ふくらく通信

東北人が記す、東北の良さや震災の事、日々のなんだりかんだり。
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気仙沼南町通り:震災前(2009-12)と震災後(2011-12-29 )

2017-05-09 16:20:42 | 東北被災地のあゆみ:気仙沼

津波に消えた町の思い出が、いくつかある。

町はまた、人々によって作られる、その道を進む中で、思い出も大事にしたい。

かつて、そこにあって輝いていたことの証だから。こうして書き残しておきたい。


        ① 2009年12月20日公表、編集・再掲載記事

日暮れて着いた、六つ時の気仙沼を少し巡ると、風情ある建物が点在する少し狭い通りに入った。

気仙沼市の南町だ 


 
  

 

木造の、古き美しい料理屋や


お茶屋があったり、


昭和初期に創業した洒落た洋食屋があったり、


懐かしさや心地よさが漂うような通りだと思った。

 

 

そこで、灯りのついている菓子店を見つけた。

「菓心 あめや」という、お菓子屋さんだ。

店先に貼られている、品書きにびっくりしながら店内に入った。

その品書きに、「ふかひれ」の文字があったのだ。

 

「ふかひれ最中」である。  

         
お店も最中も、品の良い落ち着いた風情だ。一体どんな最中だろうと、未知への興味と少しの不安を抱きつつ買った。

「これは、美味しいぞ」
最中がとても芳ばしく、餡は程よい甘さなのだ。大豆と白ゴマと寒天を練った餡の、柔らかく粘りのある食感に混じって、滑らかにとろける、ふかひれの食感がまた、とても良い。

この最中が気に入った。


ふかひれの良さと、土地の人々の努力が、まあるい形に込められているなぁと思うのだ。                    

 

まあるい最中が輝いている。割ってみると、その中にも白餡に混じって、

ふかひれの金糸が輝いているのであった。

 


 

       ② 震災後の南町通り (2011年12月29日記録)


       

所々、空き地になっている。残っている建物も、1階が空洞になってしまい、2階まで浸水した様子である。3階建ての、その3階の部屋にいた人ならば、助かっただろうか。

 

あの美しかった木造の店は、通りの東側の建物が緩衝となったか、道を挟んで西側にあったことで、建物が根こそぎ流されるのは免れたようである。しかし、中身がなくなっていた。

                 

洋食屋さんも、いつか寄ってみたいと思っていたのに、あの魅力的だった店頭の飾りも見られない。


あめやさんも、建物は残っていた。しかし、あの落ち着いた風情の店があった1階は、空洞になっている。

店の方々、みなどうしているだろう。無事であって欲しい。また再び、その味を取り戻して欲しい。

通りを歩き、そう願うばかりであった。



それでも、町は一歩を踏み出している。

南町に、仮設の商店街ができたのだ。

再開できる店が、ここで一歩を踏み出した。

ふるさとを取り戻すと、覚悟を決めて生きる人々の輝きを見た。

           

 

 

 



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