「閖上さいかい市場」では、久しぶりに活気のある売り声を聞いた。
店の人々は、みんな明るく温かく接してくれた。
生きる辛さは、心温まるひと時や、交流の中にある喜びによって癒されることがある。
それを知る人々の、力強い一歩を見た。
閖上から西へ行くと、美田園という所に出るが、その辺りに仮設住宅がある。
近くに、閖上の仮設商店街「閖上さいかい市場」が作られた。
(前年12月に完成し、翌年2月4日に正式に開店。)
閖上の赤貝を目当てに、「マルタ水産」さんに寄る。
聞けば、今は一艘だけ赤貝漁をする船が出ているそうだ。
マルタ水産さんは、閖上の良さや特産物を活かそうと「カレイの閖上干」や「赤貝の塩漬」を作ってきたが、工場は津波で消えた。
しかし、岩沼に仮工場を得て、それらを再び売り出している。
「赤貝の塩漬」も、閖上干と同じく良い塩加減だった。
赤貝の程よく締まった身は、歯切れ良くて、コリコリと音がしそうな歯応えがいい。
旨い東北の酒と良くあう。
その後、「まるしげ」さんで凄いものを見つけた。
「あんきも」だった。
「買いやすいように、1つ300円でそろえたよ。日本のフォアグラだからね。」とお父さんが話す。
喜んで買ってきた。ポン酢に付けると、滑らかさとコクが引き立ち、いっそう旨くなる。
そして、肉屋の「アイザワ」さんで、メンチカツを買う。
大きく、肉の旨味がたっぷりで芳ばしい。
この日の夕餉は、閖上さいかい市場のおかげで豪華であった。
商いを再開して、張り切っている人々の表情には輝きがあった。その背には、震災での色んな事を背負っているのは分っている。だが、踏み出す時の人々は、やはり輝いているのである。
ふるさとの良きものを、再び取り戻して引き継いでいくことは、自信となり喜びももたらす。
それが輝きになるのだろう。
閖上さいかい市場のご馳走で、心もお腹も満ちた。
ありがとう、ごちそうさま。