中小企業診断士 福田 徹 ブログ

経営コンサルタント・中小企業診断士・ビジネスファシリテーターによる経営者・起業家・管理者向けブログ

実務家向け事業承継セミナー

2008年10月29日 | 福田徹の以前させていただいたお仕事

 おはようございます。中小企業診断士の福田徹です。10月29日水曜日、今朝5時の東京・小平は、気温13度、晴れです。今朝も冷え込みますね。
 本日は、山形県酒田市の経営革新塾に向かいます。東京・小平市から新幹線と特急を乗り継いで約5時間の旅路です。講座は19時からなのですが、少し早めに酒田市に入って街をみてみたいと思っています。


 さて、ブログは昨日参加してきた事業承継セミナーの話題です。



 参加したのは中小企業大学校東京校が弁護士・税理士・診断士などを対象におこなった「事業承継関連実務家研修」です。無料かつ1日だけの日程の研修ですが、政策と実務に明るい税理士、弁護士、診断士の講師陣によるポイントを押さえた講義内容であり、充実した研修でした。

 研修概要は、以下の通りです。

事業承継の現状と事業承継ガイドライン
 中小企業経営者の高齢化が進み、経営者の交代時期が差し迫っているが、後継者の確保が困難な状況である。そんな中、親族以外に承継するケースが増加している。この現状を踏まえて、後継者を確保し、親族以外への承継やM&Aも含めて承継を円滑に進めるための施策が求められている。
 事業承継ガイドラインでは、事業承継の中身を「経営の承継」「経営権、資産の承継」としている。これらを円滑に承継するための計画立案の流れを(1)経営者や後継者などが事業承継の重要性・計画的取り組みの必要性を認識する→(2)会社・経営者・後継者候補の現状把握→(3)後継者と承継方式の決定→(4)事業承継計画策定としている。
 具体策としては、(1)親族(2)企業内(3)M&Aに分けられる。いずれかの方法を選択し「経営の承継」「経営権、資産の承継」について計画・実施するとともに、「税務処理」対策も考慮する必要がある。

事業承継と相続法
 親族内承継の際の留意点として、(1)事業資産の後継者への集中(2)相続の円滑性、法的安定性、(3)承継方法の選択、(4)遺留分を考慮、(5)後継者のインセンティブの考慮、が挙げられる。
 これらについて、経営者の生前に対策をおこなうことが重要である。事前の対策がない場合は、資産の共有の問題や手続きに時間がかかること、遺産紛争などから、取締役会の機能不能を起こす可能性がある。

※遺留分:相続権者がもつ最低限度の相続権。これを犯す承継対策は後で覆される可能性がある。
※共有の問題:相続時に株式等の遺産が相続者の共有財産になり、持ち分ごとの意志決定が不能であること
 
事業承継円滑化法
 本年10月施行の新法の概要は、(1)遺留分に関する民法の特例(2)金融支援(3)相続税の課税についての処置の3点である。
 (1)遺留分に関する民法の特例は、現経営者の生前、遺留分権利者の合意の元に、自社株式についての扱いを決めておくことができる特例である。これにより、事業資産の計画的承継と後継者への集中、後継者のインセンティブを正当に評価した相続が可能になる。
 (2)金融支援は、事業承継時の資金需要に対応するために、信用保証協会の保証枠の拡大、政策金融公庫(旧国金)の融資対象者の拡大・資金使途についての明示がなされる。
 (3)相続税の課税についての処置は、自社株式の後継者への相続について、要件を満たすことによりその納税を一部猶予するものである。

事業承継と会社法
 相続後、後継者に議決権を集中させる方策として、「議決権制限株式」「黄金株」「株主ごとの異なる取り扱い」の各手法を検討した。この内、「議決権制限株式」を発行するやり方が、使いやすく効果が高い。

親族外承継
 親族外への承継には、企業内承継とM&Aがある。企業内承継の方法としては「MBO・EBO」と、「親族承継までの中継ぎ」が考えられる。「MBO・EBO」には、後継者(役員・従業員)のモチベーションが高くなるメリット、経営者がハッピーリタイアできるメリットがある。M&Aは、第三者への会社の全部または一部の売却である。M&Aには、経営者がハッピーリタイアできるメリット、雇用の確保のメリットがある。

事業承継と税務
 相続税対策として、計画的な贈与を活用する。贈与税には2つの課税制度がある。1つは「暦年課税制度」であり、年ごとに課税され死亡時の相続税とは分離される。2つめは「相続時精算課税制度」であり、贈与時に軽減された贈与税を納付し、相続時に精算する方式である。「相続時精算課税制度」には要件がある。また子ごとの選択制である。どちらの選択が得かは、贈与者が亡くなるまではわからない。
 自社株式の後継者への相続について、前経営者生前時の経済産業大臣の確認、事業の継続や保持・雇用の維持などの要件を満たすことにより、その納税を一部猶予する処置(先述)が来年度決まる予定。(2008年10月の相続に遡って実施の予定)


 研修では他に、事業承継事例の紹介や施策の説明がおこなわれました。詰め込まれた日程ですが、まとまりのあるよい研修であったと思います。
 興味を持たれた士業の方は、来年2月6日にも同様のセミナーを行うとのことなので是非ご参加ください。