為替の世界的投機家ジョージ・ソロスは「半固定相場」の通貨を売り崩して、儲けるのが得意である。今回は「中国人民元」に的を絞り、リーマンショックなどで暴利を得たファンド連合で売り崩す壮大な計画があるようです。大統領選挙期間中に中国を「為替操作国」と厳しく指摘してきたトランプ新大統領誕生は「人民元売り崩しファンド」には朗報でしょう。さらに、独裁政党には「五輪の9年目のジンクス」という迷信があるのです。1936年ベルリン五輪9年後にはナチス・ドイツ崩壊。1980年モスクワ五輪9年後にはベルリンの壁崩壊・冷戦構造崩壊。このジンクスによれば、2008年北京五輪の9年後は2017年が崩壊の危機。しかも、2017年は4年に一度の重要な中国共産党大会があります。ズバリ2017年が世界経済波乱の可能性大です。
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中国の通貨「人民元」は2005年6月まで固定相場でした。1ドル=8.2765元前後に維持されていました。これが2005年7月から「管理フロート制・通貨バスケット制」に移行しています。いわゆる「半固定相場制」です。
前日の変動幅を2%まで許容するというルールで運用しており、それを超える変動があった場合、中国人民銀行が為替介入を実施します。
ジョージ・ソロスは人民元の「半固定相場制」を売り崩して、中国人民銀行が買い支えを実施できないレベルに追い詰めることを狙っています。
ソロスだけではなく、世界的に成功している投資家は全て、ファンダメンタルズ分析に基づいて行動しています。
ウォーレン・バフェットもジム・ロジャーズも、運否天賦(うんぷてんぷ)で判断しているわけではありません。
1992年に実施した「ポンド売り」では、イギリス経済はその3年前から停滞していました。
<イギリス 経済成長率の推移>
1986年 3.17%
1987年 5.56%
1988年 5.92%
1989年 2.25% ←ここから経済が失速していく
1990年 0.55%
1991年 -1.26%
1992年 0.45% ←ここでソロスはポンド売りを仕掛けた!
そして今、中国経済のファンダメンタルズは悪化してきています。
<中国 経済成長率の推移>
2003年 10.00%
2004年 10.10%
2005年 11.30%
2006年 11.30%
2007年 14.20%
2008年 9.60%
2009年 9.20%
2010年 10.61%
2011年 9.46%
2012年 7.70% ←ここから成長に陰りが出てきた
2013年 7.70%
2014年 7.30%
2015年 6.90% ←ついに6%台に突入!
2016年 6.49%
さらに次のような報道もなされるようになりました。中国の外貨準備の大幅減少が続いているのです。2016年6月7日のロイターのニュースを引用します。
中国人民銀行(中央銀行)が発表した5月末時点の外貨準備高は3兆1900億ドルで、2011年12月以来の低水準だった。ドル高や散発的な市場介入が影響した。
ロイター調査による予想は3兆2000億ドル、4月末時点は3兆2200億ドルだった。
5月の減少幅は279億ドルで、月間の減少としては2月以来の高水準。
ただアナリストは中国からの資本流出が再開したことを示しているとは限らないと指摘した。
2014年時点には4兆ドル弱あった中国の外貨準備は、約2年で3.2兆ドルまで減っています。(2年で2割減)
ソロスもおそらく中国の外貨準備の動向には注意を払っているはずです。なぜなら、半固定相場制では人民元を買い支えるのに「外貨準備」が必要だからです。
いわば外貨準備は人民元を買い支える体力とも言える指標です。
中国人民銀行が前日比2%に収まるように買い支えを実施できなくなった時、人民元はストーンと下落してしまいます。
ソロスがトレーディングの現場に復帰したのは、このタイミングを見極めるのに最も自分が適任だという自覚があるからでしょう。
足元の人民元下落は序章に過ぎず
平成28年11/18、ドルと人民元の交換レートは1ドル=約6.888人民元です。2014年の1ドル=6.05人民元をピークにどんどん元の価値が落ちてきています。この2年で10%以上も下落しています。
半固定相場制の環境下にいるにもかかわらず、下落幅が大きいです。
しかし、もし中国人民銀行が買い支えを実施できなくなると、もっと大きく下落するはずです。
今回のまとめ
ジョージ・ソロスは「半固定相場」の通貨を売り崩して、儲けるのが得意である。
固定相場制は次の方法で実現している。いずれの方法にしても、不自然な手法である!
- <方法その1>中央銀行が要求される為替をすべて受け入れる
- <方法その2>資金の移動を規制し固定相場になるようにする
全ての価格は需要と供給がクロスする点(=アダム・スミスの「神の見えざる手」)で決まる。
人為的に価格を調整する固定相場制、半固定相場制を採用すると、実体経済の価値と市場価格の乖離が発生しやすくなる。
ジョージ・ソロスはこの乖離を突く天才である!
中国の人民元も半固定相場制で運用されているため、ソロスは自分の得意な手法で売り崩しを狙っている。
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