶楽部」の頁を繰っていた所、特別列車による日帰り「飯田線秘境6駅探訪の旅」が紹介されていたので即座に申込み4月14日(金)にワイフ同伴で楽しんできた。
以下にその折、強く印象に残った4秘境駅の概要を記す。諸氏の参考になれば幸いである。
1.秘境駅とはどんな駅か:
まず最初に秘境駅とは「周辺に人家がない」「駅に通ずる車道がない」駅である。従って無人駅で、一般の乗降客が殆ど無い。
2. 飯田線秘境駅の地図:
今回探訪した飯田線の6秘境駅の配置は下図の通り。
6秘境駅は次の通りである。()内は読み方と秘境駅ランキングの順位を示す。
・「千代」(ちよ、29位)
・「金野」(きんの、7位)
・「田本」(たもと、4位)
・「為栗」(してぐり、17位)
・「中井侍」(なかいさむらい、14位)
・「小和田」(こわだ、3位)
因みに、秘境駅のランキング1位は「室蘭本線の小幌駅」、2位は「大井川鐵道の尾盛駅」である。
3.探訪コースの概要:
往路は豊橋から特急「ワイドビュー伊那路」で「天竜峡駅」まで直行し、天竜峡を40分程散策する。沿線は桜や花桃が満開で将に春爛漫の情緒であった。
復路は天竜峡駅から特別列車「秘境駅号」で6秘境駅に順次停車し、6~17分の停車時間に下車しホーム或いは駅近傍を歩き秘境駅の雰囲気を味わう。
(秘境駅号の外観)
(社内でサービスされる弁当)
4.探訪地の概要:
(1) 天竜峡:
秘境駅ではないが下車し、ガイド付きで40分程天竜峡のサワリを散策する。
(天竜峡駅)
(飯田市の市花、ミツバツツジが満開)
(天竜峡の奇岩、龍角峯、高さ70m)
(2) 田本駅(4位):
■ホーム右側は巨大なコンクリートの擁壁、左側は下に天竜川が流れる断崖絶壁。集落へは山道を20分ほど歩かねばならない。
(田本駅全景)
■飯田線はトンネルだらけ。全部で138個あるそうである。前後をトンネルで囲まれ、下り方向にはトンネルが連続している。
(連続するトンネル)
■時刻表では一日8本が停車し、その間隔は2時間~3時間半であり如何に不便か想像できよう。
(田本駅の時刻表)
(3) 為栗駅(してぐり、17位):
■画面左側に人家が2軒見えるが今は無人だそうである。
(為栗駅の全景)
■駅名が難読である。鉄道マニアでなければ読めないであろう。
(難読駅名)
■駅へ唯一のアクセス路は天竜川に架かるこの吊橋だけであるが、車は通行禁止である。
(天竜橋)
(4) 中井侍駅(なかいさむらい、14位):
■かわった駅名である。こんな山間僻地に“侍”とは謂れが気になる。
(不思議な駅名)
■ホームの真上の斜面に2軒の人家あり。アクセスは後ろの山に急傾斜の狭いつづら折りの車道があり、他の民家も比較的近いようなので秘境駅とは言い難いかも知れない。
(ホーム真上の人家)
(5) 小和田駅(こわだ、.3位):
■6秘境駅で駅舎があるのはここだけである。付近には嘗ての製茶工場の廃屋で残っている。車掌がサービスの一環で記念写真に入ってくれるのが嬉しい。
なお、平成5年の皇太子殿下のご成婚の折には、雅子様の旧姓が小和田(おわだ)で字が同じことから多くの方が此処を訪れたそうである。
(車掌と一緒に記念撮影)
■駅舎の中に駅周辺の案内図がある。小和田駅は静岡県にあり、天竜川の対岸は愛知県、北側は長野県境であるのが分かる。最寄りの集落は右下の塩沢集落であるが歩いて1時間離れている。
(周辺案内図)
(3県境表示版)
雑感:
■秘境と言う語感から、寂しい或いは荒涼とした風景を想像していたが、どの駅も良く整備され、風光明媚で季節が桜咲く新緑豊かだったせいもあり、明るく、観光地のようであったのは想定外であった。 若し、秘境駅の雰囲気を味わおうとするなら、特別列車でなく、普通列車で個人探訪しなければなるまい。
■トンネルの多さに驚く。飯田線の開通が如何に難工事であったか偲ばれる。
(注)全長約200km、駅数(豊橋~辰野間)は94で、トンネル数は138
■佐久間ダム建設に伴い駅周辺にあった集落が水没し、消滅した結果、乗降客が殆ど無くなり、駅だけが残されたのが現状で、日本の高度経済成長期の遺産を目のあたりにし感慨深い。
■本ツアーに申し込む時、インターネットで調べた所、以前は満員でホームが観光客で一杯の写真があったので、混雑を覚悟していたが平日のせいか杞憂であり、ゆったりと楽しめた。
■名古屋発着の旅行代が10,800円で高いか安いか分からないが、一日で効率よく6秘境駅を探訪できることを勘案すればお値打ちと言える。