「中国に投資するなんて言おうものなら、お前は正気かと疑われる」とは、最近会ったニューヨーク・ウォール街の著名投資家の言である。「親中」一辺倒だったウォール街ですら「脱中国」が今や当たり前だ。
日本国内をみると、政官財の指導層は相変わらず中国に甘い。岸田文雄政権は先の米国での習近平共産党総書記・国家主席との会談では中身ゼロの「戦略的互恵」を持ち出す始末で、中国当局による理不尽な日本企業駐在員の拘束、福島第1原発の処理水に対する難癖への対抗策を打ち出す気配はまるでなかった。
日本の指導層の弛緩(しかん)した対中認識は今に始まったわけではない。
黒田東彦前日銀総裁は「マイナス金利 原油・人民元安に懸念」(日経私の履歴書11月25日付)「私は16年1月、スイスでの世界経済フォーラム(ダボス会議)に登壇し『中国は資本規制を強化した方がよい』と発言した。人民元安が再び日本を含むアジアにデフレ圧力を及ぼす懸念があった」「新興国経済への先行き懸念もあり、世界的な株安や円高が進んでいた。スイスに出発する前、私は追加金融緩和の選択肢を議論できるように、内々に準備を要請していた。帰国後、1月29日の金融政策決定会合で、日銀はマイナス金利政策の導入を決めた」とある。
当時、中国は資本逃避が急増し、習政権は追い込まれていた。為替投機家のジョージ・ソロス氏が同じダボス会議で「中国のハードランディングは不可避だ」と言い放ち、中国市場は大きく揺れた。が、黒田氏が助け舟を出した。人民元は前年12月に国際通貨基金(IMF)特別引き出し権(SDR)構成通貨となり、人民元は円を抜いてドル、ユーロに次ぐ第3位の「国際決済通貨」の座を獲得したばかりだった。人民元のSDR入りの条件は市場自由化だったが、黒田氏は約束履行を迫るどころか中国の規制継続を容認したのだ。
新たにマイナス金利が組み込まれた異次元金融緩和とともに大量発行される日銀資金の増発分相当額は国際金融市場に流出し、その多くが中国に投じられた。こうして習政権は金融危機脱出に成功した。
日本国内では、黒田氏が故安倍晋三元首相に飲ませた2014年4月からの大型消費税増税が招いた内需不振のためにカネは回らず、デフレが続いた。黒田氏が犯した重大な誤りについて、リフレ派諸氏は不問に付すが、拙論だけは黙るわけにはいかない。
中国は今、かつてない金融危機に直面している。米国を中心とする海外投資家は人民元資産を大幅に減らし続けている。人民元は当局の介入によってかろうじて暴落を免れている。対円相場では上昇が続いていますが、他の通貨に対しては人民元安が続いています。 日銀のゼロ金利解除が暴落サインなのかもしれません。
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